2012 Fiscal Year Annual Research Report
イガイタンパク質由来高機能性三次元ナノファイバーScaffoldの開発
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24810012
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
金 眞熙 信州大学, カーボン科学研究所, 研究員 (80636225)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | ムール貝由来接着タンパク質 / 二層カーボンナノチューブ |
Research Abstract |
ナノファイバーは、表面積が大きく、生体物質の透過性、生体成分の浸潤性などが優れているし、細胞の固着・移動・増殖に最適な3次元多孔性構造で組織の複製及び再生に適した細胞足場材料である。しかし、機械的強度が弱く電気的に絶縁という欠点がある。本研究では、良導電性・高機械的強度・光学活性、そして高生化学活性を持つムール貝由来接着タンパク質で孤立分散させた二層カーボンナノチューブ溶液を添加し、電気紡糸方法を用いて3次元のナノファイバーシートの製造に成功した。もっと詳しく説明すると、プローブ型超音波処理で得られた分散溶液は光学的分析を用いて二層カーボンナノチューブが孤立的に分散されるのを確認した。溶液中のナノチューブの表面状態や長さなどが分散状態に与える影響も検討した。また分子量が大きいムール貝由来接着タンパク質は高い分散能力を示した。ムール貝由来接着タンパク質でコーテイングされたナノチューブ溶液を材料とし電気紡糸装置を用いてナノファイバーシートを製造できた。また紡糸する際のドラムの回転速度を変化させることでナノファイバーの配向や、孤立したチューブの配向度の調整も可能であった。ムール貝由来接着タンパク質とナノチューブ溶液、そして微量の架橋材を添加した溶液からナノファイバーシートの製造もできた。さらに、TEM観察からナノチューブは長さ方向に配向していることを確認したし、現在はナノファイバーシートの生理活性を評価中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標は、良導電性・高機械的強度・光学活性、そして高生化学活性が付随した高機能ナノファイバーシートを製造し、多機能性細胞足場材料としての応用可能性を探索することである。信州大学で製造した二層カーボンナノチューブをムール貝由来接着タンパク質溶液に孤立分散して、光学分析を用いてその分散状態を確認した。さらに、様々な紡糸条件で3次元のナノファイバーシートの製造ができた。また、ムール貝由来接着タンパク質とナノチューブ溶液、そして微量の架橋材を添加した溶液から電気紡糸によりナノファイバーシートの製造ができることを確認した。さらに、TEM観察からナノチューブは長さ方向に配向していることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、骨組織再生の細胞足場材料としての研究を行う。平成24年度の研究知見を利用してナノファイバーシートを作成し、そのシートの骨組織の細胞足場材料としての可能性を検討する。合成したナノファイバーと生体組織との接合界面の顕微鏡観察により、骨組織の形状や分解速度、またはナノシートの生体適合性を検討する。また、ムール貝由来接着タンパク質に細胞種特異的な接着ペプチドや成長因子,細胞外マトリックス由来のペプチドなどを付加した溶液を用いてナノファイバー化し、細胞足場材料として評価する。さらに、ムール貝由来接着タンパク質、カーボンナノチューブ、細胞組織反応メカニズムの解明など材料的解析を行う。細胞外マトリクスの微細環境、例えば、表面形状状態、機械的な性質(強度、弾性率、粘度など)、成長因子などが細胞の組織形成に影響を与えることは知られているが、未だに組織と細胞外マトリクスとの関連シグナル要素は解明されていない。そこで細胞成長をリアルタイムでモニタリングできる光学的なツールとしてラマン散乱スペクトルを提案する。特に、ナノチューブからの高い光学活性はナノファイバー表面で細胞の動きと共に共鳴し、生体と接した際の組織と細胞との界面の状態を電気的にリアルタイムでモニタリングできる可能性を確認する。
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