2013 Fiscal Year Research-status Report
口腔扁平上皮癌頸部リンパ節転移巣における被膜外浸潤の遺伝的多様性の検索
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24792181
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
道川 千絵子 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 医員 (00622648)
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Keywords | 被膜外浸潤 / 口腔癌 / リンパ節転移 / 扁平上皮癌 |
Research Abstract |
申請者は、口腔扁平上皮癌の頸部リンパ節転移巣における被膜外浸潤がどのようなリンパ節にどのように生じるのか、病理組織学的・形態学的に詳しく検索し、被膜外浸潤を生じたリンパ節および症例の分類を行った。具体的にまず、術前治療を行わずに手術を行った口腔癌のうち、転移リンパ節のいずれか1つに被膜外浸潤を認めた19症例、74個の転移リンパ節を対象とし、転移リンパ節の詳細な解析を試み、被膜外浸潤陽性リンパ節、被膜外浸潤陰性リンパ節、両者の違いについて解析を行った。転移巣の占有率に関して、統計学的有意差が得られ、被膜外浸潤陽性群の方が被膜外浸潤陰性群に比べ、有意に大きいことが分かった。これに対し、長径・短径ともリンパ節の大きさに関しては、統計学的関連性は得られず、また、病理組織学的に小さいリンパ節にも被膜外浸潤を生じることが分かった。 次に、症例数を33症例に増やし、75個の被膜外浸潤陽性リンパ節のみに対象を絞り、転移リンパ節内の腫瘍占有面積に対する被膜外浸潤部の面積を腫瘍内外比と定義した。リンパ節の短径、および、腫瘍内外比を用いたところ、被膜外浸潤陽性リンパ節を4つのタイプに分類することができた。そこで、次に、リンパ節のタイプと予後との関連性を解析するために、リンパ節タイプをもとに、被膜外浸潤陽性症例の分類を試み、症例を3群に分類した。この3群に対するカプランマイヤー法を用いた生存解析から、リンパ節の短径が小さく、腫瘍内外比が大きいリンパ節タイプを持つ症例が予後不良になりやすいことを示した。 つまり、被膜外浸潤を生じているリンパ節の形態学的・病理組織学的な表現型の違いは、そのまま、分類ごとに、被膜外浸潤の生じるメカニズムが異なるという可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
口腔癌頸部リンパ節転移巣における被膜外浸潤と関連する遺伝子群を抽出する目的に、原発巣切除検体を用いたRNAマイクロアレイ解析を予定していたが、使用予定だった2012年度採取の検体15例は研究グループの他の研究者が別の目的にて使用することとなった。また、現在、申請者が考えた実験手法より、目的に最も近接できる可能性のある実験手法を用いた研究が大きく前進しつつあり、計画そのものを立て直す必要があるとも考えている。 さらに、被膜外浸潤を生じているリンパ節の病理組織学的、形態学的な解析は進められ、対象症例数も33症例まで増やしたものの、得られたデータを、他人に理解しやすく、また、臨床上有用性のあるデータを算出するために、どのように解析すべきかの検討、および、実際の解析に時間がかかってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
被膜外浸潤を病理組織学的、形態学的に詳しく検索し、短径が小さいにも関わらず、被膜外浸潤を生じている症例が予後不良になりやすいことが分かったため、今後は、この短径という因子に特に着目し、症例数を増やし、臨床において有用性のあるデータを出したいと考えている。 また、被膜外浸潤を生じているリンパ節の形態学的・病理組織学的な表現型の違いは、そのまま、分類ごとに、被膜外浸潤の生じるメカニズムが異なるという可能性が考えられた。このメカニズムの解明に迫るためには、被膜外浸潤に強く関連する遺伝子群の同定が必要であろう。被膜外浸潤を生じた口腔扁平上皮癌特異的に発現が増加あるいは減少している遺伝子群を見つける必要がある。このための方法として、原発巣切除検体を用いたRNAマイクロアレイ解析を予定していたが、現在は、申請者が考えた実験手法より、目的に最も近接できる可能性のある実験手法を用いた研究が大きく前進しつつあり、計画そのものを立て直す必要があるとも考えている。具体的には、2013年秋頃、Formalin-Fixed Paraffin-Embedded(FFPE)サンプルから抽出できるごく少量のゲノムDNA(80ng)から、信頼性のあるゲノムコピー数解析を行うことを可能とするテクノロジーが開発された。現在、実際に、研究グループが、当院のFFPEサンプルに対しても解析可能かどうか試行中である。したがって、信頼性のある結果が得られれば、実験計画を考え直し、実行したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
口腔癌頸部リンパ節転移巣における被膜外浸潤と関連する遺伝子群を抽出する目的に、原発巣切除検体を用いたRNAマイクロアレイ解析を予定していたが、使用予定だった2012年度採取の検体15例は研究グループの他の研究者が別の目的にて使用することとなった。また、被膜外浸潤を生じているリンパ節の病理組織学的、形態学的な解析は進められ、対象症例数も33症例まで増やしたものの、得られたデータを、他人に理解しやすく、また、臨床上有用性のあるデータを算出するために、どのように解析すべきかの検討、および、実際の解析に時間がかかってしまった。 申請者が考えた実験手法より、効率的かつ目的に最も近接できる可能性のある実験手法を用いた研究が大きく前進しつつあり、計画そのものを立て直す必要があるとも考えている。 具体的には、2013年秋頃、Formalin-Fixed Paraffin-Embedded(FFPE)サンプルから抽出できるごく少量のゲノムDNA(80ng)から、信頼性のあるゲノムコピー数解析を行うことを可能とするテクノロジーが開発された。現在、実際に、研究グループが、当院のFFPEサンプルに対しても解析可能かどうか試行中である。したがって、信頼性のある結果が得られれば、実験計画を考え直し、実行する予定である。
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Research Products
(4 results)