2013 Fiscal Year Research-status Report
精神科における感染対策のアウトカム評価に関する研究
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24792604
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
糠信 憲明 広島国際大学, 看護学部, 准教授 (20412348)
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Keywords | 精神科病床 / 感染制御 |
Research Abstract |
今年度はこれまでの調査を基に学会発表を行うとともに、協力施設にデータをフィードバックし追加調査とグループインタビューによる今後の研究の方向性の検討を行った。 追加調査で回答を得られた143施設のうち、感染対策の専従者がいるのは9施設(6.3%)であり、専任者がいるのは11施設(7.7%)であった。また、2012年度に新設された感染防止対策加算1を算定している病院は7施設(4.9%)、感染防止対策加算2を算定している病院は26施設(18.2%)であった。一方、加算を取る予定はないという病院も80施設(55.9%)あった。その理由として自由記述欄には「感染対策の専従者・専任者を置くことなどの条件を満たすことが出来ない」、「在院日数の長さから入院一件当たりに算定するメリットが十分ではない」といった意見も見られ、精神科ならではの背景も影響していることが示唆された。また、感染防止地域連携加算1を算定している病院では、他の病院との連携に関する業務が増大している現状、精神科病院と一般病院の間で地域連携を行う難しさも垣間見えた。 また追加調査の結果から、一週間の細菌培養検査件数では5件未満の病院が111施設(78.2%)であり、精神科病床においては培養検査そのものが実施しされておらず、薬剤耐性菌の分離率といった指標は変動要因が大きく感染対策のアウトカムとしては適していないことが示された。また、厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業に参加しているのは10施設(7.0%)であり、現状においては既存のサーベイランスシステムを用いて比較するのは容易ではなく、アウトカム評価の方法やを今一度検討する必要性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はこれまでの調査結果を発表するとともに、複数の医療機関における感染対策のアウトカムについて情報交換を行ってきた。研究開始当初は感染対策のアウトカムとして厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)を利用できるものと考えていたが、精神科病床においてはJANISに参加している施設が少なく、一般科との比較検討は現段階では難しい。特に精神科病床における在院日数は年々短くなっているものの依然として300日に近く、患者・日(patinet・day)で算出する指数を多く用いる既存のアウトカム指標では現状を適切に反映することは難しい。 そういった点を踏まえ、今後は実際の医療施設で継続的にモニタリングしている指標や薬剤耐性菌の分離に関する情報、広域スペクトラムの抗菌薬の使用状況などを幅広く収集していく必要があると考えられる。そのためにも医療施設にとって極めてセンシティブな情報をどのように収集し、分析していくかを検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では院内感染の発生率や薬剤耐性菌の分離率といった既存の手法をそのまま用いて評価することは難しく、精神科病院で問題となるノロウイルスやインフルエンザ、結核、疥癬といった感染症の発生動向について定期的なモニタリングを通して評価を行っていく必要があると考えられる。そのためにも精神科病院において先駆的な感染対策の取り組みをしている施設の担当者と意見交換しながら研究の遂行に向けて協力していくことが必要である。
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