2012 Fiscal Year Annual Research Report
流体中における輸送現象の複雑ネットワーク理論による解析
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24800011
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤原 直哉 東京大学, 生産技術研究所, 民間等共同研究員 (00637449)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | ネットワーク / 流体 / 数理工学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、流体中における粒子の輸送現象を複雑ネットワークとして捉え、ネットワーク科学の手法を用いて解析することである。そのために必要な数理的基礎を明らかにし、ネットワーク科学で確立している解析手法を用いることによって、通常の流体解析では明らかにならなかった性質の解明を目指す。具体的には、非均一な流れ場においてボトルネックとなる領域の特定、流れ場が変化したときの応答の解析などである。 本年度は、常微分方程式であるラグランジアン乱流モデルに対して粒子の流れをもとにネットワークを構成し、媒介中心性を用いた解析を行った。その結果、対流ロールの境界領域において高い媒介中心性を与えることを明らかにした。この結果により、流れの方向を決定づける領域を特定できることを示した。同様の結果は温度の空間相関を元に構成した地球規模のネットワークにおいて知られているが、本研究ではその物理的意味を明らかにした。また、流れ場の構造がわずかに変化した場合の定常状態の変化を、摂動論を用いて見積もった。このような状況は気候科学では大気や水の循環、汚染物質の拡散、およびそれらの人為的な制御、など多く存在すると考えられ、有用である。 さらに、海洋中での個体群動力学に対する本研究の応用可能性について議論した。その結果、本研究手法である流れネットワーク解析と、局所的な個体群の数の変動を記述するダイナミクスとを組み合わせるアプローチが有効であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、本年度に流体輸送ネットワークの数理的基礎の解明とネットワーク解析の二つの研究を予定していた。後者に関しては、ほぼ当初計画どおりに研究が進行している。具体的には、媒介中心性による解析を適用することでネットワークのボトルネックを同定し、本手法の有効性を確かめることができた。また、摂動展開を解析的に行った。前者に対しては、数値計算による検証が進行中である。一方、25年度に行う予定であった、実験系の研究者との議論による問題抽出を行い、問題の定式化を行った。この点に関しては研究計画よりも早く推移している。これらより、本年度の研究はおおむね順調に進行しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、新たな解析的手法を開発する。その際に、摂動論による手法が有効であると考えられる。具体的には、流れ場の状態が変化した時の定常状態の表示を解析的に与え、数値実験の結果と比較する。また、粒子数が保存される場合と保存されない場合に対して定常状態の満たすべき表式を与える。また、偏微分方程式系への応用を検討する。そして、研究成果の学会での発表を行う予定である。
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