2012 Fiscal Year Research-status Report
E-カドヘリンプロセス分子のNakedDNAを用いた口腔癌遺伝子治療法の開発研究
Project/Area Number |
24792218
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
浜名 智昭 広島大学, その他の研究科, 助教 (40397922)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | プラスミン / Eーカドヘリン / α2ーアンチプラスミン / Naked DNA / 口腔癌遺伝子治療 |
Research Abstract |
プラスミンは細胞外基質蛋白に対し強い分解活性を示すほか,他の不活性型蛋白分解酵素を活性化し,がんの浸潤・転移を制御していると報告されている.本研究者は,プラスミンが,細胞間接着分子であるE-カドヘリンを切断し,がん細胞の分散能を亢進することを明らかにしてきた.したがって,プラスミンは,細胞外基質蛋白分解系の中心的な役割を果たすほか,E-カドヘリンをプロセシングすることで,がん細胞の分散能を亢進させ,がんの浸潤・転移を促進していると推測している.本研究では,プラスミン阻害物質であるα2-アンチプラスミン蛋白の発現を誘導し,扁平上皮癌の蛋白分解活性のみならず細胞分散能を低下させることで,口腔癌の浸潤・転移を抑制することを目的としている. 実験には口腔扁平上皮癌細胞株と,その細胞株にα2-アンチプラスミン遺伝子を導入した細胞を用いた.α2-アンチプラスミンの発現誘導が,扁平上皮癌細胞の細胞増殖に与える影響について検討するために,まずプラスミノーゲンを含む培地で各細胞を培養し,経時的に増殖細胞数を算定した.α2-アンチプラスミン遺伝子導入細胞は低い増殖能を示し,培養7日目の増殖細胞数は親株の約1/2であった.つぎに1000万個の各細胞を0.1mlの培地に浮遊させ,4週齡ヌードマウスの背部皮下に接種し,経時的に腫瘍の大きさを測定した.遺伝子導入細胞は腫瘍を形成するものの増大を認めず,親株にくらべ増殖能が著しく低下していた.これらの結果は,α2-アンチプラスミン蛋白の発現によるプラスミン活性の低下が口腔扁平上皮癌細胞の浸潤増殖を抑制している可能性を示唆している.したがって,α2-アンチプラスミン蛋白発現誘導は口腔癌の浸潤・転移を抑制する,新しい遺伝子治療の開発につながることが期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成24年度はα2-アンチプラスミンの発現誘導が,扁平上皮癌細胞のin vivo での浸潤・転移に与える影響およびα2-アンチプラスミン遺伝子をNaked DNA の形状でヌードマウスの正常組織に注射し,その遺伝子発現効率を検討することを予定していた.α2-アンチプラスミン遺伝子を導入した口腔扁平上皮癌細胞ではin vivo での浸潤増殖を抑制されることが示された.しかしながら,α2-アンチプラスミン遺伝子導入細胞をヌードマウス背部皮下に移植し,造腫瘍能を検討する実験で培養ディッシュ上での細胞の回収や移植時の手技が安定しておらず,再現性のある結果を得るまで複数回の実験を要し計画が遅れた.したがって,α2-アンチプラスミン遺伝子導入細胞のin vivoでの転移能の検討やα2-アンチプラスミン遺伝子の正常組織内直接投与による遺伝子発現効率は確認できていない.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,α2-アンチプラスミン遺伝子を,病原性のない安全なプラスミドDNA すなわちNaked DNA の形状で腫瘍組織内へ直接注入することにより,α2-アンチプラスミン蛋白のin vivo での発現を誘導し,扁平上皮癌における蛋白分解活性のみならず細胞分散能を低下させることで,口腔癌の浸潤・転移を抑制する,新しい遺伝子治療の開発を目的としている. α2-アンチプラスミンの発現誘導が,扁平上皮癌細胞のin vivo での浸潤増殖を抑制することが示された. 今後はH24年度の実験で採取した,ヌードマウス形成腫瘍でのE-カドヘリン蛋白の発現を検索する.つぎに,in vivo でのα2-アンチプラスミン遺伝子導入細胞の転移能の検討を行う.また,α2-アンチプラスミン遺伝子をNaked DNA の形状でヌードマウスの正常組織に注射し,この直接遺伝子注入法によるin vivo でのα2-アンチプラスミン蛋白の発現効率を検索する.その後,ヌードマウスに形成させた口腔扁平上皮癌にα2-アンチプラスミンのNaked DNA を直接注入し,腫瘍組織中でのα-2 アンチプラスミンの発現を解析する.α2-アンチプラスミン遺伝子導入による扁平上皮癌のin vivo における転移抑制効果を検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では,蛋白発現を免疫組織化学的に解析するための試薬.また,細胞培養に関連する器具と試薬,プラスミンインヒビター遺伝子導入の効果判定のための試薬および腫瘍抑制の効果判定に使用する実験動物が必要である.これらの購入費と,成果発表のための旅費,印刷費等を必要な経費として使用する予定である.
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