2012 Fiscal Year Research-status Report
歯石中のリン酸カルシウム結晶によるインフラマソームの活性化が歯周組織に及ぼす影響
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24792335
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中村 弘隆 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (70346914)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交換、ドイツ |
Research Abstract |
歯周炎は歯周組織の破壊を特徴とする炎症性疾患であり、局所で産生されるIL-1βなどのサイトカインは、歯周炎の進行に重要な役割を果たす。IL-1βはカスパーゼ1によって活性化するが、カスパーゼ1を制御しているのはインフラマソームであり、近年結晶などの刺激がNLRP3インフラマソームを活性化することが明らかとなった。本研究では歯石中のリン酸カルシウム結晶がマクロファージや好中球においてNLRP3インフラマソームを介したIL-1β産生に関与するかどうか検討した。 マウスマクロファージ(WT、NLRP3-KO)またはヒト末梢血多形核好中球(PMN)をLPSでプライミング後、カスパーゼ1阻害剤の存在下/非存在下において、歯周病患者から採取した歯石で刺激した。培養6時間後に培地上清を回収し、IL-1β濃度をELISAで測定した。 WTマクロファージをプライミング後に歯石で刺激すると、培地上清にIL-1βの産生がみられたが、NLRP3-KOマクロファージにおいてはIL-1βはほとんど産生されなかった。プライミング後のWTマクロファージにおけるIL-1βの産生は、カスパーゼ1阻害剤の添加により有意に抑制された。同様にヒトPMNをプライミング後に歯石で刺激するとIL-1βを産生した。このIL-1β産生は、カスパーゼ1阻害剤の添加により抑制された。以上の結果より、歯石中のリン酸カルシウム結晶はマウスマクロファージおよびヒトPMNにおいて、NLRP3インフラマソームを介したカスパーゼ1の活性化によりIL-1β産生に関与することが示唆された。 以上の結果は、第12回国際エンドトキシン自然免疫学会(IEIIS, Tokyo, 2012, p.160)および、2012年度日本歯周病学会九州5大学研修会(2012, 福岡, p.13)にて発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画通りに、歯石結晶によるNLRP3インフラマソームの活性化がin vitroにおいて確認された。また一部平成25年度に計画していた、健常者の末梢血を用いた研究も行うことができ、これらの研究成果を国際・国内学会の両方で発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、実際に歯周炎患者の歯周組織で歯石結晶によるインフラマソームの活性化がみられるかを検証する。具体的には歯周炎患者の歯肉溝浸出液(GCF)中に存在する好中球を分離し回収する。ただちに専用ディッシュにプレーティングし共焦点レーザー顕微鏡を用いて、 エンドソーム内に好中球に貪食された歯石結晶が存在するか観察する。さらに歯周ポケット内の好中球にカスパーゼ1やIL-1βの発現がみられるか検証する。 また研究成果の報告を、日本歯周病学会、日本歯科保存学会などの国内学会やIADRなどの国際学会にて行い、米国学術誌PLoS ONEに投稿する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に引き続き、設備、備品は現有のものを使用することで計画遂行に支障はない。 ELISAキット、細胞培養用培地や滅菌プラスチック器具、イムノブロッティング用抗体等の薬品や消耗品購入に研究費を要する。 また本研究課題の成果発表のための国内・外国旅費および外国語論文の校閲費、研究成果投稿料が必要である。
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