2012 Fiscal Year Research-status Report
歯肉上皮細胞におけるTGF-βによる細胞接着因子制御の分子生物学的解明
Project/Area Number |
24792327
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山城 圭介 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (30581087)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 細胞接着 / TGF-β / ECM / integrin |
Research Abstract |
現在までに我々はTGF-βが歯肉上皮細胞の遊走と増殖に関わることを明らかにした。TGF-βは細胞の接着にも関与していると考え,TGF-βがintegrin及び細胞外基質(ECM)がどのように制御しているかを検討した。まず歯肉上皮細胞をAaで感染させた場合の接着細胞数を,接着アッセイを用いて検討した。その結果,Aaを感染させることにより接着細胞数は有意に低下した。感染時には,integrin α2, β4, β6, Fibronectin-1, Tenascin-cの遺伝子発現量が有意に低下した。また,integrin α5, IL-8, TGF-β1の遺伝子発現量は増加した。そこで感染時のTGF-β1の働きを調べるために歯肉上皮細胞をTGF-β1で刺激後,Aaを感染させたところ,接着細胞数は有意に低下した。次に感染がない状態の歯肉上皮細胞をTGF-β1で刺激したところ,接着細胞数は有意に上昇した。その際の遺伝子発現量を調べたところ,integrin α2, β4, β6, Fibronectin-1, Tenascin-cの発現量が有意に上昇した。興味深いことに感染時に発現が上昇したintegrin α5は,非感染時のTGF-β1刺激時もその発現は上昇した。そこでintegrin α5の阻害剤を用いてAa感染時の細胞接着数を調べたところ,Aa感染時接着細胞数は減少するが,integrin α5を阻害すると接着数は減少しなかった。以上のことをまとめると,TGF-β1は感染時と非感染時には接着に対する効果が真逆であることが明らかとなった。また,TGF-β1が制御するintegrin α2, β4, β6, Fibronectin-1, Tenascin-cは細胞接着に関与するが,integrin α5はレセプターとして感染時の刺激を細胞内に伝える役割があることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この一年間で関連英語論文が2本受理され,国際学会において3回,国内学会3回発表している。また現在投稿準備中の論文は「Overexpression of Smad2 in human gingival epithelial cells enhances cell adhesion molecules」,「Aggregatibacter actinomycetemcomitans decrease cell adhesion via integrin alpha 5 in human gingival epithelial cells」,「Aggregatibacter actinomycetemcomitans infection and administration of antibiotics affects cell adhesion in human gingival epithelial cells」の3本である。また本年度に計画している歯周炎モデルマウスについても順調に進展している。具体的には歯周炎モデルマウスの作成がかなりの確立で再現性が得られ,現在野生型マウスとSmad2過剰発現マウスにおいて歯周炎の進展にどのような違いがあるのかを解析準備中である。また,歯肉上皮細胞以外でも面白い知見が得られている。歯根膜線維芽細胞は歯周組織の再生に大変重要な組織であるが,この細胞にSmad2を過剰発現させたところ線維芽細胞増殖因子(FGF2)の発現が著しく上昇した。このことは,TGF-βにより歯周組織再生が促進出来る可能性を表している。以上のことより我々の研究は概ね順調に進展していると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度はin vitroで得られたデータを元に3本の論文を投稿する予定である。特にintegrin α5が感染時に細胞内へシグナルを伝えるレセプターとして働くことが明らかとなったため,integrin α5を過剰発現させた歯肉上皮細胞において接着能がどのように変化するのかを詳細に調べる予定である。またTGF-β1が感染時と非感染時に役割が異なることも大変興味深い知見となった。よって感染時,非感染時のTGF-β1が及ぼす影響,特にTGF-β1の下流であるSmad2がどのように影響するのかを調べる予定である。これらに加え本年度は歯周炎モデルマウスを用いた解析に重きを置く予定である。具体的には野生型マウスと,Smad2過剰発現マウスのどちらが歯周炎になりやすいか,もしくはどちらが治りやすいかについて,細胞遊走,増殖,接着に注目して解析を行う予定である。これらが明らかになれば,TGF-β1を歯周病治療薬として応用できる可能性を動物実験で示すこととなる。感染時にはTGF-β1を抑制し,感染源除去後は早期創傷治癒を目指すべくTGF-β1を投与するなど,TGF-β1が新規歯周病治療法として使用できる可能性を模索している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|
Research Products
(8 results)
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Overexpression of Smad2 Enhances FGF2 Expression in Periodontal Ligament Cells
Author(s)
Y. UGAWA, T. YAMAMOTO, K. YAMASHIRO, S. HONGO, H. IDEGUCHI, M. SHIMOE, K. TOMIKAWA, S. KOCHI, H. MAEDA, S. TAKASHIBA
Organizer
91th International Association for Dental Research
Place of Presentation
Seattle, USA
-
-