2012 Fiscal Year Research-status Report
軟食化が顎口腔機能の発達に及ぼす影響-マウスモデルを用いた咀嚼・嚥下機能解析
Project/Area Number |
24792296
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
内海 大 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (80622604)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 歯科矯正学 / 摂食嚥下機能 / 軟食化 / マウス |
Research Abstract |
オスICRマウスを用いて、離乳以降から成獣期まで、1日当たりの摂取カロリーを厳密に管理して粉末飼料にて飼育を行った結果、通常の固形飼料飼育と同じ体重増加曲線を描く軟食化モデルマウスの構築に成功した。これにより形態的差異等の複雑な要素を排除し、軟食化が顎口腔へもたらす影響を従来より一層明確化することが可能となった。 このモデルマウスを用いて3週齢から20週齢まで飼育を行ったのち、動物実験用3DマイクロCTによる形態的データ収集、筋活動記録および3次元顎運動の計測を行ったところ、咀嚼運動において、通常飼料飼育では硬い食品と軟らかい食品で異なる咀嚼運動を呈していたのに対し、軟食化モデルマウスでは硬い食品を食べた際に咀嚼経路に乱れが生じ、咬合相の距離・時間ともに軟らかい食品咀嚼時との変化が見られなかった。筋活動においても通常飼料飼育では硬い食品で大きな咬筋活動を認めたのに対し、軟食化モデルマウスでは硬い食品咀嚼時の筋活動の増強を認めなかった。これらのことから、軟食化モデルマウスにおいて食品性状による咀嚼運動の調整機構、いわゆる「食品の食べ分け」がなされていないことが明らかとなった。また、この軟食化モデルの結果は、15週齢から20週齢まで固形飼料飼育を行ったキャッチアップ群においても同様であったため、機能のキャッチアップはなされていないことがわかった(第50回顎口腔機能機能学会学術大会にて発表 2013年4月)。 本研究の目的(軟食化による機能発達への影響、臨界期の有無、臨界期後の機能回復、機能獲得における必須食品性状)と現在の研究結果を参照すると、軟食化により末梢感覚受容器の未発達に起因した末梢咀嚼調節機構、あるいは咀嚼中枢の形成不全が示唆されること、咀嚼機能獲得に際し臨界期は存在し、臨界期後の機能獲得は困難であること、機能獲得に際して食品の硬さは必要であることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的に記載した事項(①軟食化によってもたらされる顎口腔諸器官の機能低下が、摂食・嚥下機能の発達にどのような影響を与えるのか ②摂食・嚥下機能の臨界期(critical period)は存在するのか ③臨界期を逃した後の機能回復(catch up)は可能か。どの程度まで回復するのか ④食品性状のなんのパラメータが摂食・嚥下機能の獲得に関与しているのか)においてほぼすべての項目において概ね指標となるデータの算出に成功している。 但し①については、軟食化による機能低下データを得ることができたが、機能低下部位が末梢であるか中枢であるか、もしくはその両方であるかを特定するには至っていない。③については、飼育期間の問題より『どの程度まで回復するか』といった目的の明確な答え現在では出ていない。④についても食品パラメータの解析が進んでおらず未解明の項目がある。これらのことから、現状として完全に満足できる達成度とは言えない。但し、②については、臨界期の存在を確定させるデータを得ることができたため満足な結果と言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に予定していたデータ計測については、概ね達成することができたため、これらのデータの解析を軸として研究を進めていく方針であり、今後の実験計画が順調に進めば実験匹数の増加を試みる予定である。 形態的データの解析および、下顎運動・筋活動記録の解析を進める予定であるが、下顎運動および筋活動解析については平成24年度において既に概ね解析が進んでおり、他の解析を主として行なっていくこととする。 舌運動計測および咀嚼筋支配神経の電気償却については実験手技の試行を繰り返しており、手技が確立次第解析を進めていくこととする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していた運動解析ソフトウェアについては、既に入手して解析を行なっているため、実験手技を試行している舌運動計測および咀嚼筋支配神経の電気償却の機材確保(小動物固定装置、中枢刺激電極等)に充当する予定である。実験モデル動物についても匹数の増加を試みるため購入を予定おり、その他の機材についても順次購入予定である。
|
Research Products
(4 results)