2012 Fiscal Year Annual Research Report
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24820031
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
BOGEL CYNTHEA 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (50637931)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 美術史 / 仏教美術史 / 東洋交流 / 古代史 / 密教 |
Research Abstract |
科研の申請書で述べた通り、調査、図書購入、研究会での論文発表、必要に応じて翻訳補助者と共に研究、研究に関連する場所への出張を行ってきた。本研究の初段階として、1995年に発表した博士論文の再読を行い、今後の研究テーマを選択し、続いて著書に記載した参考文献(一次資料及び論文)の精読に取り組んだ。さらに奈良仏教視覚文化および中世や中国に関する図書の購入も行った。(『初唐仏教美術の研究』 (肥田路美著), 『平安時代彫刻史の研究』(伊東史朗著)、『奈良仏教と在地社会』 (根元誠二, サムエルシーモース編), 『神仏と儀礼の中世』 (舩田淳一)等)。また、漢文図書の精読に際して翻訳が必要であったため、日本語と漢文の翻訳補助者をつけ翻訳活動を開始した。国内調査として、京都や奈良の寺院、美術館等へ調査に行き、薬師寺、新薬師寺のお堂での薬師信仰研究に着手し始めた。9世紀からの真言密教(いわゆる「密教」)と8世紀の奈良時代の雑密(いわゆる「古密教」)の違い、また平城京に存在する古密教の定義を検討段階である。昨年12月、高野山の金剛峰寺および高野山霊宝館、京都の教王護国寺(東寺)の宝物館において密教美術仏像の調査を行った。国際調査として、昨年11月にカナダのブリティッシュコロンビア大学の会議で仏教美術に関する論文発表、今年1月および3月にボストン美術館で唐時代密教関係彫刻の調査を行った。本年度の研究成果は著書の一部として将来的に出版する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科研により研究に関わる調査を十分に受けることができた。美術館の展覧会の作品調査の際、お寺の仏像安置や仏像の図像的な意味に新たな解釈を見出した。また、新たな図書の精読や翻訳補助により、奈良時代の日本の仏画と仏像の様式的、儀礼的な共通点の解明に至り、これは本研究の初段階でありながら大きな進歩と言える。さらに、難解な古文を読解する際に翻訳補助を受けることができ、資料の解釈に関しても同様に重要な進歩を遂げた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の基礎となる1995年にハーバード大学に提出した博士論文を再読し、研究テーマを取捨選択する。また、記載した参考文献(一次資料及び論文)の中で未読分を読了し、必要な本を購入する。 国内出張として、八世紀に関連する奈良及び滋賀の寺院・史跡の見学、太宰府・大分・宇佐の神仏習合に関連する仏像・仏画と建築/儀式の場(内部空間)の関連性の検討、続いて奈良および滋賀の寺院と神社も探訪する。また海外出張として、12月にインド周辺の密教視覚文化を調査するため、オランガバードとエローラ石窟の調査を行う。また真言密教と異なる曼荼羅文化を持つ、北インドのヒマラヤ周辺のタボの寺院に関して、インドと奈良時代との曼荼羅の源流についてその共通点を検討する。 国際ワークショップとして、2月に九州大学で議論中心の研究会を行う。2名の日本人研究者(浅井和春氏(青山学院大学 文学部 教授) :不空羂索観音像と8世紀の儀礼、経典に関する研究を行う。長岡龍作氏(東北大学大学院文学研究科文学部):神仏集合とそのイコンに対する多くの論文は、新しい視点に立つ研究として認められている。)および2名の米国の研究者(Como氏(コロンビア大学 准教授):日本仏教史を専門とし、特に7、8世紀の陰陽道及び仏教を専門とする。Abe氏(デューク大学 准教授):日中の仏師間における様式技術伝達、作品に現れている古密教の図像を専門とする。)を招聘し、九州大学で古代仏教視覚文化を専門に研究する大学院生を聴講者とし、次世代の研究を担うべき人材の育成も図る。本研究会は、これら第一線で活躍する研究者同士を互いに紹介し合う、豊かな国際学会の場となることが期待される。 著書の出版を最終目標とし、7月にはベルリン自由大学において、薬師寺薬師如来の台座の四方神や蛮人の模様に関する研究を発表する。この研究会は日本におけるギリシャ、ローマの美術交流の場となる。
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Research Products
(1 results)