2012 Fiscal Year Research-status Report
精神看護者の心理的距離に関する臨床判断・看護行動の類型化及び新人教育ガイドライン
Project/Area Number |
24792585
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Kochi |
Principal Investigator |
槇本 香 高知県立大学, 看護学部, 助教 (00611972)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 心理的距離 / 臨床判断 / 精神科看護者 / 教育ガイドライン |
Research Abstract |
平成24年度は、主に心理的距離や看護者の臨床判断、看護行動について、摂食障害をもつ人の特徴や支援のあり方等について文献検討を行った。また、研究者が修士論文で取り組んだ、統合失調症をもつ患者と看護者との間で展開されている心理的距離のもち方について、再度分析を行った。これらの分析した結果は、高知女子大学看護学会誌に投稿中である(現在査読結果待ち)。 文献検討では主に摂食障害をもつ人の特徴について検討し、当事者および支援者が捉えた摂食障害ならではの関わりの難しさや、当事者の思い、支援者の思いが記述されており、今後インタビューを行う上で、インタビューガイドをより充実させるために必要な理解が深まった。 修士論文の再分析では、精神科看護者が、統合失調症をもつ患者との関わりのなかで、どのような姿勢で向き合おうとしているのかを心理的距離という視点から明らかにした。これらの看護者の姿勢から、看護の展開方法として、患者の苦悩に対する共感的姿勢としての心理的距離、対象理解を軸にした臨床判断と心理的距離、患者の準備性を整え、回復の主導権を患者に戻す心理的距離という、看護者の心理的距離をもとにした患者との関係性のもち方についてが明らかとなり、本研究を進めていく上でも重要な示唆を得ることができた。 これらの文献検討、研究結果の再分析により、インタビューガイドの洗練化、心理的距離に対する視野の拡がりへとつながり、今後、本研究を進めていく上でも重要な視点が得られたものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、当初精神科で勤務する看護者を対象に、患者と看護者との間の心理的距離について、看護者の臨床判断や看護行動を明らかにするためのインタビュー調査を中心に行うことを予定していた。 より研究の焦点を明確にし、有用な示唆を得るために行った文献検討、既存の研究結果の再分析(本研究者が行った修士論文の再分析)を丹念に行ったため、インタビュー調査に進むことができなかった。しかし、この再分析により、統合失調症をもつ人への看護者が用いる心理的距離のもち方に対して、看護者の姿勢や技術、それらによる患者との関係性への効果について明らかとなった。これらは精神科看護者が日頃の患者との援助関係のなかで展開しているスキルであり、新人看護師のアセスメント能力の向上や状況に応じたケア展開方法の習得に向けて有用な示唆が得られた。 また、摂食障害を有する患者と看護者との間の心理的距離についての文献検討では、医療従事者が摂食障害をもつ人への関わりについて記述したもの、摂食障害をもつ人本人が書いた手記を中心に、病気を抱えながら生活する苦悩や本人なりに行っている対人関係のなかで生きるための工夫等が記述されていた。これらの文献検討より、摂食障害をもつ人の対人関係の特徴、行動の特徴、思考の特徴等が明らかとなったため、これらの視点をインタビューガイドに活用し、より豊かな語りがデータとして抽出されるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は平成24年度の研究に引き続き、インタビュー調査を実施し、「精神科看護者の心理的距離に関する臨床判断・看護行動の類型化」を作成する。そして妥当性の検討をはかる。 1.インタビュー調査の結果より、「精神科看護者の心理的距離に関する臨床判断・看護行動の類型化(第一次案)」を抽出する。 2.「精神科看護者の心理的距離に関する臨床判断・看護行動の類型化(第一次案)」の妥当性を検証する。方法は以下の方法を用いる。精神看護の専門家(高知県や関東、関西圏の2-3名)、精神看護専門看護師(高知県や関東圏の5-6名)、精神看護学領域の教員 (高知県や関東、関西圏の3-4名程度)、精神科医(2-3名)など多方面の専門職者との面接調査を行う。得られたデータより、第一次案の妥当性を検証し、分類の修正を行う(「精神科看護者の心理的距離に関する臨床判断・看護行動の類型化(第二次案の作成)」 3.抽出された「精神科看護者の心理的距離に関する臨床判断・看護行動の類型化(第二次案)」について、臨床の現状に即しているのか、活用可能なものかなど、その妥当性を検証するため、実際に統合失調症患者および摂食障害患者に対してケアを行っている看護者に面接調査を実施し、分類の修正手順を繰り返し行い、「精神科看護者の心理的距離に関する臨床判断・看護行動の類型化(第二次案)」の信頼性・妥当性の検証を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は文献検討、既存の研究の再分析に時間と経費を要した。書籍や文献の購入等に費用を要したが、人件費、旅費等の使用は抑えられたため、5,019円を平成25年度に繰り越した。 平成25年度はインタビュー調査を中心に、ガイドラインの作成・洗練化を行う予定である。インタビュー調査においては、関東圏、関西圏等を予定しており、交通費・宿泊費が必要である。また、研究の妥当性・信頼性を高めるために、学会に参加し情報収集をはかる予定であるため、旅費が必要となる。インタビューでは、人件費および謝金も必要となる。また、研究をすすめるにあたり、文具類等の物品費、消耗品費も必要になる。
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