2012 Fiscal Year Research-status Report
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24792466
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
中島 淑恵 福島県立医科大学, 看護学部, 講師 (90459131)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 音楽療法併用リハビリ / 看護 / 中等度麻痺患者 / 脳波律動性活動 / 参加意欲 |
Research Abstract |
本研究計画の目的は、精神作用として効果が大きいとされる本人選好による楽曲と、提示される運動リズム形成に優れた楽曲の2種類を用いて、麻痺患者のリハビリに音楽療法を併用し、ADL・QOL評価、脳波による脳機能測定で客観的に有効性を評価することである。そして、リハビリがチーム医療として行われる中で、看護師を主体的とする音楽療法の治療的有益性を把握し、リハビリの支援としての音楽の治療的効果に関する客観的証拠を明らかにする。 そこで、本研究の方略は2段階をとる。まず、正常被験者を対象に選択反応運動課題を行わせ、同時に(1)研究者が選定した運動リズム形成に優れた楽曲(GA. Rossini作曲『スイス軍の行進』)および(2)本人の選好による楽曲を聴取した時の運動機能の変化を測定し、音楽療法併用リハビリに最適な音楽を客観的に決める。それに並行して脳波計(平成24年度設備備品予定)を用いた律動性活動(アルファ波パワー率)を計測し、精神的機能を評価する。 次に、麻痺患者群をランダムに3群に分け、(1)研究者選定楽曲を併用したリハビリ、(2)本人選好楽曲を併用したリハビリ、(3)通常のリハビリのみを8週間行い、その前後でのADLおよび運動機能、患者本人のQOLの変化を測定する。 本研究は、音楽療法併用リハビリに関して、運動機能および精神的作用を評価することで、どのような楽曲において有効性が高いか明らかにし、音楽療法のエビデンスを解明することを目指す。これまで、リハビリに参加する患者の意欲に焦点を当て、効果的な介入を検討した看護領域の研究はない。患者主体のリハビリにおける意欲の向上・継続を支える看護として、音楽療法併用リハビリを実現するための具体的な示唆を得られる研究になる。外来通院や家庭での運動にも応用できる手法であり、困難なリハビリに長期的に取り組む患者にとって福音となることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度研究計画予定は、精神神経疾患や整形外科疾患を有さない右利き正常被験者30名を対象としてランダムに3群に分け、選択反応運動課題を行わせ、同時に(1)研究者が選定した運動リズム形成に優れた楽曲(曲名)および(2)本人の選好による楽曲を聴取させることによる運動機能の変化を測定して、音楽を聞かせない場合と比較することにあった。 本年度、研究責任者の所属移動に伴って、研究実施施設への倫理審査の再申請と、被験者公募に関する計画の再立案が必要となった。それに加え、本研究の次段階となる麻痺患者への介入研究に関して、協力を得ることが可能な施設の開拓を行った。これについては、実験的介入の協力を得る上で、震災の影響を加味したうえで、被験者への負担が最小限になる環境を選定している段階である。 また、脳波計(PolymateII)を購入し、安静時や活動時のα波パワー律動を抽出するための最良条件を検討し、様々な音楽を聴取した際の脳波解析を行い、脳派研究遂行における学習は進行している。 実験に使用するシステムとして、視覚刺激キューを用いた選択反応運動課題として、右手示指から小指に対応する4種類の視覚刺激をPCにランダムに提示し、刺激が提示されたらできるだけ早く正確にボタン押しをするように教示し、反応時間と正答率を検討する予定である(600試行)。本研究では、第1段階として正常被験者を対象に、スピーカーから流れる行進曲または選好楽曲を聴取しながら、選択反応運動課題を行わせ、脳波解析と、課題の反応時間と正答率から運動機能の変化を分析し評価する。この実験条件に合わせた作業システムの構築が完了し、実施準備が整った状態である。被験者の確保と、そのデータベースを作成でき次第、第1段階の作業に移行できる状況である
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度には、精神神経疾患や整形外科疾患を有さない右利き正常被験者の公募で集まった30人をランダムに3群に分け、選択反応運動課題を行わせ、同時に(1)研究者が選定した運動リズム形成に優れた楽曲(曲名)および(2)本人の選好による楽曲を聴取させることによる運動機能の変化を測定して、音楽を聞かせない場合と比較する。その上で、福島市または仙台市内の病院に協力を得て、麻痺患者群を対象とした音楽療法併用リハビリの臨床応用に関する検証を行う。具体的には、認知機能障害や聴覚障害を伴わない軽度から中等度までの麻痺患者(Brunnstrom Stage 3-4 )30名を対象として、ランダムに3群に分け、(1)研究者が選定した運動リズム形成に優れた楽曲(GA.Rossini作曲スイス軍の行進)を併用したリハビリ、(2)本人の選好による楽曲を併用したリハビリ、(3)通常のリハビリのみの効果を8週間行う。 介入前、介入直後、介入1か月後、介入3か月後の時点でリハビリ専門医および理学療法士の協力を得て3群の経過を比較し、ADLおよび運動機能、患者本人のQOLの変化を測定する。 研究最終年度として、正常被験者と患者群のデータの最終的とりまとめと統計的解析を行って、客観的な評価をおこなう。研究結果は、学術大会での発表、学術雑誌に投稿して、研究成果を積極的に社会的に還元する。 ただし、平成24年度の計画内容が完遂していないため、データの解析等に時間を要し、計画内容を一部変更する可能性がある。また、患者群への介入を実施できる施設が最終決定していないため、介入開始時期が遅れる可能性がある。その上、介入後3か月の結果を追い、音楽療法併用リハビリの長期効果を検証する予定である。よって、患者群への介入時期や実施患者の累計が30人に満たない場合は、平成26年度に計画を繰り越して追加データ収集をおこなう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
脳波計測による波形解析に必要となる基本的なソフトは脳波計1式に含まれていたが、専門家が集まる学術集会以外に社会へ向けて研究結果を広く公示する上で有効なマッピング再生解析機能プログラムを追加する。これにより、脳波律動のα波パワーが脳のどの領域に出現しているかを明らかにすることができ、音楽療法併用リハビリの有効性を明示化することができると考える。 精神神経疾患や整形外科疾患を有さない右利き正常被験者のデータは、第7回モーターコントロール研究会および第43回日本臨床神経生理学会学術大会で成果発表できるよう成果をまとめる。そのため、東京および高知で開催される学術集会参加費および旅費を計上する。また、リハビリ医療の看護師の役割として、研究成果をまとめ、第33回日本看護研究科学学会学術集会で発表する。そのため、大阪で開催される学術集会参加費および旅費を計上する。 精神神経疾患や整形外科疾患を有さない右利き正常被験者30名と、認知機能障害や聴覚障害を伴わない軽度から中等度までの麻痺患者30名に、研究協力として謝金または相当品を渡すため、その経費を計上する。追加データ等で計60人を上回る場合もあり、その都度必要経費を算出し、研究費を使用する。また、麻痺患者介入に協力いただく施設との会議費用等も計上する予定である。 また、脳波解析に関する勉強会を開催し、本研究で得たデータを幅広い知見で解析するための示唆を得る機会を作る。講師は、計画書で脳波解析におけるスーパーバイズを受ける予定の講師に依頼済みである。 研究計画遂行上、実験内容の修正やデータの追加収集等の必要が出た場合は、平成26年度まで延長する。その際に必要な経費については、計画内容を見直し、費用を繰り越すこととする。
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