2012 Fiscal Year Annual Research Report
コモンズのオープンアクセス化に伴う新しいコモンズへの展望と課題の克服
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24810022
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
廣川 祐司 北九州市立大学, 基盤教育センター, 講師 (80635649)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | コモンズ / 入会 / フットパス / 地域自治 / 地域コミュニティ / 地域環境保全 |
Research Abstract |
本研究は以下の3区分を行い、研究を行った。。(ア)機能不全となりつつある伝統的コモンズの再生(例:北九州市八幡東区猪倉町、静岡県伊東市池区)、(イ)破壊された伝統的コモンズの復興(三陸沿岸部:宮城県南三陸町等)、(ウ)オープンスペース化による新たなコモンズの創造(熊本県美里町・長野県小布施町・北海道のフットパス・神奈川県鎌倉市・東京都町田市等)。 初年度は特に(ア)および(イ)に関し、地域実践活動を踏まえた実証的研究を行った。また、(ウ)に関しても、熊本県美里町にはシンポジウム開催時に講演者として招聘され、基礎的な情報収集も行った その成果の一部として、間宮陽介・廣川祐司編(2013)『コモンズと公共空間―都市と農漁村の再生に向けて―』昭和堂が出版された。本書には執筆者として3章分の論文が収録され、また共編者として本書の編集も行った。初年度の成果としては十分であると思われる。 また、本年度は日本国内における地域的なコモンズへの言及のみならず、名古屋議定書において提唱された「SATOYAMAイニシアチブ」や「生物多様性」に関する観点からコモンズの国際的な分析を行い、現代社会に適応した新たなコモンズの創造・再生に向けた研究も行った。その成果の一部を「知識共創」第2号に論文を提出したが、それが最優秀論文賞を受賞した(廣川祐司(2012)『 グローバル経済下の伝統的知識』)。 調査実績としては、(ア)の2事例地には定期的に調査に行き、(イ)に関しても夏季休業および春季休業の長期休暇を利用し、計20日程度現地に滞在し、その変化をつぶさに調査・視察することができた。(ウ)は熊本県美里町・東京都町田市・神奈川県鎌倉市のフットパスには調査に赴くことができ、今年度中にフットパスに関する研究成果をまとめる計画である(共著本に収録予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、これまでの研究活動の軌跡や成果と昨年度の研究成果とをまとめ共編著本として出版することができたことが極めて大きい成果であるといえる。研究成果を社会へ還元するという点から見ても、出版直後から大手新聞社の記者から取材を受けるなど、社会的な影響を及ぼすことができたと感じている。 また今回採択されたスタート支援という領域は、2年間という短い研究活動であるが、残り1年間の研究目的は、コモンズのオープンアクセス化によるコモンズの創造と再生の仕組みを解明することであり、当初2年目に予定していた熊本県美里町や東京都町田市、神奈川県鎌倉市のフットパスに関する基礎的な調査も昨年度実施することができた。 このフットパス研究に関する成果を今年度、まとめる予定であるが、すでにその成果発表の場として、共著本での執筆依頼が来ている状態であり、昨年度中にその道筋を整えることができたのは非常に良かったと感じている。引き続き、当初の研究計画を順守し、しっかりと成果を出していきたいと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究活動は、イギリス発祥のフットパスと日本におけるフットパスの展開との差異に着目し、日本におけるフットパスの特徴について調査を行っていく予定である。特に、イギリスがコモンズのエンクロージャー(囲い込み)による市民の自然享受権・自然アクセス権への運動が根本的な動機によって広まりを見せたのに対し、日本においては、地域活性化の起爆剤としてフットパスが着目され、有効な観光資源としての広がりが定着しつつある。 この両者の違いに着目しつつ、現代的コモンズの再生・創造を模索したいと思っている。具体的には、コモンズとコモンズとをフットパスによってつなぐことで、過疎高齢化等の原因に起因して生じる閉鎖的コモンズの衰退を克服するための糸口を見出すことが目的である。そのため、特に重点地区として、熊本県美里町・東京都町田市・北海道(黒松内町・白老等)に調査を行い、基礎的な情報を収集するとともに、各種ステイクホルダーへの聞き取り調査を行うことで、フットパス敷設をする際の成功要因を抽出する。また、日本におけるフットパスが単なる地域活性化のための観光資源として利活用されるのみならず、その活動がひいては地域環境保全につながるための理論的な枠組みも提示することを目指す。この際、イギリスにおけるフットパスの発展しを踏襲する必要があるだろう。 これらの研究成果は、本年度末に発刊される予定の共著本に収録する予定である。
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