2012 Fiscal Year Research-status Report
離乳期の食事環境が自閉症モデルラットの摂食行動や機能発達に与える影響
Project/Area Number |
24792304
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
大岡 貴史 昭和大学, 歯学部, 講師 (30453632)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 自閉症 / 疾患モデルラット / 摂食行動 |
Research Abstract |
雄SDラットの自閉症モデルラットおよび対照SDラットをそれぞれ3匹ずつ用意し、生後11日から(1)自閉症モデルラット2匹、(2)自閉症モデルラットと対照ラット各1匹、(3)対照ラット2匹を個々のケージにて飼育した。この条件下で摂食行動のビデオ撮影、食餌摂取量、体重の計測を行い、生後21日まで観察・計測結果を集計した。 摂食行動の観察結果では、自閉症モデルラット同士がお互いに接近して食餌摂取する回数が有意に少なかった。一方、対照ラットと自閉症モデルラットを同時に飼育した群では対照ラット同士の接近回数との差はみられなかった。食餌摂取量の計測結果では、11日目から21日目の期間にわたり3群間で差はみられず、自閉症モデルラットおよび対照ラットの体重増加も有意な差は生じなかった。 自閉症児では共食の制限や摂食行動の異常が報告されており、モデルマウスにおいても他のラットと共に摂食行動を起こすことが少ないことから、モデルマウスにおいても自閉症児の摂食行動の検討が可能であると考えられる。一方、対照ラットは自閉症モデルラットに接する行動が多く、自閉症モデルラットの摂食行動が何らかの要因によって変化する可能性が示唆された。これらの研究成果から、自閉症児の摂食行動の特徴はモデルラットでも一部再現されること、健常ラットの存在によってその行動が部分的に変化したことから、自閉症児における摂食行動を変化させる要因を検討できると推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実験計画では、自閉症モデルラットと対照ラットを生後1日から21日まで母子分離下で飼育を行い、モニタリングシステムを用いて摂食行動の記録・比較を行う予定であった。摂食行動の指標としては、摂食量(固形食・水分)および摂食回数を測定する予定であり、固形食の摂取量は問題なく計測可能であった。水分の摂取量については水を貯留しておくボトルがラットの行動によって移動し、正確な摂取量の測定が困難であった。しかし、ボトルの位置や先端の長さを調整することによってラットの行動の影響を受けずに計測することが可能となったため、テストを経て来年度には水分摂取量の計測も可能となる予定である。一方、当初は自閉症モデルラットと対照ラットの食餌摂取回数のみを計測する予定であったが、固形食の摂取量の測定が順調に進んだため、2種のラットを同じケージで飼育した際の摂食行動も観察が行えた。これは当初の予定よりも早い段階で計測が実施でき、来年度については水分摂取量や時間帯に関する要因も加味した計測および検討が行えるものと考えており、全体の実験としては概ね予定通り進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、自閉症モデルラットと対照仔ラットとの摂食場面における相互関係の解明を目的として研究を実施する。 これまでに標準化された自閉症モデルラットの特徴的な摂食行動の点について、自閉症モデルラットの飼育環境を変化させることでどのように変化するかを解明する。そのため、以下の実験群を設定し、自閉症モデルラットの成育環境を変化させた状態で実験を行う。早期混合群は、生後7日以降に自閉症モデルラットと対照仔ラットを同じケージ内で飼育する。通常混合群は、生後14日以降に自閉症モデルラットと対照仔ラットを同じケージ内で飼育する。完全分離群は、自閉症モデルラット2匹を同じケージ内で飼育し、対照仔ラットとの接触がない状態とする。一時混合群は、食餌摂取時のみ自閉症モデルラットと対照仔ラットを同じケージ内で飼育し、他の時間は対照仔ラットとの接触がない状態とする。この状態でこれまでの研究結果にて使用した摂食行動の指標(摂取量、接近回数、同時に摂取する回数)の計測を行い、自閉症ラットの摂食行動の変化を生じさせる要因について詳細に検討する。 これまでの自閉症モデルラットの行動観察では、申請者らが示したように自閉症モデルラット同士の社会的相互作用は極めて少ないが、対照ラットとの関係では相互作用が増加すると考えられる。一方、対照ラットでは行動範囲を限定された別の対照ラットに自ら近寄り、その近辺で行動する傾向が強いが、ASDラットから対照ラットには接近しないという特徴がある。本研究では摂食行動を指標とし、これらの社会的相互作用の障害が対照仔ラットによって改善されるのか、早期からの介入によってその変化に差が生じるかを解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、昨年度と同様に自閉症モデルラットの作成および食餌摂取のモニタリングに関する研究費が必要となる。自閉症モデルラットを作成するための母獣(Sprague-Dawleyラット)やバルプロ酸ナトリウムの購入、飼料や床敷などの消耗品を購入する予定である。また、行動観察および結果の記録に使用するカメラや記憶媒体も購入する必要がある。 小児歯科学会、国際障害者歯科学会などでの成果発表のための旅費として研究費の一部を使用する。また、成果の学会誌投稿のための英文校正や投稿料なども研究費の一部を使用する。
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Research Products
(7 results)