2012 Fiscal Year Research-status Report
細胞と動物実験を用いた褥瘡発生に至る酸素濃度と時間の解明
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24792379
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
三木 将仁 埼玉大学, 研究機構総合技術支援センター, 専門技術員 (90515066)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 褥瘡 |
Research Abstract |
褥瘡は皮膚表面に持続的圧力が加わることで,血管が圧迫され血行障害が起こり組織壊死する病態である.この病態は難治性かつ慢性的な疾患であるため,発症前に予防することが重要となる.褥瘡の予防には,持続的加圧による皮下組織の圧密化とそれに伴う組織内酸素濃度の低下を定量的に把握することが重要である.この視点から,当該年度は低酸素濃度で長時間細胞培養した時の細胞障害を測定した. 実験にはL929細胞を使用した.低酸素状態はチャンバーに低酸素ガス(1%,5%)を流すことで培地内の酸素分圧をそれぞれ12mmHg,20mmHg にした.この低酸素状態で培養した時と通常の培養(O2 20.9%)との細胞障害の違いを測定した.測定方法は,細胞から放出される乳酸脱水素酵素(LDH)により細胞障害率を測定し,Calcein AMとEthidium homodimer-1を用いて生細胞,死細胞染色による測定も行なった. その結果,低酸素状態培養では,培養時間が12,18hourではいずれも細胞障害率は低く,通常の培養結果と差が見られなかった.しかし,48hour,低酸素1%のときには細胞障害率がLDHでは60~100%損傷率が見られ,低酸素5%でも通常よりも高い値が見られた.低酸素1%,24~36hourでは20~90%の間で細胞障害率のバラつきが見られた. これらの結果から,細胞に十分に影響を与えるには24hour低酸素状態に晒される必要があるが,実際の褥瘡発生は3~4hourで起こるといわれている.そのため,褥瘡の発生には酸素分圧だけでなく圧力による組織変形,組織組成などの要素が関わっており,それらを考慮する必要があると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した当該年度の研究計画通りに,実験を行うことができ,実験データを採取することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
細胞実験で得た酸素濃度と時間の関係を元に、垂直荷重およびせん断力を麻酔下ラットの大腿部に加える。そして、大腿部皮下組織内に針電極を刺入し、酸素分圧測定装置を用いて加圧部の組織内酸素分圧(PO2)を測定する.また,レーザー血流計を用いて組織内血流量の測定も行なう.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する予定の研究費が生じた状況は,低酸素濃度で長時間細胞培養した時の細胞障害を測定する実験で実験回数が,本年度に予定していた回数よりも少なかった.そのため,次年度に同じ細胞障害を測定する実験を行なうので,その測定用の試薬を購入する.この実験については,本年度と同様の実験のため,手法が確立されているので,次年度に実施する実験に支障をきたさない. 次年度の研究費は主に,酸素分圧測定装置の針電極やレーザー血流計のグラスファイバージョイントプローブ等の購入に充てる.
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