2013 Fiscal Year Research-status Report
口腔癌に対するマイクロRNA感受性腫瘍溶解性ウイルスの開発
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24792175
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
齋藤 謙悟 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70451755)
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Keywords | 腫瘍溶解性ウイルス / マイクロRNA / 癌 |
Research Abstract |
本研究は、腫瘍溶解性ウイルスであるシンドビスウイルスをより安全に口腔癌治療へ応用するために、正常組織ではmiRNAにより増殖抑制される「miRNA感受性シンドビスウイルス(miRNA感受性SIN)」の開発を目的としている。まず、正常組織に対し口腔癌で発現減弱しているmiR125bのターゲット配列をクローニングした。 昨年は、ターゲット配列を2回繰り返したmiR125bx2感受性SINが十分な感受性を得られなかったため、今年度はmiRNAのターゲット配列を4回繰り返したmiR125bx4感受性SINを作製し、昨年同様に、miR125b導入癌細胞株、正常組織細胞株、癌細胞株で125miRNAx4感受性SIN の増殖性、細胞傷害性を検討した。その結果、正常細胞株では、非感染のコントロールと比較し、125miRNAx4感受性SIN(4x125bSIN)とワイルドタイプSIN(wSIN)は数%の細胞傷害性を示すのみであった。miR125b導入癌細胞株では、4x125bSINは5%、wSINは40%の細胞傷害性を示した。しかし、miRNA125bの発現が減弱している癌細胞株(HSC3)に対しても、4x125bSINの細胞傷害性は10%程度しか示さなくなった。この理由として、ターゲット配列への感受性が向上しすぎた事や、3UTRの配列への挿入が複製へ影響している事が考えられた。そこで、複製が高くなるような変異が入った4x125bSINのクローンを作製することにした。方法は、Vero細胞で20‐40回ウイルスの継代を行い、各継代クローンの複製能をウイルス力価にて測定し、力価が向上したクローンにおける、癌細胞株に対する傷害性を測定し、シークエンスを行った。 以上、今年度はmiRNA感受性SINの感受性と複製・細胞傷害効果が相関しやすい事が判明し、感受性と細胞傷害性を保つクローンを精製することができた。現在、in vivoで、安全性と腫瘍溶解性の効果を検討している
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年確立できたmiRNA感受性シンドビスウイルスの作製法で、今年度はターゲット配列の繰り返し数と、miRNAに対する感受性の関連を評価できた。この事により、ターゲット配列を4回繰り返すことにより高感受性クローンを作製できた。しかし、miRNAが低発現である癌細胞において、本来ある性質である腫瘍溶解性の効率が減少した。そのため、計画には予定していなかった複製効果が高い変異株の作製をする必要がでた。この方法は、複製がある細胞株で数十回継代を行い、複製効率の測定と癌細胞株での細胞傷害性測定するため、期間を要した。最終的には、取得できた、クローンでのin vivoにおける評価を開始したのみである。また、別の候補(let7、miR100、miR-222)であるmiRNA感受性ウイルスの作製途中で、評価に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、別の候補(let7、miR100、miR-222)であるmiRNA感受性ウイルスの作製と、正常組織細胞株、癌細胞株でウイルスの増殖性、細胞傷害性を評価する。各miRNA 感受性シンドビスウイルスにおいては、ターゲット配列の繰り返し数と3’UTR内での挿入位置を変えたmiRNA感受性ウイルスを作製し、それぞれ評価する。以上の結果から細胞株において安全で腫瘍溶解性の高いmiRNA感受性シンドビスウイルスを選定する。その後、担癌マウスを作製し、miRNA感受性シンドビスウイルスを静注後、腫瘍溶解性ウイルスとしての治療効果を判定する。また、癌部と正常臓器からウイルスを回収し、ウイルスの集積性を検討する。最終的に、最も安全で腫瘍溶解性の高いmiRNA感受性シンドビスウイルスを決定する。今後の課題とし、作製した各miRNA感受性ウイルスにおいて、その感受性と腫瘍溶解性の逆相関性が出現しやすい事がある。その対策とし、ターゲットの繰り返し数、挿入位置の再検討や、シンドビスウイルスのゲノム転写に関与する5‘UTRや癌細胞への吸着に関与するE2蛋白に変異をいれることにより、ウイルスの発現量の変化を評価することを検討する。また、変異改変ウイルスであるためリバータントが出現す可能性がある。そのため、miRNA感受性シンドビスウイルスを感染し回収したウイルスを再度感染することを繰り返し行い、その都度ウイルスのシークエンスを行い変異の有無を調べる。
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