2012 Fiscal Year Research-status Report
X染色体多型の利点を応用した法歯学的個人識別における弱点の克服
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24792365
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
中村 安孝 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (40598851)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 歯科法医学 / 歯科的個人識別 / DNA鑑定 |
Research Abstract |
DNA多型検査による新たな個人識別法として、X染色体上の18箇所のSTR(3~4塩基からなる繰り返し構造で、この繰り返しの回数が個人識別の指標になる)多型を同時に検査出来る検査法を作成し、546人の日本人多型情報を取得してLegal Medicineに論文として発表した。従来のDNA検査では常染色体(親から子へ二分の一の確率で遺伝し、血縁が遠くなると識別能力が著しく低下する)Y染色体(父親から息子へそのまま遺伝する)の2種類が用いられてきたが、X染色体検査は既存の検査では検討不能な事例の幾つかを(例えば父親と娘の関係において常染色体鑑定のみでは結論が出せない場合等)の鑑定を可能とし、X染色体を用いたDNA鑑定単体でも十分な識別能力がある事を立証した。 X染色体は母親から子供へ遺伝する場合において組み換えを起こす。その為、母親の持つ2つのX染色体のどの部位がどう組み換えを起こして子に伝わったかを把握し利用する事が出来ればX染色体検査だけの利点となると考え、上記18座位検査とは別に、組み換え検査用に13座位のX-STRを一度に増幅するPCR法を作成した。実際の鑑定事例に置いて使用し、組み換えを考慮したX染色体DNA検査を行う事でより精度を高める事に成功した。 当講座で作成した18座位検査と13座位検査に加え、市販の12座位検査キットで同一サンプル(日本人約550人)を検査し、常染色体、ミトコンドリア、Y染色体の3種の検査結果との比較検討を可能とするデータベースを作成に取り掛かっている。 人種鑑別や集団移転学分野での重要な基礎情報となるマレーシア人約300人のX-STR12座位の多型情報を取得し、またX染色体鑑定においてSTR検査と相互発展性が高いと予想されるSNPs(一塩基変異)の検査に着手し、それぞれを学会において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的に掲げた5項目の内 (1)18座位MultiplexPCR法の作成と日本人多型情報の習得 (2)X染色体STRのhaplotype応用に適したMultiplexPCR法の作成 を達成している。 (3)世代を隔てた検査法の確立 (4)日本人550人における常染色体、Y染色体、ミトコンドリアDNA、X染色体の4種の検査結果を統合したデータベース作成 (5)X染色体上のSNPsの検査 にもそれぞれ着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
X染色体DNA検査の日本人多型情報取得を踏まえ、アジアにおいて人種の広がりの起点となった東南アジア(マレーシア人)を対象として同様のX-STR情報を取得する。これはX染色体DNA鑑定の発展の為だけでなく、外国人居住者、犯罪者の増加によりDNA検査で人種を鑑別する技法の確立が望まれており、その基礎となる情報の入手を目的としている。 実際の鑑定において作成したX染色体検査を使用し、X染色体DNA鑑定の有用性の立証、鑑定困難な事例への応用、世代を隔てた検査法の確立を目指す。これらは警察依頼の鑑定意外に、厚生労働省より委託されているシベリア抑留者の遺骨鑑定や、外務省より依頼される複雑な親子関係検査への仕様を元に、情報の蓄積を図る予定となっている。 現在、DNA検査の主流はSTR検査だが、SNPsを検査対象として実験を行い、STR検査と合わせてDNA鑑定の精度向上に役立てる可能性を探る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究経費は、設備備品、消耗品、謝金、その他に該当するものである。 今後購入を予定している市販のDNA検査キットは250,000円/50サンプル、自作の検査キットにおいては1座位に付き通常primer1200円、蛍光primer12300円での作成を予定し、SNPs検査は1箇所に付きTaqman probe primer 56,000円/100サンプル、PCR一回にかかる薬品、ポリプロピレン容器代を150円/回程度と見積もっている。 設備備品として8連ピペットマン90,000円×2の購入を検討し、他、年1回の学会発表を目指し、1回4万円、2名分の計算としている。
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Research Products
(3 results)