2013 Fiscal Year Research-status Report
フィリピンにおけるヘルスワーカーの巡回型産褥期訪問システムの開発と評価
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24792581
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Research Institution | Kobe City College of Nursing |
Principal Investigator |
山下 正 神戸市看護大学, 看護学部, 助教 (90613092)
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Keywords | フィリピン / 褥婦 / バランガイヘルスワーカー / 保健サービス / 保健システム |
Research Abstract |
調査1(調査期間:2013年1月) 【研究目的】本研究ではフィリピンの産後の保健サービスの利用現状を明らかにすることと、保健サービスの利用を阻害する要因を、妊娠中と産後の保健サービス利用現状を踏まえた上で明らかにすることを目的とした。 【研究方法】対象者は褥婦とし、フィリピン大学附属病院から22名、ムンティンルパ市から42名、計64名の分析を行った。質問紙の内容として属性、妊娠中と産後の保健サービスの利用状況、母子手帳、知識テスト、エジンバラ産後うつ自己評価表を使用した。【結果】産後の保健サービス利用回数は平均1.8 回(SD=2. 8)であり、出産後最初に保健サービスを利用した時間は4-23 時間以内が13.2%、2日以内が39.4%、3-41 日の間が47.4%であった。また、産後の保健サービス利用を阻害する要因の検討を行ったところ、出産場所において有意な差がみられた。施設での分娩に比べて自宅分娩では産後の保健サービスの利用が有意に低い結果が得られた。母親の年齢、家族の年収、出産回数、健康保険証の有無、妊娠中の保健サービスの利用回数などにおいては有意な差はみられなかった。 調査2(調査期間:2014年3月) 【研究方法】研究代表者は、バランガイヘルスワーカー(BHW)によるムンティンルパ市在住の褥婦3名への家庭訪問に同行し、BHWの家庭訪問の現状を参与観察により分析を行った。 【結果】褥婦はBHWの活動を知らない者もおり、BHWの役割が十分に普及されていない課題が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現地(フィリピンムンティンルパ市)の保健センター医師等の協力により、現地調査をスムーズに行うことができた。 本研究目的である産褥期保健サービスの現状については、2013年1月に現地調査を実施し、褥婦の産褥期の健康に関する知識が不十分である可能性があること、施設分娩者に比べて自宅分娩者は産褥期の保健サービスの利用が不十分であることを明らかにした。このことから、フィリピンにおける産褥期の保健サービスの必要性についての一つの知見を報告することができた。なお、この結果については、現地のムンティンルパ市役所で発表することで、現地の保健システムの中心機関に対してフィードバックすることができた(2014年3月)。また、学術論文としても掲載された(Yamashita T et al. (2014) A Cross-Sectional Analytic Study of Postpartum Health Care Service Utilization in the Philippines. PLoS ONE 9(1): e85627. doi: 10.1371/journal.pone.0085627)。 さらに、BHWによる褥婦への家庭訪問の現状と課題を把握する目的で、2014年3月にフィリピンムンティンルパ市にて現地調査を行うことができた。ここでは、本研究目的の中核である”産褥期家庭訪問サービスの構築”と密接に関係するため、本調査の分析からBHWによる産褥期家庭訪問サービスの現状と課題を抽出していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、2014年3月行った現地調査をまとめ、そこからBHWによる”産褥期家庭訪問サービスの構築”について考察を深めていきたい。抽出された課題は、フィリピンムンティンルパ市保健センターの医師・看護師・助産師、及びフィリピン大学医学部産婦人科教室と共同して再度検討する。その結果については、ムンティンルパ市の行政の施策に反映でいるように、市に提言を行うことと共に資料化して提示していく。 研究成果物に関しては、海外の学術専門誌を通じて発表をしていくことと、国際学会を通して広く報告していく。本研究がフィリピンの母子保健サービスの向上だけでなく、他開発途上国の支援にも活用されるような成果になるよう努力したい。
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