2012 Fiscal Year Research-status Report
鎖骨頭蓋異形成症モデルマウスを用いたRunx2メカニカルストレス応答機構の解析
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24792270
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
青沼 智 東北大学, 大学病院, 医員 (70624823)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | Runx2 / メカニカルストレス / メカノトランスダクション |
Research Abstract |
鎖骨頭蓋異形成症は顎顔面および口腔内に異常を呈し、さらに歯の移動遅延を生じることから矯正歯科治療が困難である。同症候群の原因遺伝子であるRunx2は、骨芽細胞分化の必須転写因子であり、メカノトランスダクションの重要な因子でもある。同症候群の病態モデルであるRunx2ヘテロノックアウトマウスの歯にメカニカルストレスを負荷したところ、野生型に比べ歯周組織の応答がin vivoおよびin vitroにおいて遅延および低下した。本研究はこの研究をさらに発展させ、Runx2のメカニカルストレス応答機構の分子メカニズムの解析により、同症候群の骨病態の解明および最良の矯正歯科治療方法の新開発につなげようとする基礎的研究の確立を目的としている。当該年度では、メカニカルストレスによるRunx2の応答機能をin vitroにて解析した。矯正歯科治療による歯の移動の伸展側をモデルに、シリコン製チャンバーに細胞を播種し、チャンバーを伸展させることによりメカニカルストレスを付加した。伸展力付加後のRunx2ヘテロノックアウトマウス由来骨髄間質細胞は野生型マウス由来細胞に比べて細胞増殖促進の遅延が認められた。さらにRunx2ヘテロノックアウトマウス由来細胞を骨誘導培地下にてメカニカルストレスを付加したところ、ALP、オステオカルシンなどの骨芽細胞関連因子の発現上昇が野生型マウス由来細胞に比べて遅延と低下が認められた。このように、本研究は、鎖骨頭蓋異形成症モデル動物であるRunx2ヘテロノックアウトマウスを用いて歯の移動モデルを用い、Runx2のメカニカルストレス応答や骨リモデリングにおける機能を分子レベルで解明することにより、鎖骨頭蓋異形成症患者のの移動遅延に対応する効果的な治療法の開発をめざし、歯科矯正臨床の発展に寄与することを目標としており、本研究の意義は極めて高いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の進行は当初の実験計画に比べ、やや遅延している。これは、平成23年3月の東日本大震災による被災後、実験室およびマウス飼育室の改修工事により数回にわたる引っ越しを余儀なくされ、実験を一時的に中断せざるを得なかったためである。現在、改修工事がようやく終了したため、実験を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
Runx2ヘテロノックアウトマウス由来骨髄間質細胞を骨分化誘導培地下で伸展すると、その骨分化は野生型マウス由来細胞に比べて遅延および低下した。さらに、Runx2ヘテロノックアウトマウス由来骨髄間質細胞の伸展による増殖促進は、野生型マウス由来細胞に比べて遅延した。これまでの研究結果を踏まえ、今後はメカニカルストレス負荷後のRunx2ヘテロ欠損による分化・増殖のメカニズムについて分子生物学的な研究を進める予定である。 具体的には、野生型およびRunx2ヘテロノックアウトマウス由来骨髄・歯根膜・骨芽細胞に、オリジナルの装置によるメカニカルストレス負荷後抽出したRNAやタンパクをマイクロアレイ法で解析し、メカニカルストレス応答因子を網羅的に抽出する。次に、Real Time PCR法やwestern blotting法で上記の因子のRNAやタンパク質の発現量を経時的に測定し、適宜阻害剤でシグナル分子を抑制しながら既知の因子との関係を解析する。ルシフェラーゼアッセイ等によりRunx2の活性を検証し、シグナル経路を網羅的に解析する。さらに、メカニカルストレスにより惹起されるRunx2のリン酸化やアセチル化等といった翻訳後修飾の活性に関連するペプチド配列を特定して様々な変異体を作製し、western blotting法、免疫沈降法、核run on アッセイ、ルシフェラーゼアッセイによりメカニカルストレスによるRunx2転写機能活性部位の解析を行う。Runx2が転写に関与していると示唆される因子については、ルシフェラーゼアッセイで、転写調節に重要なシスエレメントを同定してDNAのコンセンサス配列を解析後、EMSAやDNA固定化アフィニティクロマトグラフィでRunx2のDNA結合部位を確認し同領域の様々な欠損変異体を作成し標的遺伝子のRunx2の作用部位の解析を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は当初計画していたRunx2のメカニカルストレス誘導性シグナル経路における、さらなる解析を次年度に延期したものであり、解析に必要な経費として平成25年度請求額と合わせて請求する予定である。
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