2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24810013
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
石井 佑弥 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30633440)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | ナノファイバー / 高分子 / 有機レーザ / エレクトロスピニング / 光ファイバ / 発光 / 導波路 |
Research Abstract |
本研究では、有機レーザ色素を添加した高分子ナノファイバーを作製し、このナノファイバーから電圧駆動でレーザ発振を実現することを目的としている。 初年度の平成24年度は有機レーザ色素を添加した高分子ナノファイバーの作製条件の検討と、同ファイバー中での光導波特性評価を行った。まず、高分子光導波路材料として広く使用されているポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)を高分子ナノファイバーの母材に選定し、高濃度のPMMA溶液を調整した。この溶液に有機レーザ色素を添加し、エレクトロスピニング法によりナノファイバーの作製を試みた。低濃度の溶液を用いた場合にはビーズ状の凹凸を有するファイバーが作製されたが、濃度を増加させることによりビーズ状の凹凸は低減され、均一径のファイバーの作製に成功した。均一径のファイバーの作製は、レーザ発振させるための光閉じ込めの点から極めて重要である。平均直径は約550 nmであり、ナノメーターオーダーの直径を有するファイバーが作製されていることが分かった。 次に、ファイバー全体を光励起し、ファイバーの直径方向(側面)と端面の発光スペクトルを顕微鏡を通して測定した。添加した有機レーザ色素の発光スペクトルがファイバーの側面全体から観測され、ナノファイバー中に有機レーザ色素が均一に添加されていることが確認された。また、ファイバー端面からはファイバー側面に比べて9倍以上の発光強度が得られ、高分子ナノファイバー中での色素の発光が同ファイバー中を導波していることが明らかになった。続いて、ファイバー軸方向に励起レーザ光をスキャンしながら端面の発光スペクトルを測定することにより、PMMAナノファイバー中における伝播損失の評価に成功した。ファイバー内での光導波は、目標とする高分子ナノファイバーレーザの必須要素であり、また伝播損失の定量評価は同レーザの性能評価に欠かせない要素である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は当初の計画以上に進展している。本研究課題は、研究設備がゼロの状態からのスタートであったが、現在までに色素を添加した高分子ナノファイバーの作製法の確立、並びに同ファイバー中での光導波の実証および伝播特性評価に成功している。さらに特筆すべき研究業績として、積極的な学会発表(国際会議2件)や論文発表(1件)が挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は以下に示す(1)から(3)までを遂行する。 (1) 作製した高分子ナノファイバーの電流電圧特性および出力光強度の評価(レーザ特性評価)……コレクタ切替式エレクトロスピニング装置を用いて、有機レーザ色素と遷移金属錯体を添加した高分子ナノファイバーを1本作製する。得られナノファイバーを電極上に配置する。このときの電極は、ナノファイバーの材料として用いた高分子よりも屈折率が低い高分子の基板上にパターニングされている。初めにこの状態で、電流電圧特性および出力光強度評価を行う。レーザ発振が確認されなかった場合は、基板として用いたものと同様の高分子材料(高分子クラッド)でナノファイバーを電極ごと覆い、ファイバーの長軸方向の両端を切断した上で反射板として切断面に薄い金属膜を成膜し光閉じ込めを目指す。すなわち、ファブリ・ペロー共振器のような形でファイバー長軸方向の光閉じ込めを目指す。電流電圧特性および出力光強度評価を行う。 (2) 結果の考察および学術誌や学会等での発表……順調にレーザ発振が確認された場合は理論解析を進めていく。他の波長でもレーザ発振可能かについても考察する。レーザ発振が確認されなかった場合は、原因を考察し必要に応じて材料選択からやり直す。以上の研究成果をまとめて、学術誌や学会等で発表する。 (3) 他材料系を検討し広帯域発振へと展開……単一材料系でレーザ発振が実現された場合、広域な波長可変性を実現するために、他の有機レーザ色素と遷移金属錯体の組み合わせを用いた高分子ナノファイバーレーザを検討する。
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