2012 Fiscal Year Research-status Report
「食への援助」に関わる安全確保のための看護師の判断視点と臨床経験年数の関連
Project/Area Number |
24792411
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The Japanese Red Cross Akita College of Nursing |
Principal Investigator |
田中 瞳 日本赤十字秋田看護大学, 看護学部, 助教 (20406903)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 食への援助 / 臨床経験年数 / 安全確保 / 判断視点 |
Research Abstract |
看護師は患者の「食べること」(広義の食事)において安全を前提とし、その上で患者の食べることへの満足を支える援助を「食への援助」と捉えている。食べることは個人的な経験により培われ、食行動の多くに影響する。また、看護師の援助実践も臨床での経験を重ねることで変化する。このことから、看護師の「食への援助」の実践はこれらの経験によって変化することが考えられる。本研究では「食への援助」の実践において、看護師が行っているさまざまな判断を安全確保に焦点化して明らかにすることを目的とした。これを臨床経験年数による比較を行い、臨床経験年数による判断内容や視点の違いを分析する。得られた結果は「食への援助」をより安全に実践していくために、これまでは個人の経験によって培われたであろうものを早期に習得するための看護基礎教育や現任教育の方法を検討するのに有意義である。さらに、ケアの質向上に寄与することが期待される。 平成24年度は質問項目を吟味し、インタビューガイドを作成した。質問項目は、研究者の行った先行研究のうち、安全のカテゴリを形成した内容をもとに、これまでの看護実践経験の内容が現在の実践や安全確保への判断等に影響したかを捉えられるよう考査し、安全確保のための着眼点、現在の実践に至る経緯、安全な「食への援助」を提供するために必要なこと等で構成した。インタビューに加え、対象者の援助実践に影響があると思われる臨床経験年数、勤務している病棟および勤務経験のある病棟、看護基礎教育課程、取得資格等を確認する質問紙を作成した。 インタビューは新たに開拓し協力の得られた2施設にて、①臨床経験年数3年を有するもの、②同5年を有するもの、③同10年を有するもの、④同20年を有するものの各群に実施した。現在は逐語録の作成を行っている。経験年数が20年の群は他の群よりも対象の確保ができにくかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の目的は「食への援助」の実践について安全確保に焦点をあて、それが臨床経験年数によって違いがあるかを明らかにすることである。そのため、対象者を臨床経験年数ごとに確保し、対象ごとの分析結果をもとにした経験年数による特性の抽出と、各群を比較することにより、臨床経験年数による「食への援助」の実践における安全確保への視点や判断基準の差を検討する。 調査の実施に先立ち、平成24年度は質問項目を吟味し、看護実践経験の内容が現在の実践や安全確保への判断等に影響したかを捉えられるようインタビューガイドを作成した。安全確保のための視点や実践に至る経緯を明らかにすることが本研究の目的であり、質問内容の検討は質的研究者の助言を得ながら行った。この点は本研究において重要であったと評価する。 インタビュー調査の実施は、平成24年度は既に研究協力の得られている施設の実施を主とし、加えて新たな研究協力施設を開拓する計画であった。現在のところ、既に協力の得られている施設とは調査への協力は確認されているが、調査実施日程の調整中であり、未実施となっている。新たな協力施設の開拓は関東エリア、関西エリアの2つの施設から協力が得られ、調査が実施済みである。調査対象者は臨床経験年数ごとに調整して収集している。計画では、臨床経験年数の少ない群から順にデータを収集する予定であったが、協力施設との調整により各群から並行してデータを収集している。対象群のひとつは「臨床経験年数20年を有すること」を条件としているが、管理者やパートタイマーを除いた場合、他の群よりも対象者を確保することが難しい。以上より計画に比べ、調査の実施が遅延している状況である。特に協力施設との日程調整の難航がしていることが喫緊の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
喫緊の課題である協力施設と対象者との日程調整については、計画が順調でない場合の対策として検討していた①調査協力施設の開拓の強化・対象者を確保しやすい条件への変更と、②インタビュー実施の代行を検討することを並行して行う。 まずは既に協力を得られている施設との日程調整を優先して行い、データ収集を実施する。また、1施設に依頼する人数について最大2名/群としていたが、施設の特徴を強く反映しないことを前提として、人数を増やすことも視野に入れて検討する。さらに、対象確保が難しい「臨床経験20年を有する者」については、当初の対策に挙げていた「経験年数の条件に2年前後の幅をもたせて協力者を募る」とし、実施するものとする。同時にフィールド開拓については、甲信越エリア、東北エリア以外の地域にも広く協力を求める。日程調整が比較的しやすいエリアでの協力施設の開拓を行う。 また、対象者との日程調整が、調査の実施が滞っている大きな理由であるため、インタビュー実施の代行協力者を募って対応する。これによって調査対象者の日程に沿ってインタビューを実施できるようにする。代行のインタビューアーは研究の主旨を十分に理解し、半構成面接にて対象者の発言内容を深く究明できるよう配慮して依頼する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に30名のインタビューの実施及び逐語録の作成を予定し、予算の計上を行っていたが、計画していたインタビューが実施できていないこと、データが得られていないため分析方法の専門家に助言を受けるに至っていないことが、計画通りに研究費を使用できていない理由である。同時に、分析に必要な消耗品等が未購入であることも要因である。 平成25年度は、インタビューの実施を重点的に行うよう方策をたてており、これに伴い平成24年度に計上していた国内旅費および人件費を使用する計画である。 また、平成25年度には収集したデータを分析する段階に入るため、分析用具・資料保存のための物品や平成24年度に計画していたデータ保存のための鍵付きキャビネットを整備し、研究環境を整える予定である。
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