2012 Fiscal Year Annual Research Report
現代韓国のまちづくりにおける負の遺産とガバナンスに関する調査研究
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24820006
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
金 賢貞 東北大学, 東北アジア研究センター, 助教 (20638853)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 韓国 / 植民地遺産 / 登録文化財制度 / 九龍浦 / 群山 / 木浦 / まちづくり |
Research Abstract |
平成24年度には「敵産家屋」などの植民地期建造物が、韓国の登録文化財保護法によって破壊すべき恥辱の残滓から保存・活用の対象に見直され、地域のまちづくりの中で積極的に資源化されつつある実態を把握するために、まず、関連文献を収集した。次に、植民地期建造物などの遺産=近代(文化)遺産を比較的多く有し、その資源化が顕著に見られる仁川、浦項、木浦、群山の4都市のまちづくりを博物館や歴史館など、この資源化の過程で開館した公共(展示)施設に焦点を当てて調べた。地域の活性化や観光化の中核或いは部分的事業として進められる植民地期遺産の見直しという点では4都市は類似している。しかし、1945年解放後の政治・経済・社会的変化、既存の観光資源の状況、まちづくり・観光化を主導する主体の専門性や自治性などによって植民地期遺産の保存・活用のあり方はかなり異なることが明らかになった。例えば、仁川の場合、華僑の歴史や人口が多く、チャイナタウンの観光化がかなり成功しているため(ほかにも仁川空港や新都市開発などもある)、植民地期遺産の資源化は展示施設の整備に止まっている。展示施設の建設や運営のみに集中する資源化は木浦でも見られ、非常に類似している。しかし、木浦は仁川のような観光化資源に恵まれていないにもかかわらず、浦項や群山に比べて植民地期遺産の資源化に積極的ではない点が興味深い。関係者や地域住民たちは「(特に群山と違って)植民地期日本に対する感情はよくない」と語る。これが植民地時代の支配のあり方や日本人・朝鮮人(当時)との関係に由来するものか否かは今後の課題である。浦項の九龍浦と群山の植民地期遺産は単なる保存ではなく、観光資源としての活用が著しい。本研究では、両地域における植民地期遺産の資源化の背景やプロセス、住民のかかわり方、住民・マスメディアなどによる対内外的評価、観光化の実態などを細かく調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の遂行のためには、関係する公務員や住民たちへのインタビューは必須である。しかし、外交・政治的関係や環境の変化にかなり影響された点は特筆しておきたい。調査者が韓国人であるにもかかわらず、日本から来たということで、深いところまで話が聞けなかったり、関連資料の提供を拒まれたりした。また、公共政策の進展にかかわる韓国的特長から、予想していた事業が進んでいなかったので、調査の遅延も生じた。しかし、各地域の知識人(研究者)とのネットワークを活用するとともに、住民たちとも信頼が築けるようになり、結果的には計画通りに調査は進んだと評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
問題点は、浦項・九龍浦における公園の造成計画が遅れ、その調査が計画通りにできなくなったが、当該研究費を繰り越して調査を引き続き実施する。なお、本フィールドワークで聞き取りなどを実施する際は、本調査の趣旨を十分に説明し、了解を得た上で行なう。
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Research Products
(2 results)