2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24810014
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
増田 亮 京都大学, 原子炉実験所, 研究員 (50455292)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 放射光 / 核共鳴散乱 / ネオジム / 希土類 / メスバウアー分光 |
Research Abstract |
本研究では期間全体を通じて、Nd-145の放射光核共鳴散乱法を開発することで、4f電子物性の基礎研究および磁気材料の特性研究に資することを目的としたものである。しかるに、Nd-145核、とくにその第1励起状態については核共鳴散乱分光法に必要な特性が十分に分かっていないことから、核共鳴散乱強度評価・核共鳴散乱に関わる特性評価までを達成すべき目的とし、発展的課題として実際の磁性材料評価への応用を試みることを挙げるものである。平成24年度においては、1、Nd-145同位体富化試料原料の準備、2、天然のNdでの核共鳴散乱用試料の準備、及び3、天然Nd試料でのNd-145放射光核共鳴散乱強度の評価、の3点を計画していた。1、についてはNd-145を94%含むNd酸化物を250mg入手することができた。2、については核共鳴散乱分光に用いるエネルギー基準体試料としてNd単体・Nd2O3・NdF3を入手し、その他については作成法を調査した。今後、同位体富化試料で合成するにあたって、Ndのロスの少ない方法を試行錯誤する予定である。3、について、実際にSPring-8にて放射光実験を試みた。光学系としてはGe-73の放射光核共鳴散乱で実績ある測定系を用いた。結果、Nd-145核を用いた核共鳴散乱強度は天然の基準試料では0.02counts/s以下と観測が困難であることが分かった。一方、従来のメスバウアー測定用に用意されていたNd-145を70%含む酸化物試料を借用して強度評価を行ったところ0.2counts/sの強度であり、核共鳴散乱分光法として行うのに現実的な最低限の強度(1count/s以上)を下回るため、測定系の改良が必要であることが分かった。このため、測定系の改良法を検討し、検出器改善を主とする改良計画の一環として試料設置法について改良を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までの計画上の達成度と言う観点からは、同位体富化試料の入手が完了し、基準体試料も天然のNdでは揃いつつあり、Nd-145放射光核共鳴散乱強度の評価も行ったということで、それほど遅れているわけではない。しかし、同位体富化試料を用いても従来の測定系では放射光核共鳴散乱強度不足との結果であることから、測定系の大幅な改良が必要と考えられる点で今後の進捗が計画より遅れることが予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
最大の問題点は核共鳴散乱の測定強度である。そのため、従来の測定系で用いていたX線を測定する検出器に代えて、電子線も検出できる検出器を利用することで、測定強度の大幅向上を図る。Nd-145核の第1励起状態を経由した核共鳴散乱過程においては電子線がX線の9倍発生するため、改善は可能である。ただ、電子線ではX線よりも試料の自己吸収が格段に激しいため、電子線用に設計した測定系及び試料を作成する必要がある。それで強度確保できた場合、基準試料を用いた核共鳴散乱測定用の特性評価を行う。このため、前年度入手した同位体富化原料を用いた基準試料の作成(ロスの少ない作成方法の試行含む)も並行して行う。加えて、メスバウアー分光の国際学会にて、測定系開発研究の進捗について情報収集を行うことで、可能な限りの強度改善法を模索する。また、電子線検出器を用いても強度が弱く第1励起状態の利用が現段階で現実的でない場合、従来測定されていた低分解能の第2励起状態を用いる手法も視野に入れてゆくこととする。また、Nd-145がどちらの励起状態でも強度不足だった場合は、開発した光学系を他の希土類に適用することも視野に入れる。なお、実際の磁性材料への応用は本研究課題期間終了後に試みることとする。
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