2012 Fiscal Year Research-status Report
高齢者のうつ予防に有効なプログラムの作成・評価:骨格筋量とうつとの関連に着目して
Project/Area Number |
24792579
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
山縣 恵美 京都府立医科大学, 医学部, 助教 (30570056)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 高齢者 / うつ / 体力 / 骨格筋量 |
Research Abstract |
本研究は、高齢者のうつと骨格筋萎縮(筋量)との関連を明らかにした上で、これに基づくうつ予防に有効なプログラムを作成し、その効果を検証することを目的としている。今年度は、まずベースライン調査として、地域在住高齢者のうつ傾向と体力、骨格筋量との関連を明らかにした。調査はA、Bの2地区で実施した。A地区の調査は、地域在住の自立高齢者で、毎年実施している地域の高齢者体力測定会への参加者を対象とし、体力、うつ傾向、生活状況について調査を実施した。その結果、男性285名、女性886名のうち、それぞれ約20%にうつ傾向が認められ、体力指標の中でも特に、下肢筋力や持久力は生活状況を調整してもうつ傾向にない者に比較してうつ傾向にある者が低値を示した。一方B地区の調査では、地域在住の要介護認定を受けていない高齢者を対象に体力測定会を実施した。分析対象859人のうち14%にうつ傾向が認められ、うつ傾向にある者は、体力指標の中でも等尺性膝関節伸展筋力、握力、垂直跳びといった筋力、筋パワーで有意に低値を示した。加えて、BIS法によって求めた骨格筋量も有意に低い値を示した。以上より、うつ傾向にある者は低筋力、低身体機能であること、同時に骨格筋量そのものが低値であることが示され、下肢筋力や持久力を向上させるような運動介入がうつ予防に効果的である可能性が示唆された。 以上のベースライン調査をふまえ、地域在住の自立高齢者を対象とした教室型の運動介入を実施した。内容は週1回のレジスタンストレーニング教室と、同様のトレーニングを毎日自宅で行うプログラムを12週間行うものであり、参加者は40名であった。その結果、介入前後で、体力指標とうつ指標(GDS-15)に有意な改善が認められ、本プログラムのうつ予防への効果が示唆された。今後は、うつ傾向にある高齢者への介入を行っていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究における、今年度の計画は、高齢者のうつ傾向の有無と骨格筋量の関連についてのベースライン調査を行い、その結果をふまえ、運動を用いたうつ予防支援プログラム(教室型集団介入、訪問型個別介入)を作成することであった。現時点までで、まずベースライン調査においてうつ傾向にある高齢者はうつ傾向にない高齢者に比べて体力、骨格筋量ともに低値を示すことを明らかにしてきた。また、うつ予防支援プログラムとして、老化に伴う筋萎縮の予防・改善を促すプログラムを提案し、地域在住自立高齢者を対象にした介入調査を行った。以上より、今年度の計画はまずまず達成できていると考える。 しかしながら、うつ予防介入の対象となるうつ傾向にある者は、意欲の低下等から教室に参加できなかったり、参加していてもドロップアウトするおそれがあると考える。訪問型で個別的に介入できるプログラムも重要になると言えるが、訪問型個別介入の支援プログラムの作成には至っていない。次年度に実施予定である、介入によるプログラムの効果検証に向けて、訪問型個別介入の支援プログラムを提案する必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究計画は、うつ傾向にある高齢者を対象に、開発したうつ予防支援プログラムの実施と効果の検証がメインである。プログラムの介入は、研究フィールドである亀岡市の保健センターおよび地域包括支援センターと協働で行っていく。特に教室型運動介入の開催では、高齢者が通える距離内での実施が必要であるため、地区ごとの開催を検討する。また、対象者においても、参加者を確保するために、うつ傾向にある高齢者にとどめず、その地区在住の自立高齢者を含めて考える。介入前後の比較から短期介入評価を実施し、中・長期介入評価につなげていく。また、介入結果は、随時まとめて国内外の関連学会での発表、および論文としてまとめていく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、うつ傾向にある高齢者への教室型集団介入および、訪問型個別介入を100人~150人に実施する予定である。そのため研究費は、例えば開催する場所の確保等、介入実施における諸費、介入スタッフの人件費等に使用予定である。併せて、国内外での学会発表にかかる旅費等でも使用する。なお、現時点で、2013年11月にニューオリンズで開催されるthe Gerontlogical Society of America 2013での発表予定がある。
|