2012 Fiscal Year Research-status Report
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24792357
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
冨岡 未記子 九州大学, 歯学研究科(研究院), 共同研究員 (70546473)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | う蝕象牙質 / 細菌叢 / パイロシーケンス解析 |
Research Abstract |
今年度はまず、九州大学病院歯科部門歯内治療科および共同研究施設において同意を得られた被験者(平均年齢は25.4歳(4歳から76歳)、男性17名、女性15名の合計32名)の32歯(乳歯10本、永久歯22本)からう蝕象牙質44サンプルを採取した。同時に、縁上プラークおよび唾液の採取も行った。う蝕象牙質44サンプルについて16S rRNAアンプリコンパイロシーケンス解析を行い、う蝕象牙質中の細菌叢を調べた結果、同じ被験者から得られたう蝕象牙質の細菌構成は類似していることがわかった。そこで、32サンプルについて解析したところ、真正細菌の9種類の門(Firmicutes、Actinobacteriaなど)、71種類の細菌属(Lactobacillus、Propionibacteriumなど)が検出された。細菌構成の類似性で分類すると、大きく3つのクラスターに分類された。クラスターIはLactobacillus属が大半を占めるグループである。クラスターIIはLactobacillus属が半分程度存在するグループであり、残りの半分に数種類の細菌属が少しずつ存在するタイプと残りの半分のほとんどがPropionibacterium属とOlsenella属で占められるタイプとに分けられる。クラスターIIIはLactobacillus属が優勢でないグループで、Olsenella属が優勢なタイプ、Prevotella属が優勢なタイプ、Actinomyces属が優勢なタイプに分けられる。年齢に着目すると、クラスターIは15歳未満が多く、クラスターIIIのActinomyces属が優勢なタイプは30歳以上が多いことがわかった。性別やう蝕の深さと細菌叢には関連は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この一年間で32名の被験者からサンプルを採取し、う蝕象牙質中の細菌叢の解析を細菌種レベルまで終了し、類似性によりクラスター解析した結果、3つのクラスターに分けられることが明らかとなった。よって、当研究はおおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、昨年度に実施された細菌叢のクラスター解析の結果を踏まえて、各クラスターから典型的なパターンを示すう蝕象牙質試料を10個程度ずつ選び、クローンライブラリー法を用いて、各クラスターに優勢に存在する細菌種を特定する。 次に、象牙質う蝕のなかで優勢な菌として同定された細菌種の酸産生能、耐酸性能やコラーゲナーゼ活性などを測定し、象牙質分解能を評価する。さらに、同定された細菌種と同一細菌叢に属する他の細菌種との相互作用を調べる。以上の結果より、象牙質う蝕の進行を活性化している細菌種を同定する。 さらに、被験者の縁上プラークや唾液について、T-RFLP法を用いて細菌叢を解析する。同一被験者において、う蝕象牙質、縁上プラークおよび唾液の細菌属構成を比較し、その類似性ならびに相違性を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に行った16S rRNAアンプリコンパイロシーケンス解析が当初予定していた予算より低く抑えられたため、次年度に持ち越した。平成25年度は持ち越した助成金を考慮し、クローンライブラリー法を行うサンプルの数を調整する予定である。
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