2013 Fiscal Year Research-status Report
小児の朝型・夜型傾向とう蝕発生:生活習慣調査と遺伝子発現解析
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24792267
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西出 真也 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40451398)
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Keywords | う蝕予防 / 概日リズム |
Research Abstract |
ヒトを含む多くの生物の生理機能には環境の24時間周期の変動に適応するための概日リズム、すなわち内因性の24時間周期のリズムが存在する。概日リズムは睡眠覚醒や食事のタイミングなどの生活習慣により調節することが可能であり、適切な生活リズムは身体の生理機能の発揮に必要であると思われる。ヒトに常在する細菌にも概日リズムを示し、細菌‐宿主関係も一日のうちの時刻により変化するものと予想される。本研究は小児期の生活習慣がう蝕発生に及ぼす影響を調査するとともに、唾液成分の分析によりう蝕発生の時刻依存性を調べるために行った。 前年度に引き続き、北海道大学病院小児歯科外来に通院中の16歳以下の患者に記録を依頼した生活習慣をう蝕の発生状況と比較した。被験者を歯の萌出状況に応じて分類し、乳歯列期(ヘルマンの歯齢IIAおよびIIC期)および永久歯列期(同IIICおよびIVA期)のデータを解析した。その結果、乳歯列期において夕食時刻、夕食時刻のばらつき、就寝時刻の3要因とう蝕発生数の間に有意な相関が示された。また間食回数とう蝕発生の正の相関も確認した。永久歯列期においても夕食のばらつきとう蝕発生の間に有意な相関が示された。研究代表者の過去の動物を用いた研究により発達期は概日リズムの攪乱を受けやすいことが示されており、小児期の生活習慣の乱れがう蝕発生につながった可能性を示唆している。以上の結果は平成25年日本小児歯科学会大会にて報告した。 次に生活習慣の変化がなぜう蝕発生に影響するかを調べるために、唾液中ミュータンスレンサ球菌数の日内変動を検討した。予備実験において知人の子供を被験者とし、様々な時刻に採取してもらった唾液中のミュータンス菌数を測定したところ、明瞭な変動を示した。病院の自主臨床研究審査委員会の承認をすでに受け、現在患者の唾液サンプルを収集している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究を実施している大学病院歯科診療センターの改修工事の影響もあり、被験者を集めるために時間を要したため平成26年度への繰越を申請したが、実験自体は順調に進展している。生活習慣記録はすでに十分な例数を得ており、収集を終了している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は唾液成分検査を行い生活習慣とう蝕発生が相関を示す生理的機序の解明を行う。検査の手法はすでに確立し、病院の臨床研究申請も受理されたため、本年度の早い段階で実験を終了し、結果を公表できると思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
北海道大学病院歯科診療センターに通院中の患者を被験者とした調査を中心とする研究計画であるが、同センターの改修工事の影響もあり、協力していただける被験者を集めるために当初予定より時間を要している。例数がまだ不足しているため事業期間の延長を希望する。 次年度は引き続き被験者に採取してもらった唾液の生理学的解析、および学会発表・学術雑誌への論文投稿を行う。未使用助成金は家庭で唾液を採取するためのディスポ器具類、研究室へのサンプル配送料、唾液中ミュータンスレンサ球菌数測定のための培養器具類などの消耗品費、学会出張費、論文投稿料に使用する。
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