2013 Fiscal Year Research-status Report
安定期慢性閉塞性肺疾患患者における栄養教育プログラムの開発
Project/Area Number |
24792456
|
Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
毛利 貴子 京都府立医科大学, 医学部, 講師 (90438218)
|
Keywords | 慢性閉塞性肺疾患 / 栄養障害 / 患者教育 |
Research Abstract |
安定期COPD患者の栄養障害予防に向けた介入のあり方を検討することを目的とし、平成26年2月から4月にかけて、月1回の栄養リハビリテーション教室を実施した。 対象は外来通院中の慢性閉塞性疾患(COPD)患者とその家族とし告知したが、参加者のほとんどはCOPD以外の慢性呼吸器疾患患者であった。第1回(2月20日)「栄養障害のメカニズム」(医師)「栄養障害はなぜこわい?」(看護師)における参加者は男性5名女性4名であり、うちCOPD患者は3名であった。第2回(3月20日)「望ましい栄養とメニューの工夫-食品モデルを使ってやってみよう-」(栄養士)における参加者は男性2名女性4名であり、COPD患者は2名であった。第3回(4月17日)「食事と運動のバランス」(理学療法士)「食事時の症状と対処」(看護師)における参加者は男性3名女性3名であり、COPD患者は3名であった。3回の介入すべてに参加したCOPD患者2名は病期不明であり、2回に参加したCOPD患者は病期IIIであった。在宅酸素療法をしている患者の参加はなかった。 介入の効果を評価するために、1回目と3回目に身体測定と栄養摂取量調査を実施した。COPD患者3名におけるBMIは、A氏16.5(初回)→16.3(3回目)、B氏20.9→21.1、C氏22.9→22.9と変化はほとんどみられなかった。栄養摂取量調査の結果、推定エネルギー必要量とエネルギー摂取量との差は、A氏-240kcal(初回)→-378kcal(3回目)、B氏-593kcal→-685kcal、C氏-410kcal(初回のみ)であり、推定エネルギー必要量をいずれも下回っていた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は、外来通院中の安定期COPD患者を対象にした身体組成および食事の実態調査を実施し、栄養障害と食生活の実態を明らかにした。その結果、10名中6名に軽度~重度の栄養障害がみられ、栄養障害がなくとも筋肉量が減少している患者の存在も明らかになった。食事調査では、多くの患者に必要エネルギー量の不足がみられ、かつ高エネルギー高タンパク食や脂質を効率的にとることなど、COPD患者に必要な栄養に関する知識をもっていないことも示された。これらの調査結果をもとに、平成25年~26年度にかけて3回にわたる栄養リハビリテーション教室を実施した。研究対象が少なかったことから統計分析を実施できるデータは得られなかったが、栄養障害予防の介入を実施するにあたっての対象の焦点化(呼吸機能障害が重度である在宅酸素療法実施者に限定する)や介入方法(①食生活は個別性が大きく、COPD患者は高齢であり既往歴も多様であることから小集団教育より個別教育が望ましい、②在宅酸素療法患者が介入のために通院することは身体的負担が大きいため、定期受診に来院した際介入する、③高齢男性が多いため、家族への教育的介入のあり方を検討する)についての示唆が得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
病期の進行したCOPD患者の場合、全身性炎症がもたらす代謝亢進やサイトカインの影響により筋肉量の減少を伴う栄養障害がみられる。本介入では、外来通院中の安定期COPD患者10名に研究協力の依頼をし、外来の掲示板に掲示するなど告知をしたが、実際協力の得られたCOPD患者は3名であった。栄養支援の必要性の高い在宅酸素療法をしている患者は外出による身体的負担が大きいこと、3回の栄養教室が2月始まりでインフルエンザの流行期に重なったこと、冬季で体調の安定しない患者が多かったことが原因と考える。また、今回参加したCOPD患者は軽症であったため、食事における困難や体重減少は生じていなかった。栄養障害の予防を目的とした介入を実施したが、軽症であるがゆえに動機づけが弱く参加者が少なかったこと、予防の効果として身体組成や栄養摂取量の変化にて評価することが困難であったことが示唆された。今後、呼吸困難によって食事摂取が困難となりうる在宅酸素療法患者とその家族を対象に、定期受診日を設定し個別教育方法で、より具体的な栄養支援を実践していく必要がある。そのためには、行動変容理論を用いてCOPD患者の食行動に関連する認知的要因を理解し、セルフマネジメントモデルに基づいた教育支援を実施、評価する研究計画を立案し実践していきたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は、安定期慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者における栄養教育プログラムの開発をめざすものである。初年度は、栄養状態と食生活に関する実態調査を実施し、その結果を元に2年目は多職種による小集団栄養教育を実施した。初年度の実態調査では、協力を得られる対象が少なく10例に達するまで時間を要したこと、2年目の栄養教育の実施と評価では、勤務が多忙であり3か月連続して介入を実践できる期間が確保できなかったことにより、研究計画の遅延が生じた。また、実態調査ならびに栄養教育において、協力を得られる対象が少なかったことから、予算を消化できなかった。 3か月にわたる栄養教育の事後評価として、7月に再度栄養教育を実施する。その際の栄養調査費、質問紙調査に関する物品費、研究補助者に対する謝金、学会発表時の旅費等に使用する予定である。
|