2012 Fiscal Year Annual Research Report
異文化間の教師の教育観に配慮した国際交流学習のデザイン
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24800058
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Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
今野 貴之 目白大学, 社会学部, 助教 (70632602)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 教育工学 / 活動理論 / 水平的次元 / 国際交流学習 / 教師教育 / インド / 教師の信念 |
Research Abstract |
本年度は、異文化間の教師の教育観の比較検討を行い、差異を明らかにすることを目的とした。異なる文化に所属する教師の教育観を比較分析し、その知見を組み入れて国際交流学習をデザインした。 研究の対象は関西大学初等部とインド・ビハール州の学校である。それぞれの教師の教育観を比較検討するため多声的ビジュアルエスノグラフィーを用いた。関西大学初等部へは定期的に訪問し、教師へのインタビューや授業の参与観察をおこないデータを取得した。また、インドへは8月に渡航し現地の状況を調査、教師へのインタビューをおこなった。教師の教育観に関する差異に関して、教師が主導して児童生徒へ知識伝える暗記・暗唱を中心とした教育と、児童生徒の興味や関心に応じて自律的・協働的な問題解決ができるように導くことを目指した教育をめざすのかという、学習に対する見方に差異があることがわかった。さらに、国際交流学習を教育目標達成のための「手段」と位置づけている点では、両国とも共通していたこともわかった。 調査結果から明らかになったことを踏まえて、国際交流学習をデザインした。その枠組みとして拡張的学習理論を用いた。日本側とインド側の状況をモニタリングし、両国にとってどのような交流形体が望ましいかを、教師とともに分析・検討し、実践の修正を続けた。その結果、それぞれの教育観の相違を双方の教師が理解し、共通の課題を協働で追求することや、それぞれの教育観に基づいた学習活動を理解するためには、NPO/NGOなどの外部機関を交えた国際交流の重要性が明らかになった。ただし、国際交流学習における外部機関の位置づけやかかわり合う時期については更なる検討が必要であることもわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は、(1)国内の調査、(2)交流相手校(インド)の調査、(3)国際交流学習のデザイン、(4)国内外の研究者との議論の4点において当初計画していた以上に達成された。 国内の調査では、研究対象としている関西大学初等部へ訪れ、教師へのインタビュー調査や、授業実践の見学をおこなった。また、教師と国際交流学習の実践をどのように進めていくことができるのかの議論を対面だけではなく、メールやテレビ会議をもちいて年間を通して進めていくことができた。さらに、これまでの交流学習が児童にどのような影響を与えてきたのかも調査した。1年間の交流学習を進める中で、交流が予定通りにすすまない場合、教師は児童にどのような説明をしてきたのか、そのときの児童の反応やどのような考えをもったのかということを具体的に調査した。 交流相手校(インド)の調査では、交流相手先の教師へのインタビューをおこない計画通りデータを取得することができた。さらに、今後の国際交流学習の展望についても議論したり、交流相手先の生活環境や学習環境も調査したりすることができたため、日本と途上国の間でおこなわれる国際交流学習への示唆を得ることができた。 以上の知見を踏まえて国際交流学習をデザインするための要件を整理した。具体的にどのように授業がすすめられるのかの手順の検討に加えて、教師や児童生徒をとりまく社会文化的な文脈の中で複数の組織や団体と水平的に繋がり合いながら実践活動が展開されることも考慮した。 加えて、国際会議や国内の学会への参加によって各国の研究者や実践者と議論を交わす機会を持つことができた。これにより、本研究課題に対する示唆を得ることができた。これは今年度計画していた以上の成果を上げることができたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの研究で、異文化間の教師の教育観の差異や国際交流学習をデザインするための要件を整理した。これらの知見に加え国際交流学習をデザインするための要件をさらに、精査にしていくために、国際交流学習を行う過程において、教師と交流相手、学校内外の組織・団体の間でどのような繋がりがもたれているのか、何が起こっているのかを明らかにしていく。 その方法として、活動理論の水平的次元の考え方を理論的枠組みとして、事例に即して明らかにすることを試みる。分析対象とするデータは、昨年度までに取得した(1)日本の教員へのインタビュー、(2)日本の学校のフィールドノーツ、(3)インドでのフィールド調査、(4)国際交流学習に関わる会議メモ・メールである。さらに、これまでのインドの事例に加えて、中国との交流も研究対象として加える。 以上を進めていくことで多角的に国際交流学習のデザインの検討が可能になると考える。
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