2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒト歯根膜線維芽細胞のマーカー遺伝子とエピジェネティックな遺伝子発現の探索
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24792316
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
石川 美佐緒 鶴見大学, 歯学部, 学部助手 (90582445)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | マイクロアレイ / アルカリフォスファターゼ / RT-PCR法 / バイサルファイトシーケンス |
Research Abstract |
ヒト歯根膜線維芽細胞(hPDLc)を特徴づける遺伝子を探索するため、ヒトの皮膚・歯肉・ hPDLcを培養し、そこからマイクロアレイによる発現遺伝子の網羅的解析をおこなった。ヒト皮膚vs hPDLc、ヒト歯肉vs hPDLcで注目すべき遺伝子をGene Ontology(on line)に基づき、それぞれのデータを比較検討した。 本年度は初めに、以前からhPDLcに特異的に強発現していると報告があるアルカリフォスファターゼ(ALP)の発現とその働きについて注目した。hPDLcの特徴として他の線維芽細胞には無い石灰化能がある。この石灰化に欠かせないのがALP活性とされているため、本研究で用いる線維芽細胞に石灰化誘導培養をおこない、石灰化能とALP活性について確認をおこなった。その際の経時的なALP activityをみてみると、hPDLcでは上昇し石灰物の産生もみられたが、他の線維芽細胞では全く変化を示さなかった。通常培養時の3つの線維芽細胞のALP activityを調べると、hPDLcが他の線維芽細胞よりも高い活性を示していた。次に、RT-PCR法でALP発現をみるとhPDLcで強い発現を認めたが、ヒト皮膚・歯肉でも発現を認めた。また、ALPプロモーター領域は2つあると言われており、それぞれの発現を確認すると、3つの線維芽細胞ともに全てのプロモーターの発現を認める結果となった。それら、プロモーター領域をバイサルファイトシーケンス解析をおこなうと、全てのプロモーター領域で脱メチル化していた。この結果より、hPDLcに特異的なメチル化プロファイルを得ることができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初めにヒト歯根膜線維芽細胞(hPDLc)に特徴的な遺伝子を、マイクロアレイの分析結果よりいくつかの遺伝子に注目し、その発現をRT-PCR法で確認をおこなう。次に、バイサルファイトシーケンス解析をおこない、その遺伝子のプロモーター領域を中心にメチル化プロファイル解析をおこなう予定であった。 本年度は、以前から報告されているアルカリフォスファターゼ(ALP)に注目し、計画通りにRT-PCR法で発現を確認し、バイサルファイトシーケンス解析をおこないALPプロモーター領域のメチル化状態の確認までおこなうことができた。しかし結果として、本研究に使用している3つの線維芽細胞では、ALPプロモーター領域のメチル化状態は同じであることが分かり、当初の予定していたhPDLcに特異的なメチル化プロファイルの結果を得ることができなかった。 また、マイクロアレイによる発現遺伝子の網羅的解析において、hPDLcに特異的な性質である未分化状態を維持する遺伝子や骨形成に関わる遺伝子に注目しヒト歯肉vs hPDLcで比較検討をおこなったが、大きなFoldchangeを示す遺伝子の特定が難しかった。そのため、ヒト皮膚vs hPDLcで比較検討をおこなった結果、いくつかの大きなFoldchenge を示す遺伝子があった。現在、1つの未分化状態に関する遺伝子に注目し、その遺伝子発現をRT-PCR法で分析中である。そのため、本年度はマイクロアレイ解析に時間がかかり、バイサルファイトシーケンス解析までおこなうことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、ヒト歯根膜線維芽細胞(hPDLc)の特徴的な性質で骨形成に関わる遺伝子の1つとされているアルカリフォスファターゼ(ALP)に注目し、3つの線維芽細胞でその遺伝子発現と活性量の変化を通常培養と石灰化誘導をおこなったときの状態で経時的に比較分析をおこなった。その結果、遺伝子発現における相違が認められなかったが、その活性量や石灰化物産生能において相違を認めた。そのため、2つの線維芽細胞にはみられないhPDLcのALPの活性量や性質の違いは、エピジェネティクスなレベルの制御を受けていないと考えられた。 次年度では、他の細胞にはみられないhPDLcに特異的な性質の1つである石灰化能について研究を進めていく予定である。hPDLcは石灰化誘導をおこなったとき骨芽細胞に分化しながら石灰化物を産生するとも言われているため、骨芽細胞の石灰化能と関係づけながら経時的な遺伝子発現の変化を、マイクロアレイ解析をおこないhPDLcと比較検討し研究を進めていく予定である。 また、ヒト皮膚vs hPDLcのマイクロアレイの結果から注目した遺伝子の発現やその遺伝子の歯根膜中での働きについて現在分析中であり、この遺伝子については今後も検討していく予定である。当初の計画では、その遺伝子のプロモーター領域をバイサルファイトシーケンス解析までおこなう予定であったが、ALP遺伝子でのメチル化プロファイルの結果を考慮し、今後、バイサルファイトシーケンス解析をおこなう必要があるのかについては現在、検討中である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定では、3つの線維芽細胞のマイクロアレイ結果をもとに注目した遺伝子のシーケンス解析を依託するために多くの研究費を使用する予定であった。しかし、本年度の結果より当初予定していた結果とは異なってきたため、ヒト歯根膜線維芽細胞のアルカリフォスファターゼと石灰化能について骨芽細胞と比較検討をおこない、その遺伝子発現について研究を進めるため、細胞の培養機材、培養溶液の購入に使用する予定である。
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