2012 Fiscal Year Research-status Report
看護実践現場における包括的腰痛予防対策の普及に関する研究
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24792413
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
吉武 幸恵 順天堂大学, 公私立大学の部局等, 助教 (50449063)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 看護師 / 職業性腰痛 |
Research Abstract |
平成24年度は、①看護師の職業性腰痛予防における、教育上の問題を究明するための看護基礎教育内容の検討、②看護師の職業性腰痛予防対策の方向性を明らかにするための文献検討を行った。 看護基礎教育内容の検討として、看護基礎教育で使用されているテキストの記載内容の分析を行った。23件の「基礎看護学」「基礎看護技術」に関するテキストを対象として、「体位変換」「姿勢の調整」「移動の介助」「移乗の介助」、「ボディメカニクス」に関連する記述を抽出し、内容を分析した。その結果、援助に伴う腰痛の危険性への対処として、「環境の調整」「ボディメカニクスの適切な活用」「スタッフ間の協力」「介護機器の使用」が示されていた。技術の限界や、実践における様々な適用上の問題やその解決方法に関する記述はなく、看護基礎教育においては、原理・原則に則った技術の習得を目的とするためであると考えられた。 次に、看護師の職業性腰痛予防を包括的に行うための方向性を明らかにするため、「看護師の職業性腰痛の実態」「看護師の職業性腰痛の関連要因」「看護師の職業性腰痛により引き起こされる問題」に焦点を当てて、国内外の先行研究の検討を行った。文献検討の結果、以下の現状が明らかになった。①看護師の腰痛の大部分は非特異性腰痛であり、多くの者が腰痛を抱えながら就業している。②腰痛の原因として個人要因、環境要因、物理的要因に加え、心理・精神的要因との関連が明らかにされている。③看護師及び看護管理者は腰痛予防の必要性を認識しているが、看護業務の特性上困難であると感じている。④腰痛を発症した看護師の多くは再発・悪化を経験し、欠勤や早期離職を余儀なくされていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第一段階の看護基礎教育内容の検討において、看護基礎教育では看護師の職業性腰痛の予防について、その実態やそれによる影響等、現実的な問題について触れておらず、基礎教育において「動機付け‐目的‐具体策」の過程が構築されていないことが明らかになった。そのため、第二段階を「現任教育内容の検討」ではなく、「看護師の職業性腰痛の実態の明確化」と計画を変更した。その実態についても、腰痛の発症率のみではなく、発症状況、関連要因、発症により引き起こされる問題と、幅広く把握するため、まずは国内外の文献検討を広く行うこととしたため、やや遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に行った文献検討により、看護師の腰痛の実態に関する先行研究は、①腰痛を発症した当事者のみが対象となっている、②原因と考えられる要因との関連の有無のみが明らかにされており、関連の方向性や要因間の関連が明らかにされていない、③量的研究がほとんどであり、看護師の体験として質的に明らかにされていない、という点が明確になった。看護管理の視点で、包括的な予防対策を確立するための介入の糸口を見出すためには、看護師の職業性腰痛によって、看護実践現場にどのような影響が及ぶのか、腰痛を発症した当事者のみではなく、看護管理者や同僚など、様々な立場での「体験」を明らかにする必要があると考える。従って、今後は腰痛予防に向けた看護管理実践への示唆を得るために、腰痛を発症した看護師、その同僚及び管理者を対象としたフィールドワークを行い、看護師の腰痛に伴い生じる現場の変化や困難感をそれぞれの立場から明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
① 平成24年度の研究成果の公表のための学会参加費および交通費・宿泊費 ② 論文公表のための掲載費・印刷費 ③ 日本国内の様々な(地域、規模、看護管理体制)看護実践現場でのフィールドワークを行うための交通費 ④ データ収集および処理のための機器購入費 ⑤ 膨大なデータ処理のための、インタビューデータ逐語録化の業務委託費
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