2012 Fiscal Year Research-status Report
骨髄幹細胞由来培養上清を用いた放射線口内炎治療法の開発
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24792199
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
古江 浩樹 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (40567012)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 放射線口内炎 / 口腔癌 / 放射線治療 |
Research Abstract |
平成24年度は、マウス口内炎モデルの作成より研究を開始した。C3H/Heマウスを吸入麻酔にて鎮静後、頭部以外を鉛の板を加工したもので保護し放射線照射装置にセットし、30Gy連続照射を行い、照射による舌の粘膜炎の状態の変化を評価した。まず、放射線照射に10分前後の時間が必要となるため、照射中にマウスが覚醒し安定した照射が行えないという問題が生じた。その点については、麻酔薬の腹腔内投与を併用することで、調整を行った。次に問題となったのが、口腔内のみに照射野を絞ることである。実験開始当初、頭部を一部露出した状態での照射となったマウスについては、照射後数日以内に痙攣が生じ、死亡することがあった。その死因については、脳への照射による影響が考えられる。そこで現在、口腔内に安定し放射線照射範囲を絞り、頭部を完全に保護するため、50mlコニカルチューブ全体を鉛を保護した上で、その先端を切り、麻酔後のマウスの口腔内のみを突出させ放射線照射を行う方法を検討している。続いて問題となった点は、放射線照射を口腔内に限局した場合においても、口内炎が強く生じた際に通常のマウスの栄養方法(スナック状のもの)では舌に生じた炎症や潰瘍により、経口摂取困難となり、栄養不良により早期に餓死してしまうマウスが発生した点である。この点についても、現在栄養剤の形態をゼリー状に変更し改善が図れるか検討中である。 上記のとおおり、本年度は放射線粘膜炎動物モデルの作成を行い、条件設定を行った。 放射線治療に伴う口内炎の合併症モデルは、多くの論文で報告があるが、施設により使用している装置、器具等も様々であるため統一したモデルがないのが実態である。本研究においても放射線治療モデルの作成に多くの時間を費やすこととなったが、研究結果に大きな比重の係る部分であるため、今後も継続しモデルの作成を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は、マウス口内炎モデルの作成について、計画書の予定通り行うことが困難であった。原因として、咽頭部のみ放射線照射を行う事が困難であり周囲臓器である頭部への照射のため、口内炎の評価の前に死亡した事や、30Gy咽頭部照射を行うことで口内炎が早期に重篤となり死亡に至った事や、それらの合併症によって経口摂取ができなくなり栄養管理が出来ず死亡した事などが挙げられる。そこで、平成25年度は、参考とする口内炎モデルを変更し、放射線照射量を減量し、より確実に行えるようなモデルを検討する(J.Radiat.Res 695-601, 2010)。使用する動物は6週齢のオスのBALB/cマウスを使用する。具体的に放射線照射量を17 Gyの単独照射に変更し口内炎発症度を検討する。口内炎発症が困難な場合は、放射線照射前にシスプラチンの腹腔内投与(11㎎/Kg)を投与し口内炎発症度を評価する。 細胞実験については、まずがん細胞に対して放射線照射を行い生存率の解析を行った。その解析結果を用いて次年度は、培養上清を用いて、がん細胞の増殖能に対する効果、繊維芽細胞の増殖能に対する効果などについて検討しながら培養上清に含まれる、創傷治癒効果に関与する要因について検討する。 今後は動物実験と、細胞実験を並行し継続しながら、ヒト骨髄幹細胞培養上清の口内炎予防効果について検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、参考とする口内炎モデルを変更し、放射線照射量を減少し、より確実にモデルの作成が行えるようなモデルを検討する(J.Radiat.Res 695-601, 2010)。使用する動物は6週齢のオスのBALB/cマウスを使用する。具体的に放射線照射量を17 Gyの単独照射に変更し口内炎発症度を検討する。口内炎発症が困難な場合は、放射線照射前にシスプラチンの腹腔内投与(11㎎/Kg)を投与し口内炎発症度を高め評価する。 また動物実験のモデルの作成を行いながら、細胞実験も並行し行い、培養上清に含まれる創傷治癒効果について検討を行う。具体的には、がん細胞株、不死化した繊維芽細胞株に放射線照射を行い生存率を解析する。次に、それらの細胞を骨髄由来幹細胞培養上清を加えた状態での放射線照射に対する生存率を解析することで、放射線抵抗性についてを行う。さらに、培養上清に含まれるいずれの要因が放射線抵抗性に関与したかについてを検討を行う。 それらの動物実験、細胞培養実験にて得られた結果をもとに、放射線治療に対する口内炎発生のメカニズムや、予防効果について検討する予定である。 平成24年度は動物モデル作成に重点を置き研究を行ったため、他の実験が予定通り行うことが出来なかった。そのため、平成25年度は、動物実験と並行し細胞実験を行うことで、動物モデルの作成が困難となった場合においても、研究期間内に骨髄細胞培養上清による放射線治療にたいする抵抗性の可能性について新たな知見を得られるよう研究を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品として、動物実験を行う際必要となる、実験用動物、飼料、手術器具、手術材料を、細胞培養、遺伝子解析のために、培養液、細胞培養器具、試薬を研究経費として使用する予定である。また英語論文作成のための費用も計上している。
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Research Products
(2 results)