2012 Fiscal Year Annual Research Report
近代中国の在外領事裁判と東アジア-華人保護と領事裁判権から見た近代的変容
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24820038
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Research Institution | Asia University |
Principal Investigator |
青山 治世 亜細亜大学, 国際関係学部, 講師 (60634285)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 近代中国 / 領事裁判 / 東アジア / 華人保護 / 領事裁判権 |
Research Abstract |
清朝と日本、清朝と朝鮮(韓国)との間で結ばれた諸条約・章程を分析し、日清修好条規や清韓通商条約の双務的領事裁判規定は、アジア的な属人支配の延長と見るよりも、むしろ西洋伝来の制度と法体系を(完全ではないものの)清朝と周辺国(日本)または属国(朝鮮)との関係にも採り入れたものであったことを解明した。 日本や韓国で収集した史料や先行研究を整理・分析し、清朝の在外領事裁判について次の点を解明した。①日本における清朝の領事裁判では、必ずしも本国法(清朝の法律)のみが厳格に適用されたわけではなく、日本側の法令や要請も考慮して審判を行うこともあった。②西洋諸国と清朝との間には、西洋諸国による領事裁判だけでなく、混合事件に対する清朝・西洋の混合裁判(会審)も実施されており、これを通して中国の官憲も「関与」した裁きに近代法制がすでに存在していた。 中国とフランスにおいて史料の調査・収集を実施した。中国では、北京と上海において史料の調査・収集を行い、在外領事裁判に関する清朝側の認識を示す関連史料を収集した。フランスでは、パリのフランス外務省資料館において調査を行い、清仏戦争前後のフランスのベトナム在住華人に対する認識や政策に関する史料を収集した。 領事裁判権に対する中国と日本の認識を比較してその変遷を追った論文「近代日中の「交錯」と「分岐」の軌跡-領事裁判権をめぐって-」(『東アジア近代史』第15号)を発表し、その成果に当該年度の研究成果を加え、中国(杭州)で開催された国際学会において口頭発表と討論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究目的で提示した5点について、それぞれの進捗状況は次の通りである。 ①清朝と朝鮮との間で締結された章程・条約において、清朝側の在朝領事裁判権がいかにして規定され、それがどのような変遷をたどったのかを解明することについては、概観はほぼ完成している。 ②日本と朝鮮において、具体的にどのような領事裁判が実施され、日本と朝鮮においていかなる差異が見られたのかを検討することについては、日本側の分析はほぼ完成している。 ③朝鮮において領事裁判権を行使し、ベトナムにおいて領事裁判権を行使しようとした事実をふまえ、清朝が宗属関係の枠内でそれらの国における領事裁判権をどのように認識していたのかを考察することについては、フランスでの史料調査を行い、その分析を進めている。 ④19世紀後半に日本で行われた清朝の領事裁判には西洋近代法制の影響を受けた判例がみられたことから、中国本国において西洋近代法制の継受が始まる20世紀初頭に先駆けて、在外華人に対して清朝の在外機関が行った裁判において近代法制の影響が見られた事実を、中国法制史の中でいかに捉えるべきかを考察することについては、概括的な結論をすでに示すことができる状態となっている。 ⑤清朝が東アジア地域において領事裁判権を行使したことが、中国の対外関係の「近代」的変容の中でいかなる意味をもったのかを解明することについては、概括的な結論をすでに示すことができる状態となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
日本・朝鮮における領事裁判の実態解明をさらに進めるため、日本(神戸・函館)と韓国(ソウル)において史料の調査・収集とその分岐を行う。 近年中国大陸・台湾において発表された近代中国における西洋近代法制の継受に関する最新研究の成果も踏まえ、近代中国の在外領事裁判について、総合的な分析を行い、研究成果を図書として執筆し、刊行の準備を行う。
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Research Products
(3 results)