2012 Fiscal Year Research-status Report
慢性疾患患者及びその家族員が退院後に直面するセルフケア困難と退院支援のあり方
Project/Area Number |
24792467
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
堺 恭子 順天堂大学, 医療看護学部, 助教 (30624001)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 退院支援 / 慢性疾患 / セルフケア |
Research Abstract |
セルフケアや退院支援という言葉は医療関係者のなかでは日常的に汎用されている。セルフケアを健康の保持増進と捉える考え方や健康障害に対する生活調整、病気との向き合い方など多様な意味で使用していることから、まずセルフケアの定義を明らかにした。セルフケアは広範囲に渡ることから、国際生活機能分類(ICF)を参考に質問内容を構成した。ICFはWHOが提唱しており、医学モデルと社会モデルを統合し、健康状態を生活機能の保持や自律性から捉えている。そして概念枠組みの一部である「活動と参加」のカテゴリーにセルフケアを位置付けている。そこで社会資源制度、日常生活自立度、情報リテラシーなど29項目の質問内容を挙げ、関東近郊の慢性疾患患者3名にパイロットスタディを行った。それをもとに成人看護学教員と内科医師の協力を得て質問紙を完成させ、内容の信頼性、妥当性を確保した。患者の推薦、選定を依頼するため当該診療科の医師の同意を得て、研究協力者とした。病院倫理審査では対象疾患について指摘を受け、研究方法について検討を重ねた。本研究は複数の疾患群を対象としているが、先行研究や医学研究では疾患群を限定している。しかし、セルフケア能力を高めるためには疾患だけでなく家族や生活など環境全体を捉えることの重要性を研究者は経験知より得ている。また最近の看護学研究では、慢性疾患患者のセルフケア能力を高める看護実践について対象を限定せずに研究していることが報告されている。これらをふまえ検討を重ねた結果、基礎疾患を限定せずに研究することが承認された。さらにセルフケアへの認識を理学療法士、在宅医など他の医療関係者の立場から明らかにするため、半構成的面接ガイドを用いたフォーカスグループインタビューを行うことについて、医学部倫理審査の承認を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度、調査の実施まで至らなかった理由は二点ある。一点はセルフケアや退院支援という言葉は医療関係者のなかで日常的に汎用されていることから文献検討を入念に行い、定義を明確にしたためである。オレムは「セルフケアはその人自身の機能と発達を調整するために自分自身や自分の環境に向けた活動を自発的に開始し、実践することであり、生命、健康、安寧の維持を目的とする。」としている。セルフケアを健康の保持増進と捉える考え方や健康障害に対する生活調整やその病気とどう取り組んでいくかをセルフケアと呼ぶといったように多様な意味で使用されていることから、まずセルフケアの定義を明らかにした。近年、退院支援は少子高齢化や診療報酬の改定により、急速に発展した。退院支援という言葉には今後の治療や療養生活の選択といった意思決定支援と他職種や地域との連携を図る調整の意味を含有していることから、これらを退院支援とした。質問紙は関東近郊の慢性疾患患者にパイロットスタディを行い、成人看護学教員と内科医師の協力を得て完成させ、内容の信頼性、妥当性を確保した。 二点目は複数疾患群を対象とする研究の意義、結果の予測について論究したためである。病院倫理審査では対象の選定について指摘を受け、研究方法について検討を重ねた。本研究は複数の疾患群を対象としているが、先行研究や医学研究では疾患群を限定している。しかし、セルフケア能力を高めるためには疾患だけでなく家族や生活など環境全体を捉えることの重要性を研究者は訪問看護師としての経験から得ている。さらに最近の看護学研究では疾患を限定せずに慢性疾患を持つ人のセルフケア能力を高める看護実践が報告されている。その結果、本研究では基礎疾患を限定しないことが承認された。以上により計画よりもやや遅れ調査を開始する結果となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は入院患者120名を対象に質問紙調査を実施する。研究を計画的に進めるため研究協力者である当該診療科の医師に研究協力を依頼し、同意を得ることによって患者の推薦と選定が可能となる。また該当部署の師長、退院調整部門のスタッフ、専門看護師へ質問紙調査の配布、回収を協力してもらい、調査を推進する。 また平成25年度は退院後のセルフケアに関わる身体状況や生活状況の体験を縦断的に把握する。患者20名とその家族員20名の計20組程度について実施した調査をもとに作成した半構成的質問用紙を作成する。そして倫理審査を受審し、承認を得てから退院時、退院後1か月、3か月、6か月後の計4回面接を行う。平成26年度には調査結果を質的・帰納的方法で分析する。また本研究はさまざまな医療職者の立場からケアの認識を明らかにするため、退院調整看護師、担当看護師、訪問看護師、医師、在宅医、介護支援専門員、介護福祉士、理学療法士、栄養士等に対して半構成的面接ガイドを用いてフォーカスグループインタビューを行う。グループは6~8名程度の人数で3グループ程度行い、候補者の選択は年齢、性別、専門領域が様々に異なる構成人員となるよう調整する。調査内容は退院後の患者や家族との関わり、看護援助についての思いや考え、セルフケアを支援することへの困難など継続看護への取り組みについてインタビューを行う。平成26年度にはすべての調査結果を分析し、発表に向け研究を完成させる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は調査を遂行するため、ICレコーダー、印刷などの文具を揃え、準備を行う。またデータ解析用のコンピューターとプリンターなどの周辺機器を購入する。ほかにUSBや分析に必要な統計ソフト SPSS Ver.21を購入し、調査の分析を行う。 また広く知見を得て、考察を深めることができるよう研究領域関連のある国際看護学会に参加する。さら関連学会へ投稿できるよう報告書や投稿料などに研究費を使用する。
|