2012 Fiscal Year Research-status Report
次世代シークエンシング技術を用いたインプラント周囲疾患の細菌叢機能と病態の解析
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24792321
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
竹内 康雄 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (60396968)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | インプラント / 歯周炎 / 細菌 |
Research Abstract |
本研究の目的は、次世代大規模シークエンシング技術を用いてインプラント周囲疾患に認められるプラークバイオフィルムの全体像を把握し、本疾患の発症・進行に関わる細菌学的因子を明らかにすることである。本年度は16S配列解析によるバイオフィルム構成細菌種の同定を主に行った。インプラント周囲炎罹患(PI)部位と歯周炎(P)罹患部位をもつ20名の被験者より粘膜下/歯肉縁下プラークサンプルを採取し、細菌DNAを抽出後に増幅させ、パイロシークエンスによる解析と細菌の同定を行った。その結果、サンプルからは19門、188属、543OTUが検出された。門や属のレベルでみると、PI群とP群の細菌構成は類似しており、OUT、Shannon index、Chao1など、サンプル内の多様性を示す指数は、P群で高値を示したが、統計学的有意差は認められなかった。種レベルでみると、検出頻度の高い細菌叢のコアとなる細菌種はPI群とP群で違いが認められた。例えばPI群ではP群と比較して検出される細菌種が多く、P. nigrescenceといった嫌気性菌が多く検出されていた。また、歯周炎に特に関連が深いとされるP. gingivalis、T. forsythia、T.denticolaといった細菌は、P群では全てのサンプルから検出されたが、PI群では必ずしも検出されてはいなかった。これらのことから、インプラント周囲炎も歯周炎と同様Polymicrobial diseaseであることが確認され、歯周炎とは異なる細菌叢が存在していることが明らかになった。歯周炎とは異なり、歯周病原細菌以外の細菌種がインプラント周囲炎には関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細菌叢の組成解析については、これまでの研究結果をまとめ論文投稿の準備中である。細菌の機能解析は、当初メタゲノム解析を予定していたが、予備実験により抽出されるDNA量から解析が困難である可能性が高いことが判明した。そのためメタトランスクリプトームによる解析を試みる予定で、現在、実験法や解析条件を検討中である。研究計画の修正を行うことにはなったが、研究全体ではおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きインプラント周囲細菌叢中の組成および機能解析を行う。細菌種の検索については、歯周組織が健康な歯肉溝部におけるプラークの解析が残っており、これを中心に進める。既にサンプル採取も進めている。機能解析はメタトランスクリプトームにより行う。現在、実験手技(mRNAの抽出とシークエンス)について条件を詰めている段階である。細菌種のデータに細菌群の転写解析を併せることで、存在する細菌叢がサンプル採取時にどの様な動きをしていたのかを明らかにできると考えている。 これまでの研究から細菌叢の構成は個体差が大きく、また既知の歯周病原細菌や培養な菌ではなく、培養が困難でその性質がよくわかっていない未知なる細菌がインプラント周囲炎の病態に深く関わっている可能性があると予想している。従って今後もサンプルを集め、なるべく多くの解析ができるよう努める。またデータ解析が予想以上に時間のかかる作業であったことから、新たな研究協力者を入れることも計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に細菌DNAおよびRNA抽出試薬、シークエンス用試薬の購入にあてる。
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Research Products
(2 results)