2012 Fiscal Year Annual Research Report
歩行中の障害物回避動作における下オリーブ核‐登上線維系入力の機能的意義
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24800018
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 和 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (40637914)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 下オリーブ核-登上線維系 / 障害物回避 / 運動制御 |
Research Abstract |
本研究課題では、環境や状況に適応的な動作の制御、特に身体末端部の制御において延髄下オリーブ核-登上線維系入力がどのような役割を演じているかについて迫りたい。このような動作の制御を神経細胞レベルから理解するため、実験動物に歩行中の障害物回避動作を課した。本研究では下オリーブ核-登上線維系入力の障害物回避動作における機能的意義について検討するため、下オリーブ核-登上線維系を薬理学的に破壊し、破壊前後で比較する。障害物回避における身体末端部つま先の制御は、関節間の協調つまり各関節の動きを生成する様々な筋活動の最終表現型と考えられる。そこで平成24年度(9月~3月)は、歩行中の障害物回避動作における肢の筋活動を調査し、以下の結果が得られた。 ①障害物回避歩行の基盤と考えられる通常平面歩行において、正常無処置(intact)動物の腓腹筋の活動は接地相中持続的に観察されるが、下オリーブ核-登上線維系を破壊(post-lesion)すると接地相後半に活動が観察されなくなった。対照的に、遊脚相におけるintactの腓腹筋活動は接地直前に観察されるだけであるが、post-lesionの腓腹筋活動は遊脚相中盤以降から観察された。 ②Post-lesion動物は障害物回避時に不安定なつま先軌道を示すことが特徴であるが、その場合、回避肢の外側広筋、大腿二頭筋、前脛骨筋、腓腹筋においてintact動物が示す筋活動とは異なる活動が観察された。特に、前脛骨筋は特徴的な活動を示した。回避中intactの前脛骨筋は持続的な筋活動を示すが、post-lesionでは断続的な筋活動が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画において、平成24年度は歩行中の障害物回避時の筋活動調査を終える予定であった。しかしながら、当初予定していた筋活動の調査方法(国際誌に発表済み)では、長時間にわたり信憑性のあるデータを取得することが困難であることが判明し、調査方法の再検討を余儀なくされた。そのため、約半年での研究計画に影響を及ぼした。しかしながら、新規に開発した筋活動調査方法は、より実験動物にストレスのかからないものとなり、結果的に実験手法の質の向上につながった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、昨年度開発した埋め込み式の筋活動調査法を用いて歩行中の障害物回避時の筋活動調査を終了させる。そこから得られた結果を基に、障害物回避時に観察されるつま先軌道障害の原因に迫るべく、小脳プルキンエ細胞の神経活動を調査する。当初の予定にはなかったが、最近、神経活動記録技術の参考にしていた大阪大学橘川先生から直接ご指導いただける予定となった。また、共同研究者の青木氏が提出した博士論文のデータより、小脳プルキンエ細胞記録は小脳中間部より記録する予定となった。青木氏の知見は、神経活動記録部位の選定に大きな影響を与えた。
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Research Products
(2 results)