2013 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀初頭のチェコ人の音楽作品における国境観の形成過程
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24820024
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中村 真 大阪大学, 文学研究科, 研究員 (50638658)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | ナショナリズム / 民謡研究 / 民謡編曲 / モダニズム |
Research Abstract |
平成25年度には、多民族・多言語地域であった19世紀末から20世紀前半にかけてのボヘミアやモラヴィアのチェコ人の作曲家が音楽作品を創出したり民謡研究者が論考を著したりする際の理念の研究に重点を置いた。これを通して、彼らの作品や著作と「国民」のイメージとの関係がいかなるものだったのかという問題を考察することを目指した。所期の目的を果たすために、次の研究を行った。 (1) レオシュ・ヤナーチェク(1854-1928)によるシレジア地方在住のチェコ人を扱った作品と19世紀末から20世紀初頭における同地の状況について論じた文章での理念に関する研究。 (2) 19世紀末から20世紀前半のチェコ人の作曲家による民謡編曲や民謡研究者による研究手法と理念に関する研究。主として (a) ヤナーチェクによるモラヴィア民謡研究のうち、民謡の楽式に関する理論的考察が変遷する過程に関する研究と、(b) ヴィーチェスラフ・ノヴァーク(1870-1949)による民謡編曲作品の研究を平行して行った。ノヴァークは19世紀末から晩年に至るまでモラヴィアや隣接するスロヴァキアの民謡の旋律や歌詞を利用した作品を多数発表していた。 (1) と (2) の研究からは、ヤナーチェクにせよノヴァークにせよ、作曲や研究の手法の新しさとは裏腹に、19世紀前半のロマン主義的なナショナリズムから影響を受けたものであることがあることが明らかになった。しかし、こうした作品や著作の理念には、一見すると断絶しているように見えるチェコ人楽壇において19世紀後半に広く共有されていたナショナリズムと、20世紀前半に同楽壇において支持されるようになるモダニズムとをつなぐ、「ミッシング・リンク」としての意義も認められる。
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Current Status of Research Progress |
Reason
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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