2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24792293
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
寺尾 文恵 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (10510018)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 発生・分化 / 細胞・組織 / エピジェネティック |
Research Abstract |
顎顔面形態を含め、様々な器官の形態形成において、環境要因、遺伝的要因(SNPなど)、エピジェネティック要因など、複数の因子が相互に関与している。エピジェネティック要因の中でも、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)はヒストンの脱アセチル化を行う酵素であり、遺伝子の転写制御において重要な役割を果たしており、様々な細胞への分化を制御することが報告されつつある。本研究では、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)に注目し、HDACを阻害およびノックダウンする実験系を用いて、HDACの下顎の形態形成を制御する分子メカニズムを解明することを目的とする。 胎齢12日目のラットより下顎隆起を摘出し、細胞を分散、播種し、10%FBS添加DMEM培地を用いて下顎隆起細胞の高密度培養を行った。HDAC阻害薬の一つであるトリコスタチンA (TSA)を2nM, 200nM, 20μMの濃度で添加し培養を行い、培養開始7日目にアルシアンブルー染色を行った。その結果、TSA添加によるHDAC阻害により、軟骨ノジュールの形成が抑制された。 また、摘出した下顎隆起を器官培養にTSAを500nM, 1μM, 1.5μM, 2μM, 20μM, 200μMの濃度で添加し、培養開始後7日目にホールマウントアルシアンブルー染色を施し、メッケル軟骨の形態を観察した。その結果、TSA添加によるHDAC阻害により、メッケル軟骨の形成が抑制され、1μM以上の濃度においてはメッケル軟骨の形成が完全に消失した。さらに、培養開始後7日目に4%PFA溶液にて培養器官を固定、水平断連続切片を作製し、ヘマトキシリンエオジン染色を行った結果、TSA濃度が1μMでは正常な下顎器官の組織構造が認められないことがわかった。 以上の結果より、HDACは胎生期下顎隆起におけるパターン形成において、大変重要な役割を果たしていることが示唆された
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HDAC阻害剤であるTSAの添加実験により、下顎隆起のパターン形成におけるHDACの役割の解明が進んでおり、また、HDACのshRNAベクターの作成も終了しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
HDACのshRNAベクター作成と遺伝子導入:エレクトロポレーション法および microinjection 法によりrat のshRNAベクターを遺伝子導入する。我々は、すでにpENTR/U6ベクターを用いたshRNAシステムをラット下顎隆起器官培養に適応することにより、目的遺伝子のノックダウンに成功している。培養開始3, 6, 12, 24および48時間後に培養器官より total RNA、およびタンパク質を抽出、収集し、RT-PCR 法および Western blotting 法にてのHDACの遺伝子発現が抑制されていることおよびタンパク量が減少していることを確認する。遺伝子導入は無作為に片側に行い、左右差を検討する。また、蛍光によるHDAC活性測定を行う。 次にHDACはWntシグナル伝達経路およびNotchシグナル伝達経路の調節より、下顎隆起間葉細胞の増殖・分化を制御しているという仮説を立て、WntシグナルおよびNotchシグナル関連遺伝子の発現動態、およびWntシグナルおよびNotchシグナル伝達の検討を細胞培養と器官培養を用いて行う。 さらに、ChIP(Chromatin Immunoprecipitation)による解析として、クロマチン領域のヒストンのアセチル化、転写因子の結合状態を調べることにより、遺伝子の転写制御解析を行う。分化制御因子が結合すると考えられる領域の同定、さらに軟骨分化の制御因子として知られるSox9などの転写因子との関連を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は消耗品のみの使用とする。実験動物、培養用器具と試薬、分子生物学実験用試薬とChIP解析費を計上する予定としている。
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