2012 Fiscal Year Annual Research Report
ミックスドメソッドアプローチによる高齢者のICT利用への消極性に関する分析
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24800053
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
橋爪 絢子 首都大学東京, システムデザイン学部, 助教 (70634327)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 高齢者 / ICT / ユーザビリティ / ユーザ経験 / UX / 質的調査 / 定性的調査 / ミックスドメソッドアプローチ |
Research Abstract |
本研究では、高齢者に特に顕著に見うけられるICT(情報通信技術)の利用への消極的態度の実態とその要因を、量的手法と質的手法を統合したミックスドメソッドアプローチによって明らかにする。実験によりICT機器の操作行動を、インタビューにより日常生活や利用環境、経験等を把握する。また、質問紙調査によってICT利用に関するユーザの全体的傾向と特徴を把握する。 本研究では、対象とする高齢者をICT機器の利活用の程度やその能力によってグループに分け、ICT の利活用能力が高い高齢者から低い高齢者までを対象に量的・質的手法を用いて研究を行う。なお、統制群として若年者も対象とする。本年度は、ICT機器の利活用の程度やその能力の高い高齢者やデジタルシニアと低い高齢者に対して調査及び実験を行い、両グループに特徴的なICTの利用傾向の把握を行った。また、各世代に対しICT利用に関する質問紙調査を実施した。現在、下記の観点から結果の分析を行っている段階である。 ①ICT機器およびコンテンツのユーザインタフェースに対する視覚的な情報獲得と機器の操作行動がどのように異なるのかを実験的に明らかにする。 ②ICT機器の操作行動における相違を実験的に把握し、認知的操作能力やメンタルモデルの形成の相違を明確化する。 ③過去の機器利用経験や日常生活等に関するインタビュー調査により、(①や②のような)認知的利活用能力やICT機器への積極的-消極的態度の形成に影響を及ぼした要因を明らかにする。 これらの結果から、高齢者におけるICT機器利用への積極的-消極的態度が形成される要因が明らかとなり、日常生活において高齢者が適切にICTを利活用しいていく能力の水準を高めるための方策を明確化できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ICT機器の利活用の程度やその能力の高い高齢者やデジタルシニア(グループ1)と低い高齢者(消極的シニア=グループ2)に対して調査及び実験を行い、両グループに特徴的なICTの利用傾向の把握を行った。 ①予備調査の実施:一般の高齢者に対して予備調査を実施し、調査結果から高齢者をグルーピングし、被験者を選定した。予備調査は、ICTの利活用に関する内容の質問票を用いた郵送法の調査で実施し、ICT機器の利活用の程度やその能力の高い高齢者やデジタルシニアと低い高齢者を選定した。 ②インタビュー調査の実施:18名の高齢者(デジタルシニアと消極的シニア)に対してインタビュー調査を実施し、日常生活やライフヒストリー、これまでのICTの利用経験、実利用環境等の把握を行った。実施事項は下記のとおりである。 ③実験の実施:18名の高齢者(デジタルシニアと消極的シニア)に対して、実験と回顧型ヒアリングを併せて実施した。実験では、課題遂行型の認知心理学的な実験によって視覚的な情報獲得と機器の操作行動を観察し、認知的操作能力やメンタルモデルの形成についての把握を行った。 ④質問紙調査の実施:20歳~79歳の各世代の男女414名を対象に、ICTの利用に関する質問紙調査を郵送法により実施し、263名から有効回答を得た。 今後、これらの調査および実験結果から、高齢者におけるICT機器利用への積極的-消極的態度が形成される要因を明らかとし、日常生活において高齢者が適切にICTを利活用できるための能力の水準を高めるための方策を検討していく。
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Strategy for Future Research Activity |
今後さらに、平均的なICT利用水準にある高齢者と若年者に対して調査および実験を実施し、今年度実施した調査および実験結果と併せて分析を行う。それにより、高齢者におけるICT機器利用への積極的-消極的態度が形成される要因を明らかとする。 ①予備調査の実施:一般の高齢者に対して予備調査を実施し、調査結果から高齢者世代のなかで平均的なICTの活用能力を持つ平均的シニア(グループ3)を選出し、被験者を選定する。予備調査は、ICT の利活用に関する内容の質問票を用いた郵送法の調査で実施する。若年者(グループ4)については、学生に協力を求める。 ②インタビュー調査の実施:平均的シニアと若年者に対して訪問形式のインタビュー調査を実施し、その結果を比較分析する。調査では、日常生活やライフヒストリー、これまでのICT の利用経験、実利用環境等を把握する。 ③実験の実施:平均的シニアと若年者に対して、実験と回顧型ヒアリングを併せて実施する。実験では、課題遂行型の認知心理学的な実験によって視覚的な情報獲得と機器の操作行動を観察し、認知的操作能力やメンタルモデルの形成について把握する。 ④結果の分析:ICT機器の利活用の程度やその能力の高い高齢者やデジタルシニア(グループ1)と低い高齢者(消極的シニア=グループ2)、平均的シニア(グループ3)、若年者(グループ4)を対象に行った調査および実験の結果を分析する。実験結果に見られた傾向の要因をインタビュー調査の結果と関係づけ、高齢者のICT 利活用能力に関して総合的分析を行い、特に消極的態度に対する具体的な方策を検討する。
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