2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24820015
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
前島 美保 東京芸術大学, 音楽学部, 助手 (40436697)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 日本音楽史 / 近世 / 上方歌舞伎 / 音楽演出 / 黒御簾音楽 / 台帳(台本) / 囃子方 / 生成過程 |
Research Abstract |
本研究は、18世紀の上方歌舞伎において音楽演出がどのように生成し展開したかを、これまで音楽史料としては十分に活用されてこなかった台帳(台本)に基づき明らかにすることを目的とする。 24年度ははじめに、今回主たる史料として用いる台帳、および歌舞伎の演出の型(特に音楽面)に関する書籍や論文、雑誌記事等を集中的に収集し、先行研究を整理する作業から着手した。この過程で、上方では独特の音色を好む傾向があり、多様な音楽演出が存在していたことや、附帳が一定量存在するにも拘らず、上方に関しては従来調査が十分進んでいないことなどが明らかとなってきた(この成果の一部は、京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センターにおける「伝音セミナー」「でんおん連続講座」「公開講座」等にて紹介した)。 次に、『歌舞伎台帳集成』や『日本戯曲全集』等を典拠に、台帳に記載された音楽演出を作品ごとに抽出・リスト化し、演出技法を分析するための基礎作業を行った。この作業は次年度も継続する。また今年度、研究を推進させてゆく上で関わりの深い付帯調査(各種番付、長唄正本、附帳の調査・収集)も併せて行った(国立劇場、東京芸術大学附属図書館、阪急学園池田文庫、早稲田大学演劇博物館等)。 最終的には、18世紀の上方歌舞伎の音楽演出技法の初出や変遷、歌舞伎囃子方と音楽演出との関係性について解明し、隣接する芸能の演出展開も視野に入れながら、江戸期の歌舞伎音楽の演出史に位置づけたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、①先行研究の収集・整理、②台帳に記載された音楽演出のリスト化、の2点から研究を進めた。 ①の成果は、主に「文献資料一覧」(『平成24年度版歌舞伎に携わる演奏家名鑑』)にまとめたが、予め見込んでいた以上の質量の先行研究を確認することができた意義は大きいと思われる。またこの成果の一部は、京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センターにおける「伝音セミナー」「でんおん連続講座」「公開講座」等にても紹介・報告した。 ②については、現時点では当初予定していた『歌舞伎台帳集成』第1~30巻の入力およびリスト化完了に達していない。しかしながら、それは研究を推進させる上で関わりの深い付帯調査(各種番付、長唄正本、附帳の調査・収集)が入ったためでもあり、次年度人手を確保するなどペースを上げて取り組めば問題ない範囲であると考えられる。 以上の進捗状況に鑑みて、「(2)おおむね順調に進展している。」は妥当であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、①台帳に記載された音楽演出のリスト化(前年度からの継続作業)、②歌舞伎と人形浄瑠璃との音楽演出の比較分析、③音楽演出の工夫と囃子方との関係の検討、の3点が大きな課題となる。 ①は、ある程度まとまった時間を要することが見込まれるため、今年度以上に入力に人手を確保するなど、ペースを上げて進めてゆきたい。 ②は、義太夫狂言に焦点を絞って比較分析を行う。10作品程度(例えば「芦屋道満大内鑑」「熊野御前平門日」「粂仙人吉野桜」「近江源氏先陣館」等)で試みる予定である。 囃子方の芝居小屋出勤については、すでに博士論文で調査済みである。そこで③については、②で比較検討した作品における囃子方の具体的な関与を中心に検討してみたい。 なお次年度は、研究機関の変更に伴う研究環境の変化が予想される上に、台帳の原本調査の必要量等によっては、当初の計画が予定通り進まないことも考えうるが、その場合には対象を少し絞り込む等、研究計画全体に影響を与えない範囲で適切な方策を講じたい。
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Research Products
(6 results)