2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24800001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
國松 淳 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50632395)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 大脳基底核 / 眼球運動 / 自発運動 / ドパミン |
Research Abstract |
自発的な運動のタイミングを制御するメカニズムについて研究を行っている。申請者は、サルに一定の遅延の後に自発的なタイミングでゴールに目を向けることが要求される課題(Self-timed課題)と、運動の開始が課題内で指示される課題(Triggered課題)を訓練し、同課題を行っているときに運動準備期間に前頭葉背内側部を微小電気刺激することによって、人為的に自発運動のタイミングを操作できることを今年度に報告した(Kunimatsu & Tanaka, 2012)。本研究ではこれまでの成果をさらに発展させるべく、大脳基底核がタイミングの調節といった随意運動の制御にどのように関わっているのかを調べている。 大脳基底核には直接経路、間接経路といった複数の内部経路があり、それぞれの経路はドーパミンD1、D2受容体によって調節されていることが知られている。大脳基底核の入力部である尾状核にドーパミンD2受容体の拮抗薬を微量注入したところ、Triggered課題と比べてSelf-timed課題で大きく反応時間が短縮した。一方で、ドーパミンD1受容体の作動薬やドーパミン D1受容体の拮抗薬、またはドーパミンD2受容体の作動薬では一貫した結果は得られなかった。これらの結果は、ドーパミンD2受容体が関与している間接経路で自発的な運動のタイミングが調節されていること示している。 また注入実験に加え、単一ニューロンの細胞外記録を行っている。この実験ではself-timed課題に複数の遅延期間(300, 900, 2100ミリ秒)を加え、そのときの尾状核の神経活動を調べた(n = 38)。その結果、再現時間によって神経活動の上昇率と閾値に至るまでの時間が異なっていた。 本年度では1頭目からデータを取り終わるまでに至った。来年度は上記の結果をまとめて日本神経科学学会および北米神経科学学会で発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、運動のタイミングを制御する情報処理機構の研究で大きな進展があった。まだ実験数は少ないが、大脳基底核が適切な運動のタイミングの調節に関与していることを示すデータを得ている。2頭目のサルのトレーニングを開始したところであり、来年度にはさらにデータを増やすことが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に得た結果から、大脳基底核の、特に間接経路において時間情報が処理させている可能性が高いことが示されている。しかし、これまでの神経心理学や脳画像研究から、大脳基底核だけでなく小脳も時間の制御に関与していることが報告されている。基底核と小脳は処理をする時間長が異なることが示唆されており、前者は主として秒以上、後者は秒以下の処理に関与すると考えられている。また、基底核疾患では再現時間そのものが変化するが、小脳障害では運動タイミングの微調節が困難となり、試行間のばらつきが増大することが多い。しかしこの病態を説明する神経生理学的な報告はほとんどなく、基底核に加えて、小脳の神経活動を記録して比較することはタイミング制御のメカニズムを調べるうえで非常に重要であると考えられる。よって、大脳基底核の実験が終了し次第、同課題(Self-timed課題)中における小脳の神経活動の記録を開始する予定である。
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