2013 Fiscal Year Research-status Report
ヒトiPS細胞の誘導効率を高める新規初期化因子の発見
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24792197
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
玉置 也剛 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40585303)
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Keywords | 歯髄細胞(DPC) / iPS細胞 / 誘導効率 / DLX4 |
Research Abstract |
我々はさまざまな歯の発達段階の歯髄細胞(DPC)株を200株ほど樹立し保有してきた。この中から9株のDPC株を選んで、レトロウィル法を用いて山中4因子(OCT3/4、SOX2、KLF4、c-MYC;OSKM)を遺伝子導入し、iPS細胞の誘導効率について検討したところ、歯根完成期DPCに比べ、歯根未完成期DPCでは著明に誘導効率が高いことが分かった。次に誘導効率に影響を与える遺伝子の特定を試みるため、DNA マイクロアレイを用いて網羅的に2 群の遺伝子発現解析を行い、5倍以上歯根未完成期のDPC 株群で発現が高い遺伝子を28個程ピックアップした。その中で、転写因子として最も発現量の差が大きかったDLX4について、誘導効率への影響を検討した。Real-time PCRでさまざまなDPC株のDLX4の発現量を解析したところ、歯根完成期DPCに比べ、歯根未完成期DPCは著しくDLX4の発現が高いことが確認できた。次にDLX4がiPS細胞誘導において、重要な役割を担うかどうか検討するために、pMXベースのDLX4発現レトロウィルベクターを作製した。まず誘導効率が低いDP75(歯根完成歯DPC)にDLX4の強制発現で誘導効率が改善するかどうか検討した。DP75はOCT3/4とSOX2(OS)の2因子ではiPS細胞の誘導はできないため、誘導の際にDLX4を加えたOSDの3因子を試みたが、iPS細胞の誘導はできなかった。しかし、KLF4を加えた従来の3因子(OSK)にDLX4を加えたOSKDはOSKに比べ、著明に誘導効率が促進され、OSKMと同程度まで誘導効率を高めることが分かった。次に、歯根未完成歯DPCであるDP31を用いた場合、OSKDだけでなくOSDの場合でも、OSを用いた場合に比べ、誘導効率が促進されOSKを用いた場合と同程度の誘導効率を示した。最後に皮膚線維芽細胞(HDF)でもDLX4の効果を検討したところ、DP75同様KLF4の存在下(OSKD)では誘導効率が著明に促進されるのが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2年目ですでにiPS細胞の誘導効率を高める新遺伝子の同定ができ、この遺伝子が歯髄細胞や皮膚線維芽細胞のiPS細胞化に効果があることを確認した。さらにOSDで誘導されたiPS細胞の未分化性と多分化能について解析を行った(Dlx4は誘導効率を高めるだけでなく、成熟したiPS細胞にまで誘導できることを確認した)。これらの結果をまとめて、Nature Communicationsに投稿まで行った(結果は採択されなかったが、現在は他誌への投稿準備を行っている)。
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Strategy for Future Research Activity |
我々はDLX4がどのようにヒト体細胞の初期化を促進させるのかを解明するために、DLX4ノックダウンDP31株を樹立し、誘導効率の検討を行う予定である。また、先行論文でマウス体細胞ではTgf-βシグナルを抑制することでiPS細胞の誘導効率が促進されるとの報告があり、さらにDLX4はTgf-βシグナルを抑制するとの報告もあるために、DLX4がTgf-βシグナルを抑制して、初期化を促進いているかどうかの検討も行う予定である。
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