2012 Fiscal Year Annual Research Report
認識系と意志決定系を統合した脳型情報処理モデルの基礎研究
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24800013
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
奥 牧人 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (30633565)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 脳型情報処理 / 確率推論 / ベイズの定理 / ダイナミックベイジアンネットワーク / 意思決定 / 近似解法 / マルコフ連鎖モンテカルロ法 / 部分観測マルコフ決定過程 |
Research Abstract |
本研究の目的は、脳における二種類の情報処理系、すなわち認識系(入力に関する処理系)と意志決定系(出力に関する処理系)を統合的に扱うための理論的枠組みを整備し、脳のような高度に知的な情報処理システムを工学的に実現するための基礎モデルを築くことである。 この目的を達成するために、本年度は(1)認識系における有力な既存の理論であるベイズ推論の考え方を拡張し、認識系と意思決定系を統合した理論的枠組みを構築すること(統合モデルの構築)、(2)統合モデルにおける厳密な最適解を定式化し、それを近似的に解く手法について検討すること(厳密解の導出と近似手法の検討)について取り組むことを計画していた。 一つ目のテーマである統合モデルの構築に関して、本年度の研究では、申請者のこれまでの研究(奥&合原、脳と心のメカニズム夏のワークショップ、2011)を発展させ、ダイナミックベイジアンネットワークモデルの確率推論問題として、認識系と意志決定系の機能を統合的に記述することに成功した。 二つ目のテーマである厳密解の導出と近似手法の検討に関して、本年度の研究では、前述の統合モデルにおけるベイズ最適な厳密解を、全ての変数が離散の場合について導出することに成功した。また、この厳密解を近似的に解く手法を検討した結果、既存のマルコフ連鎖モンテカルロ法では効率が不十分であることが分かり、既存手法を改良した新たな近似手法を開発した。両手法を比較するため、部分観測マルコフ決定過程のベンチマーク問題を少し変更したものを用意し、数値計算によって提案手法の有意性を検証した。 以上の成果は、査読付き国際会議に投稿中である。また、本事業による直接的な補助の対象ではないが、本研究のベースとなっている申請者の既存の研究の詳細が和文雑誌論文という形でまとまり、出版される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要に記したとおり、本年度は大きく二つのテーマを計画していた。両テーマとも大枠では年度目標が達成できたが、より詳細な項目別にみると未達成の部分が少し残っている。また、平成24年度中に研究集会等で発表する予定であったが、テーマ2で新たな近似手法の開発に取り組むなどしたため、年度内に発表することが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、当初の計画どおり、研究実績の概要に記した3つのテーマのうちテーマ2の続きとテーマ3に取り組む予定である。また、現在投稿中の国際会議の審査に通過した場合の発表に加え、国内の研究集会での発表や、雑誌論文への投稿を目指す。初年度にやや遅れが出た部分に関しては、想定の範囲内であるので、計画の大幅な変更は行わず、事前に用意していた対策を講じる。
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