2012 Fiscal Year Annual Research Report
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24800008
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
ANTON Nicolaevic 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (30633771)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 脊髄小脳変性症 / 代謝型グルタミン酸受容体 / グルタミン酸トランスポーター / プルキンエ細胞 / 小脳 / パッチクランプ |
Research Abstract |
1. SCA1ノックイン(KI)マウスの平行線維-、登上線維-EPSCキネティクスの観察:SCA1KIマウスにおいて、生後1週よりバーグマングリアのGLAST発現量が有意に低下していることから、生後4週小脳スライスへのCTZ灌流により平行線維-、登上線維-EPSCキネティクスは、野生型よりSCA1KIマウスで顕著に変化することが予想される。これを確かめることとした。 生後4週の時点で、SCA1KIマウスと野生型マウスのpassive membrane capacitanceおよび平行線維-EPSCのキネティクスについては有意差は見られなかった。他方、登上線維-EPSCのdecay time constantはSCA1KIマウスで有意に延長していた(野生型6.4±1.0 ms, SCA1KI 10.4±0.8 ms)。CTZ灌流により、SCA1KIマウス、野生型マウスともにdecay time constantが増大し、野生型とSCA1KIマウスの間で差は見られなくなった。今後、解析数を増やすとともに、生後7週、14週、22週のマウスを用いても解析する。 2. SCA1KIマウスにおけるEAAT4、Homer-3、mGluR1のタンパク質発現の時間変化の観察:購入したHomer-3の抗体がうまく働かなかったため、mGluR1とEAAT4の解析を行った。mGluR1の発現量を野生型とSCA1ノックインマウスで生後3、7、14、22週の時点で比較した。その結果、SCA1ノックインマウスにおいて生後14週より顕著に低下し、生後22週ではさらに大きく低下することが明らかとなった。他方、EAAT4は生後22週になっても野生型と発現量の違いが見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
mGluR1シグナル経路の障害については、別の脊髄小脳変性症1型モデルマウスを用いた解析も平行して行っていたが、そちらで顕著な変化が観察された。別のマウスはプルキンエ細胞にのみ障害があるが、本研究で用いているSCA1KIマウスはプルキンエ細胞に加えて、バーグマングリアにも障害があると推測される。したがって、SCA1KIマウスでは、プルキンエ細胞とバーグマングリア両方の障害があり、興味深い変化が観察されると推測している。今年度は、SCA1KIマウスに研究の重点をシフトして解析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
過去の文献では、SCA1ノックインマウス小脳のバーグマングリアは大きく障害されていることが報告されている 。しかし、昨年度の本研究者が行った抗GFAP抗体を用いた免疫組織学的解析では、SCA1ノックインマウス小脳のバーグマングリアの密度に大きな変化は見られなかった。GFAPはバーグマングリアのシャフトに存在し、平行線維ープルキンエ細胞シナプスを覆う突起には存在しない。そこで、SCA1ノックインマウスのバーグマングリアの突起に変化がないか調べる。具体的にはウイルスベクターを用いてバーグマングリアにGFPを発現させて、全体像を観察する。あるいはバーグマングリアにパッチし、細胞内に蛍光色素を注入して形態を解析する。 一方、平行線維ープルキンエ細胞シナプスのシナプス後部に発現する代謝型グルタミン酸受容体(mGluR1)の発現量を野生型とSCA1ノックインマウスで比較したところ、SCA1ノックインマウスにおいて生後14週より顕著に低下することが明らかとなった。そこで本年度は、SCA1ノックインマウスのシナプス伝達の時間変化を詳細に解析する。具体的には生後3週、7週、14週および24週のSCA1ノックインマウスを用いる。昨年度の実験で7週あたりからmGluR1シグナルが障害されるというpreliminaryなデータを得ている。この点をさらに詳細に解析するとともに、LTD発現の有無についても時間経過をおって解析する。さらにmGluR1刺激で誘導される小胞体(細胞内カルシウム貯蔵庫)からのカルシウム放出についても、カルシウムイメージングを用いて明らかにして行く。カルシウムイメージングはホールセルパッチクランプと同時に行い、slow EPSCやエンドカンナビノイドを介するシナプス前抑制との関連も解明する。また時間的に可能であれば、ウイルスベクターを用いたレスキュー実験にも取り組む。
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Research Products
(1 results)