2012 Fiscal Year Annual Research Report
II型生合成酵素の触媒ドメイン間相互作用解析を指向したケミカルツールの創製と応用
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24810015
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石川 文洋 京都大学, 生理化学研究ユニット, 助教 (50631553)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 脂肪酸合成酵素 / ポリケタイド合成酵素 / パンテテインアナログ / 不可逆的阻害剤 / タンパク質-タンパク質相互作用解析 |
Research Abstract |
微生物や植物が産生する代謝産物は, その生物活性の多様性から生物学において重要な研究ツールとなり創薬シーズとなってきたことは疑う余地のない事実である. そのような天然物の多くは脂肪酸合成酵素 (FAS), ポリケタイド合成酵素 (PKS) および非リボソーム性ペプチド合成酵素 (NRPS) と呼ばれる酵素群によって合成される. そのため, これら酵素システムを人為的に改変し非天然化合物を創出する試みが多数報告されているが, タンパク質工学的手法が成熟しつつある今日においても容易ではない. 一因として, これら酵素システムの触媒ドメイン間の相互作用に関する構造情報が非常に限られているという事実がある. 本研究では触媒ドメイン間の相互作用を解析するためのケミカルツールを開発し, この相互作用を分子レベルで解明することを目的とした. 大腸菌の脂肪酸合成酵素 (FAS) およびPanoea agglomerans Eh335のアンドリミド合成酵素 (Adm, PKS-NRPS) をモデル酵素群として触媒ドメイン間相互作用を分子レベルで理解するために, 担体タンパク質 (CP) と脱水酵素 (DH) の相互作用に焦点を当てた.まず, DHに対する触媒機構に基づく不可逆的阻害剤 (クロスリンク剤) の設計および合成を行った. プロパルギルスルホンをscaffordとする2種類のパンテテインアナログ の合成は, 入手可能な 2-hexyne-1-ol から5段階での合成を行った. また大腸菌由来CoA生合成酵素およびBacillus subtilis由来のホスホパンテテイン転移酵素 (Sfp) を用いたワンポット化学-酵素合成法により, クロスリンク剤がapo-CPのセリン残基にリン酸エステル結合を介して結合したcrypt-CPの作製を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脱水酵素(DH)に対する触媒機構に基づく不可逆的阻害剤 (クロスリンク剤) として設計したプロパルギルスルホンをscaffordとする2種類のパンテテインアナログ の効率的な合成法を確立することができた. また, 大腸菌CoA生合成酵素 (CoaA-MBP, CoaE-MBP, CoaE-MBP), Bacillus subtilis由来のホスホパンテテイン転移酵素 (Sfp), 大腸菌脂肪酸合成酵素由来の担体タンパク質 (CP) およびDHの調製を行うことができた. さらに, 合成した2種類のパンテテインアナログをワンポット化学-酵素合成法によりcrypt-CPの生成を確認することができた. また本年度へ向けて, アンドリミド合成酵素由来のCP およびDHの発現ベクターを構築した. 現在, DHを添加しCP-DH複合体の生成を確認しているところであり, おおむね順調に推移しているものと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
クロスリンク剤を基盤とした生合成工学へのアプローチを検討するために, 天然相互作用の解明および非天然相互作用の最適化へ応用する. まず天然相互作用(脂肪酸CP-DH複合体, Adm CP-DH複合体)の反応効率を確認することから始める. さらに非天然相互作用の最適化へ応用する. Adm DHをFASの系で利用するためにはAdm DHとFAS CPが最適な相互作用を形成することが重要である. まずFAS CP-Adm DHの非天然相互作用をFAS CP-DHおよびAdm CP-DHの天然相互作用におけるクロスリンク反応効率と比較することによって,その相互作用を評価する. 天然相互作用と同等の反応効率が得られる場合は, Adm DHは大腸菌FASの系でそのまま利用することができるはずである. しかしながら, 反応効率が悪い場合はその非天然相互作用を最適化する必要が生じる. その場合は, error-prone PCR法を利用しAdm DHに4~5残基変異が導入された変異体タンパク質を複数調製する. そしてクロスリンク反応効率を指標に最も効率的にFAS CPと相互作用する変異体Adm DHをスクリーニングする.
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Research Products
(3 results)