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2012 Fiscal Year Annual Research Report

近現代フランスにおける哲学と心理学の関係

Research Project

Project/Area Number 24820010
Research InstitutionThe University of Tokyo

Principal Investigator

新田 昌英  東京大学, 人文社会系研究科, 助教 (70634559)

Project Period (FY) 2012-08-31 – 2014-03-31
Keywords思想史 / 心理学史 / フランス反省哲学 / アラン(エミール・シャルチエ)
Research Abstract

2012年度は主に19世紀末フランスにおける哲学と心理学の関係、なかでも反省哲学派と呼ばれる哲学の潮流と当時の実験心理学および折衷主義哲学の心理学の関係について研究した。具体的には、ジュール・ラシュリエ、ジュール・ラニョー、エミール・シャルチエ(アラン)といった哲学者たちの心理学論について、直接的な影響関係が確認できる3人の思想を比較した。3人の形而上学あるいは反省心理学は、カントの超越論的哲学の影響を色濃く残しており、直観の被規定性、人間の認識能力の有限性についての意識から出発していること、それは唯物論的認識論を拒否して、意識に与えられるものへの反省的分析を行うことで、必然的に、反省を可能にする思考の外部を何らかの形で想定しなければならない事態に立ち至ったこと、その結果、精神の真の学と彼らが考えるものの中に、価値論的な議論を呼び込むことになったことを明らかにした。この研究成果は、2013年3月に京都大学で開催された日仏哲学会春季大会で発表した。発表の準備にあたって、日本では参照できなかったラニョーに関する博士論文、ラシュリエの書簡集等をフランス国立図書館で調査した。
資料収集の過程で予想外の発見もあった。研究対象とするフランスの哲学者アランと日本人彫刻家高田博厚との交流を示す新資料が発見され、これまで由来のわからなかったアランの未刊の草稿との関連が確認された。新しい資料を参照しつつ、アランの草稿の読解を試みた論文を執筆した。これは2013年度中に刊行予定である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究は近現代フランスの文学・思想を理解するうえで重要となる哲学と心理学の関係というテーマについて、第三共和政期(1870-1914)の状況を多面的に解明しようとするものであるが、2012年度では、次の結果を得ることが出来た。
ジュール・ラシュリエとジュール・ラニョーは、フランス反省哲学と呼ばれる潮流に位置づけられる哲学者であり、哲学と心理学の関係という問題系について、二人の哲学者にはいくつかの共通点を指摘することができる。新しい心理学である実験心理学が姿を現してきた時代に、それらがなお汲み尽くしえぬ領域があると考え、その探求こそが哲学の仕事であると考えた哲学者たちの構想した「精神の真の学」が問題となる。本研究では、反省的分析と呼ばれる哲学の方法をめぐって、ラニョーによるラシュリエ批判が読み取られるという先行研究の指摘を考慮しつつも、両者の形而上学をともに支えているのは、存在への愛とでも言うべき価値論的な議論であることを明らかにした。
アランとその師ラニョーの思想の密接な影響関係はかねてから指摘されるところであるが、心理学に対する両者の立場の違いはこれまで正面から問題にされてこなかった。本研究では、感情とも感覚とも訳することのできるsentimentを、もっとも原初的な認識様態として両者が捉えつつも、アランはsentimentにおける情感性の構成要件として自由の概念を認めることで、独自の情念論への発展契機とし、実験心理学の感情研究の乗り越えを図る契機としたことを指摘した。

Strategy for Future Research Activity

今後の研究は以下のとおり、1)アランの草稿研究、2)哲学者ポール・ジャネ研究の2つの軸にそって展開する予定である。
アランが発表した著作には、心理学について懐疑的あるいは批判的な言辞が随所に見受けられる。しかしそうした発言は、アランがどのような心理学の文献を読み、どのような判断に基づいてなされているのか、実証的に検討することが困難であった。ところで、フランス国立図書館やアランの生地モルターニュにあるアラン博物館には、アランが遺した未刊の講義草稿や、アランの講義を学生が筆記したノートが保管されている。申請者は『感情の哲学』と題された講義草稿の翻刻を作成して博士論文に添付し、そこに含まれるアランの文献調査記録を公刊されたテクストとつき合わせることによって、アランの心理学理解を示す多くの情報が草稿に含まれていることを示した。本研究ではこうした講義草稿や講義録の調査を渡仏時に継続する。
19世紀末フランスのアカデミズムを代表する哲学者の一人であるポール・ジャネ(心理学者ピエール・ジャネの叔父)は、1870年代に『時代』という新聞で「哲学運動」と題した時評を連載していた。ここには彼が博士論文の審査を担当した心理学者リボーについての論評が見られる。心理学を哲学の基礎分野とみなした折衷主義哲学の最後の世代に属するジャネの心理学観と哲学の規定を、こうした時評や『形而上学と心理学の原理』等の主著をもとに解明することを目指す。

  • Research Products

    (3 results)

All 2013 2012

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] Philosophie des sentiments: Une forme primordiale de la theorie des passions chez Alain2012

    • Author(s)
      Masahide Nitta
    • Journal Title

      Etudes de langue et litteature francaises

      Volume: 101 Pages: 125-138

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Repenser l’emotion, la passion et le sentiment chez Alain -- dans le cadre de la lecture de ses premieres oeuvres2012

    • Author(s)
      Masahide Nitta
    • Journal Title

      Revue de langue et litterature francaises

      Volume: 45 Pages: 149-158

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 反省哲学における心理学と形而上学――ラシュリエ、ラニョー、アランの場合2013

    • Author(s)
      新田昌英
    • Organizer
      日仏哲学会
    • Place of Presentation
      京都大学(京都府京都市)
    • Year and Date
      20130330-20130330

URL: 

Published: 2015-05-28  

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