2012 Fiscal Year Annual Research Report
リポソームから組み上げる骨疾患治療用バイオマテリアルの開発
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24800061
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
福井 有香 慶應義塾大学, 理工学部, 助教 (50635836)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | リポソーム / 多糖 / DNA / リン酸カルシウム / ナノカプセル / 骨 / 有機無機ハイブリッド / DDS |
Research Abstract |
本年度は主に、骨標的指向性薬物送達システムの開発に向けたハイブリッドリポナノカプセルの作製において、以下の1、2について研究を行った。 1. 有機無機ハイブリッドリポナノカプセルの作製 リポソームまたはリポソーム表面に多糖を被覆した多糖リポナノカプセルの内外から異種イオンを相互拡散させる方法(Counter-diffusion法)により、リン酸カルシウム(CaP)とのハイブリッドリポナノカプセルを作製し、析出したCaPの結晶構造を電子線回折、赤外吸収分光法を用いて検討した。CaCl2とNaH2PO4/Na2HPO4を用いてCaP層の析出を試みたところ、反応条件に加え、反応場となるナノカプセルの種類によって生成する結晶構造が異なることがわかった。反応場がリポソーム表面またはDNAであるときに表面にCaP層を有するハイブリッドナノカプセルを作製することができた。さらに、DNAの場合には結晶化度が高いCaPが得られた。また、反応時間によってCaP層の厚みの調節が可能であった。これらのことから、リポナノカプセル表面の多糖の種類や化学的改質を施すことにより析出するCaPの結晶質を制御することで、キャリアの骨再生能の最適化につながると考えている。 2. ハイブリッドリポナノカプセルの薬物送達キャリアとしての機能化 ハイブリッドリポナノカプセル表層の骨標的指向性を検討するため、骨のモデルである粉末状のハイドロキシアパタイトへの集積化を観察したところ、CaP層表面にDNAを標的リガンドとして提示させたリポナノカプセルが高い集積能を示すことを見出した。このことより、DNA提示による骨へのターゲティングの可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.有機無機ハイブリッドリポナノカプセルの作製については、リポソーム表面に多糖類を被覆したカプセルの内外から異種イオンを相互拡散する手法を発案するに至り、CaPカプセルの新しい生成方法を確立することができた。この際、反応場となるナノカプセルの多糖類の種類によって結晶の生成速度および得られる結晶の質が異なることを見い出した。素材自体が骨再生を促すといった新規薬物キャリアの創製に確実に近づきつつある段階にある。 2.ハイブリッドリポナノカプセルの薬物送達キャリアとしての機能化については、表面に骨標的リガンドとしてDNAを提示させたハイブリッドリポナノカプセルが、骨の主無機成分であるハイドロキシアパタイトへ集積することを確認した。さらなるターゲット能の向上を目指して、骨標的リガンドとしてポリアスパラギン酸や破骨細胞への標的リガンドであるRANKLの表面提示を試みる。また、骨組織環境(酸性pHなど)におけるCaP層の溶解性、およびそれに伴う薬物放出機能の創出については現在検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、以下の(1)、(2)を行う。 (1)骨標的指向性薬物送達システムの開発に向けたハイブリッドリポナノカプセルの作製および機能化 本年度は、多様なCaP層の創製と骨疾患への最適化を目指して、カチオン性多糖であるキトサンのリン酸化を行いCaP親和性の付与を行う。この際、リン酸化キトサンのリン酸化度によりCaP層の厚み、形態、結晶構造などの調節を目指す。得られたCaP層の溶解性を調節することによって薬剤放出挙動の制御に取り組んでいく。CaPの溶解性についてはイオンクロマトグラフィを用いて溶出したカルシウムイオン濃度を定量することによって検討を行う。また、ハイブリッド化および表面へのリガンド提示による破骨細胞や骨芽細胞などへのターゲティング能の付与、サイズ・形状を含めた細胞への取り込み能の検討、骨再生サイクルにおける骨吸収と骨形成の制御を行う。 (2)骨修復能を有する骨補填材の開発に向けたリポナノカプセルの組織化およびゲル化 カプセル型骨補填材として、内部に架橋剤を封入し、さらに表層を架橋剤と反応してゲル化するポリマーで被覆したハイブリッドリポナノカプセルの作製を行う。この時、破骨細胞周辺にみられるような低pH条件において、CaP層の溶解に伴って内部から架橋剤が放出されるようなリポナノカプセルの創製を行う。
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