2012 Fiscal Year Annual Research Report
近代的演奏会の成立と変遷からみる作曲家の活動と市民の音楽享受の実態
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24820019
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小石 かつら 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (00636780)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 演奏会 / 市民文化 / 楽曲分析 / 音楽消費 / 芸術 / 制度 |
Research Abstract |
世界最古の市民オーケストラであるドイツのライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の創立(1781年)以来のプログラムの実物コピーを、年月日順に整理し、その内容を調査することが研究計画の主軸である。すでに収集済みの資料を8月にすべて整理し終え、主に1830年頃までの特徴、すなわち、オーケストラ演奏会にもかかわらず声楽作品を演奏すること、オペラの簡略版ともいえるスタイルを持つこと、交響曲をメインに据えるスタイルが出現することについて、11月に日本音楽学会全国大会にて発表した。今後(25年度中に)、プログラムの内容を更に精査して論文としてまとめ、日本音楽学会の学会誌である『音楽学』に投稿予定である。プログラム内容を精査するために、情報をデータ化する作業に現在取り組んでいる。 また、メンデルスゾーンの未出版ピアノ作品の楽曲分析をすすめ、所蔵先不明と断片をのぞいた全作品に関して、ドイツのラーバー社より作品内容を分析した解説を出版予定であるが、以下の4つの章に分けて執筆している途中である。1.1825年までに作曲された作品(29曲)、2.生前に作品番号無しで一度出版された作品(9曲)、3.1840年代の未出版作品(9曲)、4.その他の作品(7曲)。この内、一つめの章は単独執筆で現在ドイツ語校正中であり、残りの三つの章はハンブルク大学のフベルタス・ドレイヤー氏との共同執筆で、私の担当分は2月に終了し、残部を委託済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の創立以来、つまり1781年からのプログラム資料は膨大であり、また、古いドイツ文字や書き込みの筆記体の解読は容易ではない。それゆえ、作業時間が大変長くかかり、データの正確な処理にはたいそう時間がかかっているのが現状である。さらには、統計的処理での事実判断のため、確認作業にも大変神経を使い、時間がかかっている。そのため、口頭発表にまではこぎつけたが、論文発表にはいたっておらず、限られた時間の中で、いかに早く正確な研究成果を発表できるかが、目下、今後(今年度)の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度までの進め方では時間がかかりすぎるのが問題点である。しかし、能率アップには限界がある。そこで、25年度は、4月より研究補助者との共同作業でデータ処理に取り組んでいる。これは、単純にマンパワーというだけでなく、複数の目での確認作業が、細かな情報処理に際する読み取りミスや入力ミスを最小限に抑えられるという意味でも、非常に大きな効果をすでに実感しているところである。9月を目標にデータ入力を終了させ、次の段階(内容の精査)へと進捗させたい。 また、市民と音楽享受の実態を考えるには、ライプツィヒ・ゲヴァントハウスだけでなく、複眼的な視点が必要であると考え、日本におけるCD受容のありかたについても、主にライプツィヒ・ゲヴァントハウスとの関連でオーケストラ作品に焦点を絞って、調査をすすめる予定である。
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Research Products
(3 results)