2012 Fiscal Year Research-status Report
マルチモダリティーによる情動生成のメカニズムの解明
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24792353
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
品川 英朗 大阪大学, 社会経済研究所, 招聘研究員 (60551067)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 神経科学 / 社会医学 / 医用画像工学 / 脳・神経 / MRI |
Research Abstract |
MRIデータを解析するにあたり、解析が円滑にできるように、脳機能形態解析ソフトであるStatistical Parametric Mapping (SPM8, Wellcome Department of Imaging Neuroscience)や拡散テンソル画像解析ソフトであるThe diffusion TENSOR Visualizer-II(dTV-II, ut-radiology.umin.jp) などのセットアップを行った。さらにData Acquisition Toolbox (The mathworks)やVisual Studio2008(Microsoft)を用いて、functional Near-infrared Spectroscopy(fNIRS)用提示画像や外部トリガー(DIG-100M1002-PCI装置を利用)などを作成した。また位置決め可能な3次元デジタイザーによるグループ解析も試みた。このような実験系を円滑に運用できるようにすることは、非常に重要で、今後の定量的な評価にも十分対応できると考えている。 様々なシークエンスによる拡散テンソル画像(DTI)撮像を行い、パラメーターの選定を行った。具体的には、1.5T-MRI装置におけるMotion Probing Gradient (MPG)やb-valueなどの値の設定を行った。また形態計測法として標準的な撮像シークエンスであるMPRAGE (Magnetization Prepared Rapid Acquisition Gradient Echo)撮像法を利用して撮像を行い、解析においては、Matlab(The mathworks)上でSPM8ソフトウェアを用いてOptimized VBM法により比較検討を行った。特にストレス応答領域である視床下部に注目し、その部位の形態学的評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Quality of life (QOL)の一環として、ヒトがいかにストレスを感じずに快適な生活を送ることができるかという普遍的なテーマが存在する。それら不安・嫌悪・恐怖などの負の情動生成のメカニズムの解明は必要不可欠であり、現在までに提案した研究計画に基づいて実験を遂行してきた。具体的な達成度については、(1)経済ゲームを用いた行動実験を行い、健常成人(n=40)に対して、時間制約の有無での意思決定に関する行動実験(各n=20)を行った。その結果、時間制約がある場合、典型的な意思決定ができない被験者も認められた。すなわち時間制約がある場合の意思決定では、ストレスや不安を被験者に与えることから、正確な意思決定が出来なかった可能性がある。(2)実際に光脳機能イメージング装置(fNIRS)を用いて計測を行った結果、前補足運動野でのoxy-Hb量の増加が認められたことから正確な意思決定よりも時間制約による影響が強かったことが示唆された。また様々な対戦型の経済ゲームによる前頭前野のoxy-Hb変化量の同定では、背外側前頭皮質、眼窩前頭皮質、および島において有意にoxy-Hb量が増加した。これらの部位は、不安や喜怒哀楽などの情動に関与すると言われており、本研究結果からも経済ゲームの種類によってそれらの情動を惹起させることが明らかになった。(3)口腔粘膜から綿棒を使って、DNA抽出のためのサンプリングを行い、PCR解析により、セロトニントランスポーター(5-HTTLPR)の遺伝子多型(SS、SL、およびLL)を分類することができるか比較検討を行った。今後、行動実験などの結果との相関を評価し、それら負の情動生成をどうすれば軽減あるいは抑制することができるのかについて考察したい。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では、前年度の結果を踏まえて、ストレスから生じる心理学的な負の情動生成のメカニズムについて多角的に解明したい。特に、抗酸化物質などによるストレス耐性の研究も行いたいと考えている。具体的にはストレスに強い脳を作るために、抗酸化物質の効果について動物実験も含めて検討を行いたい。具体的には下記のような手順で遂行する予定である。 (1)拡散テンソル画像法(DTI)による神経繊維の描出:脳賦活領域間での神経線維走行や繊維束の描出を行い、その連結性を評価する。特に大脳皮質-大脳辺縁系ループにおける神経繊維走行の同定を行う。さらに、DTI研究での定量評価で一般に用いられるFractional Anisotropy (FA)やApparent Diffusion Coefficient (ADC)などを利用して、負の情動生成を生じやすい人、あるいは逆に全く生じにくい人での神経繊維の連続性に関する定量的評価も行う。また主観的な指標として、ストレステスト(GHQ28、STAIあるいは簡易型TCI)を用いた分類も行う。 (2)MRS(Magnetic Resonance Spectroscopy)による脳内での代謝評価: スペクトル解析としては、視床下部室傍核に着目し、NAA(N-アセチルアスパラギン酸)、Cho(コリン含有物質)、Cr(クレアチン)などの代謝変化について行う。特にNAAは神経細胞内に特異的に存在することから、その代謝変化については十分な検討を行う。また生体指標として、唾液中のコルチゾールやクロモグラニンAなど、尿中および血中のコルチゾールなどの変化を、測定キットを用いて同時に計測する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度に物品購入費用として計上していた唾液中のコルチゾールやクロモグラニンAなどの測定のための測定キットなどの試薬の購入や抗酸化物質の影響を調べるための実験用マウスやラットの購入などを行い、研究の遂行の若干の遅れにより購入できなかった物品購入を行う。また当該助成金が生じた最も大きな原因は、当初計画していなかったfNIRSの使用によるMRI実験回数の減少である。最終年度は、MRI実験を多く組み込む予定であり、それに伴うMRI使用料、実験被験者への謝金の支払い、実験補助者の人件費、画像データ保存用MRI光ディスクなどの購入を予定している。当初の計画通りに実験を遂行し、円滑な研究費の使用を行いたい。また最終年度ということもあり、国内外の学会発表や国際雑誌への投稿など、調査研究旅費(学会出張費および学会参加費)、英文論文校閲費あるいは英文投稿料などに研究費の使用を考えている。
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Research Products
(5 results)