2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24792466
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
中島 淑恵 福島県立医科大学, 看護学部, 講師 (90459131)
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Keywords | 音楽併用リハビリ / 看護 / 中等度麻痺患者 / 脳波律動 / セルフマネジメント / ADL / QOL |
Research Abstract |
本研究計画の目的は、精神作用として効果が大きいとされる本人選好による楽曲と、提示される運動リズム形成に優れた楽曲の2種類を用いて、麻痺患者のリハビリに音楽療法を併用し、ADL・QOL評価、脳波による脳機能測定で客観的に有効性を評価することである。そして、チーム医療として患者がリハビリを進める中で、看護師を主体とする音楽療法の治療的有益性を把握し、リハビリ支援の方策の1つとして、音楽を併用することの治療的効果に関する客観的根拠を明らかにする。 そこで、本研究では2つの方略をとる。まず、健康被験者を対象に選択反応運動課題を行わせ、同時に(1)研究者が選定した運動リズム形成に優れた楽曲(GA. Rossini 作曲「スイスの行進」)、または、(2)本人の選好による楽曲を、それぞれ聴取した時の運動機能の変化を測定し、音楽療法併用リハビリに最適な音楽を決定する。選択運動課題実施中は、客観的指標として脳波計(平成24年度設備備品)を用いてアルファ派パワー率として律動性変化を計測し、精神的機能の評価を行った。 健康被験者で効果を確認した音楽聴取活動を、中等度麻痺患者のリハビリ実施中に併用して身体機能およびADLやQOLを評価する。麻痺患者群はリハビリ実施中に(1)研究者選定楽曲、(2)本人選好楽曲、(3)何も聞かずに通常のリハビリのみを実施する3群にランダムに分け、介入前後でADLおよび運動機能、患者および家族のQOL評価を行う。 本研究は、運動機能および精神作用を評価することで、音楽療法併用リハビリにどのような楽曲の有効性が高いか明らかにし、音楽療法のエビデンスを解明することを目指す。これまで、継続的にリハビリへ参加する患者の意欲や身体機能の向上に着目した看護主体の介入研究は既存しない。慢性的な経過の中で、自宅でも応用可能なセルフマネジメントの1手段として、音楽併用リハビリの効果を究明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成25年度研究計画予定は、精神疾患を有さない右利き健康被験者5名を対象として、(1)研究者が選定した運動リズム形成に優れた楽曲(GA. Rossini 作曲「スイスの行進」)、(2)本人の選好による楽曲、(3)楽曲聴取なしをランダムに3群に分け、同時に選択反応運動課題を行わせて、それぞれ聴取した時の運動機能の変化を測定した。各群が1から2名と少ないため、統計解析およびデータの傾向解析に関しては実施できていない。また、福島市または仙台市内の病院に協力を得て、麻痺患者群を対象とした音楽療法併用リハビリの臨床応用に関する検証については、認知機能障害や聴覚障害を伴わない軽度から中等度までの麻痺患者(Brunnstrom Stage 3-4 )30名を対象として、ランダムに3群に分け、(1)研究者が選定した運動リズム形成に優れた楽曲(GA.Rossini作曲William Tell Overtureよりスイス軍の行進)を併用したリハビリ、(2)本人の選好による楽曲を併用したリハビリ、(3)通常のリハビリのみの効果を8週間行う予定であった。しかし、健康被験者のデータが解析完遂できておらず、患者を対象とした臨床介入に進めることができなかった。この理由としては、健康被験者のリクルートが推定より困難であったこと、機器の不具合によりデータ解析ソフトの仕様を一新したため、それまで蓄積した15名のデータが比較検討できなくなったことなどがあげられる。継続的にデータを収集し続けることで回避できた事象であり、研究機関延長の許可が下りた本年度の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度には、精神神経疾患や整形外科疾患を有さない右利き正常被験者15人を追加し、ランダムに分けた3群に対して選択反応運動課題実施下で、同時に(1)研究者が選定した運動リズム形成に優れた楽曲(曲名)および(2)本人の選好による楽曲を聴取させることによる運動機能の変化を測定して、音楽を聞かせない場合と比較する。その上で、仙台市内の病院に協力を得て、麻痺患者群を対象とした音楽療法併用リハビリの臨床応用に関する検証を行う。具体的には、認知機能障害や聴覚障害を伴わない軽度から中等度までの麻痺患者(Brunnstrom Stage 3-4 )30名を対象として、ランダムに3群に分け、(1)研究者が選定した運動リズム形成に優れた楽曲(GA.Rossini作曲William Tell Overtureよりスイス軍の行進)を併用したリハビリ、(2)本人の選好による楽曲を併用したリハビリ、(3)通常のリハビリのみの効果を8週間行う。 介入前、介入直後、介入1か月後、介入3か月後の時点でリハビリ専門医および理学療法士の協力を得て、スピーカーより提示する音楽を聞かせない場合と比較し、ADLおよび運動機能、患者本人のQOLの変化を測定する。 研究最終年度として、正常被験者と患者群のデータの最終的とりまとめと統計的解析を行って、客観的な評価をおこなう。研究結果は、学術大会での発表、学術雑誌に投稿して、研究成果を積極的に社会的に還元する予定である。 ただし、患者の選定等に時間を要し、計画内容を一部変更する可能性があるが、研究機関の変更により回復期病院への研究フィールドの開拓が可能な状況にある。それにより、介入後3か月の結果を追い、音楽療法併用リハビリの長期効果を検証することが可能な環境である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
健康被験者の実験が再実施となるケースが発生し、実験再計画が必要となった。そのため、患者への臨床介入にまで進められず、生体データ解析ソフトの購入や謝金の支出が滞ったことが理由としてあげられる。研究期間延長により、実施した全計画を完遂させ、その経過で予定使用額を活用する。 平成26年度より、所属研究機関が変更になり、健康被験者および中等度麻痺患者のリクルートが広範囲に可能になった。よって、昨年度までに生じた研究実施の継続困難な状況を解消し、継続的な実験実施により、確実な分析解析実施が可能となった。 音楽療法併用リハビリの有効性を明示化することができる脳波解析方法として、マッピング再生解析機能プログラムを追加する。脳波律動のα波パワーが脳のどの領域に出現しているかを明らかにすることができる。健康被験者15名と、認知機能障害や聴覚障害を伴わない軽度から中等度までの麻痺患者30名に、研究協力として謝金または相当品を渡すため、その経費を計上する。また、麻痺患者介入に協力いただく施設との会議費用等も計上する予定である。正常被験者のデータは、第8回モーターコントロール研究会、第44回日本臨床神経生理学会学術大会、第34回日本看護研究科学学会学術集会で発表するために、参加費・旅費を計上する。 研究計画遂行上、実験内容の修正やデータの追加収集等の必要が出た場合は、看護師が主導する音楽併用リハビリのストラテジー構築に向けた発展的研究継続ができるよう計画する。
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