2013 Fiscal Year Research-status Report
特定機能病院における認知症高齢者への看護の課題と有効な援助の検討
Project/Area Number |
24792566
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
木島 輝美 札幌医科大学, 保健医療学部, 講師 (40363709)
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Keywords | 認知症 / 高齢者 / 特定機能病院 / 看護 / 急性期病院 |
Research Abstract |
本研究では、特定機能病院のような先端医療の場でも認知症高齢者が安心して治療・処置を受けられる看護モデルを構築するための基礎資料として、特定機能病院に勤務する中堅看護師へのインタビューを通して、認知症高齢患者へのケアでの困難や工夫、現状における課題を明らかにすることを目的としている。平成25年度までに、特定機能病院2施設の高齢者の入院患者割合が多い病棟に勤務する中堅看護師以上の能力を有する看護師24名にインタビューを実施した。分析方法は、インタビュー内容から特定機能病院に入院した認知症高齢者へのケアでの困難や課題に関する内容を抽出し意味内容の類似性に従って集めて抽象度を高めサブカテゴリー、カテゴリー化した。本研究は札幌医科大学倫理委員会の承認を得て実施した。 平成25年度末までに5名のデータを分析した結果、7つのカテゴリーが抽出された。それは<急性期における認知症ケアの限界>、<事故防止の難しさ>、<対応上の困難>、<病棟全体の利益との相反>、<認知症を知る機会が少なさ>、<先端医療を担う上での困難>、<退院調整の困難>である。この結果から、特定機能病院の看護師の認知症ケアの知識習得は個人の経験や学習意欲に任されていること。そのなかで、高度化した医療現場では事故防止とせん妄予防が重点課題であり、その人らしさの尊重や生活機能維持などの認知症ケアの実践には至らない現状が伺える。また、特定機能病院として先端医療を施すことにより生活機能が低下して元の生活に戻れなくなる可能性について、本人・家族・医師・看護師の間で認識のずれが生じることに倫理的課題を感じており、そこでの看護師の役割が大きな課題であることが示唆された。今後は他の19名のデータについて、特定機能病院における認知症高齢者の看護上の困難のみならず、看護師の工夫点にも着目して分析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画では、平成25年度末までに半数のデータ分析を終了している予定であったが、現在のところデータ分析が24名中5名を終了したところである。しかし平成25年度中に5名のデータ分析結果を平成26年度に開催される国内の認知症高齢者ケアの関連学会に演題登録し採択されてた。分析と並行して結果発表にむけて準備できたことは成果といえることから、達成度は「やや遅れいてる」と判断した。平成25年度は職場環境の変化が大きく、研究活動を進めるための環境整備に時間を要したことが分析が遅れた理由と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は最終年度であるため、残る19名のデータ分析を早急に進める予定である。平成26年度は職場環境も安定し、研究活動を行うための環境が整備されたため計画通り進めることができると考えられる。 平成25年度は、特定機能病院における認知症高齢者への看護上の困難に着目した分析を行ってきたが、今後は看護師のケア上の工夫点や特定機能病院における特有の課題に焦点を当てて分析していく。 そして、日本老年看護学会や日本認知症ケア学会などの認知症高齢者ケアの関連学会において結果を発表する予定である。また国外では、平成27年2月開催予定のEast Asian Forum of Nursing Scholars (EAFONS)での結果発表に向けて準備を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、結果発表のための学会参加がなかったため、旅費の支出が少なかったことから生じたものである。これは、職場環境の大きな変化によりデータ分析が計画通りに進まなかったことが原因であると考えられる。 平成26年度は、旅費等は、国内外の関連学会において研究成果発表をするための学会参加、急性期病院において認知症高齢者ケアの先進的な取り組みをしている施設の視察等に使用予定である。人件費・謝金等は、資料整理などの依頼、成果発表時の翻訳・校閲料のために使用する予定である。その他、論文作成にあたり関連書籍を購入、資料収集のための複写費、成果発表のための学会発表用ポスターの印刷や学会誌投稿料に使用する予定である。
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