2012 Fiscal Year Research-status Report
小児の朝型・夜型傾向とう蝕発生:生活習慣調査と遺伝子発現解析
Project/Area Number |
24792267
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西出 真也 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40451398)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 小児口腔保健学 / 生体リズム / う蝕 |
Research Abstract |
小児期における夜型の生活習慣は睡眠障害のみならず、う蝕の発生も誘発すると考えられる。本研究の目的はこの仮説を生活習慣記録用紙による就寝・起床・食事時刻の調査、および唾液中の物質の解析により証明することである。 平成24年度は、所属大学の大学病院における自主臨床研究審査委員会からの研究計画の承認を受け、同病院小児歯科外来に通院中の患者に生活習慣記録用紙を配布、記録を依頼した。平成24年3月末日現在、計142人の患者より有効な回答を得、統計学的に十分な数のデータがすでに集まっている。生活習慣調査の結果と病院のカルテから得られたう蝕経験歯数の分析から、睡眠時間帯、夕食時刻、就寝時刻、間食の回数とう蝕経験歯数の間に有意な相関が認められた。このうち睡眠時間帯、夕食・就寝時刻との関連は過去に報告がなく、本研究において初めて明らかになった。近年、睡眠習慣が健康に与える影響や食育の重要性が強調されているが、本研究の結果から夜型の生活習慣が発達期の口腔環境に与える影響についての新しいエビデンスが得られた。 生活習慣調査の結果を受けて24年度後半より、夜型の生活習慣がどのような機序でう蝕発生リスクを高めるのかを調べるために唾液中の物質の解析をスタートさせた。はじめに内因性のリズムの指標であるコルチゾル量の変動を測定した。しかし、唾液コルチゾル量は同一被験者においても測定日によるばらつきが大きく、再現性が低かった。現在別の物質の日内変動を測定する予備実験を行っており、大学病院の臨床研究申請の準備中である。 これらの結果は本年5月の日本小児歯科学会で発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は当初の申請通り、初年度中に生活習慣記録用紙による調査を終え、初年度後半より唾液分析を開始した。唾液コルチゾルの測定は再現性が良くなかったため測定する物質を変更したが、研究目的の達成において支障はなく、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度後半から引き続き、唾液分析を行う。現在研究室スタッフの唾液を午前8時から4時間おきに翌日午前4時まで採取し、う蝕発生に影響を及ぼすと考えられる物質で、日内変動のあるものを探索している。現在、う蝕リスクを調べるためのキットが多数入手可能であり、それらの多くは操作が簡便であるため、外来で被験者に操作方法を指導することにより、家庭に持ち帰っての測定が可能である。測定する物質が決定次第、大学の自主臨床研究審査委員会に追加申請を行い、学校が夏休みの時期に調査を実施する予定である。 調査は昨年度の生活習慣調査に協力した患者の中から、朝型・夜型のものをそれぞれ20名選出し、測定器具を渡し8時から20時まで4時間おきに測定を依頼する。次回来院時に持参または宅配便によりサンプルを回収する。夏休み終了後にすべてのサンプルを同時に測定する。20時から8時までの夜間の時点は被験者が小児であるため負担が大きく、測定は行わない。8時から20時までのデータをコサインカーブにフィッティングすることにより一日のリズムを推定する。 実験及び解析を秋までに終了し、その後学会発表、論文投稿する。論文が受理された後に、得られた知見を元に患者、および広く社会に向けたパンフレットを作成し、口腔健康指導に役立てる。また、所属機関が開催する市民向けのセミナーを利用して成果を公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に生体リズムの指標として唾液コルチゾル量の測定を試みたが、感度および再現性が十分ではなかった。平成25年度初めに引き続き唾液中物質測定方法の検討を行う。方法を決定次第、24年度未使用額により唾液中物質の測定のための試薬および器具を購入し、本実験を行う。被験者に家庭で唾液採取および測定を依頼するため、簡便に使用できるキットを購入する必要がある。サンプルを被験者から宅配便で回収するための輸送費が必要である。また、唾液中物質の日内変動の解析には数理解析ソフトを用いる。 結果の公表および情報収集のため、日本小児歯科学会(5月、岐阜)、日本歯科基礎医学会(9月、岡山)、日本小児歯科学会北日本地方会(10月、青森)、日本時間生物学会(11月、大阪)、日本生理学会(3月、鹿児島)に参加予定であるので、交通費および参加費が必要である。また、結果を英文学術雑誌に投稿するための投稿料が必要である。 論文の公表後、患者および社会に結果を還元するためのパンフレット作成料が必要である。
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